オーディオブックの配信サービス「audiobook.jp」を展開するオトバンクは10月8日、同サービスの会員数が100万人を突破したことを発表した。スマホが国内で普及していなかった2007年にサービスを開始した同社。2018年12月に60万人を突破した会員数はそれからわずか9ヵ月で100万人を超えた。2018年3月にサブスクを開始したこと、そして制作ラインの強化や配信ジャンルの拡充が近年におけるユーザー数の急増に繋がったとオトバンク代表取締役社長の久保田裕也氏は言う。同社は4月、企業向けのオーディオブック「audiobook CAMP」もローンチしている。
「2018年から月額750円の聴き放題をスタートした。初回は30日無料、ザッピングして色々な作品に触れられるような設計にしたことが、『オーディオブックのは気になるけどハードルが高い』という潜在ユーザーへの訴求に繋がっているようだ。 そして次は制作力。スマホが普及する前の2007年からサービスを開始、オーディオブックの制作インフラ開発を手掛けてきており、複数のスタジオも構え、オーディオブックをずっと作り続けてきた制作陣も社員として所属している。良質なクオリティで大量にオーディオブックを制作するラインを開発し続け、現在は毎月500タイトル以上の作品が配信され、累計では2万7000点を配信している。また、音や本関連で親和性の高いコラボレーションを定期的に続けてきたことも、ユーザー獲得に繋がった。コナミスポーツクラブや、高速バスの『WILLER EXPRESS』などと連携させていただいている。色々な場とコラボしてオーディオブックを試していただく機会を作っているが、一度聞いていただければ継続してユーザーになってくださる可能性が高いということも実感している」(久保田氏)。
会員数100万人突破の発表に合わせ、オトバンクは「オーディオブック白書」も併せて公開している。この白書によれば、移動中に、そして朝の通勤時間帯にオーディオブックを利用しているユーザーが多いようだ。同調査はaudiobook.jpの会員を対象にしたオンライン調査。サンプル数は1358名。
最近では、オトバンクは8月にポッドキャストの配信を本格的に開始した。このポッドキャストには配信者のマネタイズを支援する課金システムが導入されている。久保田氏いわく「聴き放題内のランキングでもポッドキャスト番組がベスト10に入ることが増えてきている」そうだ。「よりスピーディーに配信対応できるよう、配信インフラの整備を社内のエンジニアチームが頑張って進めている。準備が間もなくできるので、より多くの番組が配信されていく」(久保田氏)。
会員数100万人を突破したaudiobook.jp。だが、「耳から情報をインプットする」ことの普及は海外に比べて「まだまだこれからだ」と久保田氏は話す。「海外では20年以上も前からオーディオブックやその他の音声コンテンツの普及が始まっていた。しかし、日本では現在も音声コンテンツを増やしている初期段階のような状態に近いと思う。 また、『聴く』という行為がまだ浸透していないと感じている。より一層『聴く』のハードルを下げるにはどうしていけばいいのか、現在。事業サイドでも検討を続けている」(久保田氏)。
オトバンクは今後、今以上にコンテンツを拡充していくため制作ラインを強化し、「本を耳で聴く」というライフスタイルをより一層広げるべく、アプリの機能開発を進めていく。そして、生活のシーンに合わせて「聴くコンテンツが選べるような状態」を構築すべく、「これまでと変わらず、本を音声化したオーディオブックは引き続き増やしていくほか、もう少しライトに聞き流ししても楽しめるような短尺コンテンツも増やしていきたい」(久保田氏)。