クックパッドが食品ECビジネスに参入、街のお店の“こだわり食材”をアプリで買える「クックパッドマート」発表

料理レシピサービス「クックパッド」などを提供するクックパッドは7月10日、生鮮食品のECサービス「クックパッドマート」を発表した。同社はまず、2018年夏より東京の渋谷区、世田谷区、目黒区限定で同サービスをスタートする予定だ。

クックパッドマートを開発した”買物事業部”を率いるのは、2018年1月にクックパッドへ吸収合併されたコーチ・ユナイテッドでCEOを務めていた福崎康平氏だ。「ひとくちに食事と言っても、買い物、調理、後片付けなど、そこにはさまざまな過程がある。しかし、調理するときに見るレシピを手がけるクックパッドは“料理を作る瞬間”しか消費者の心を掴めていない。それを変えたかった」と、福崎氏はレシピサービスのクックパッドが食品EC事業に参入する意図を語った。

1品から食材を購入でき、送料は無料

クックパッドが本日発表したクックパッドマートは、アプリで必要な食材を選択するだけで生鮮食品が手に入るECサービスだ。街のパン屋さんや精肉店などの小規模店舗(パートナー)が提供するこだわりの食材をアプリで購入することができる。ユーザーにとって最大の特徴は、クックパッドマートでは1品から食材を注文することができ、送料も無料であるということだろう。また、レシピサービスのクックパッドならではの仕組みとして、食材のレシピに必要な食材をまとめて購入できる仕組みもある。

日本の食品ECサービスには、昔ながらの生活共同組合(生協)の食材配達サービスや、2017年4月より国内でサービス開始したAmazon Freshなどがあるが、クックパッドマートはそれらとはちょっと違う仕組みで運営される。

クックパッドはまず、ユーザーから指定された食材をパートナーである街の精肉店や精魚店で集荷する。そして、食材を集荷した当日中に“受け取り場所”と呼ばれるピックアップ地点まで配送し、ユーザーがその受け取り場所まで食材を取りにいくというモデルだ。福崎氏によれば、このモデルを選択することで、配送料を節約するための“ルート配送”を実現でき、ECサービスでよくある「〇〇円以上で配送料無料」という煩わしさを避けることができたのだとか。

その受け取り場所として想定されているのは、食材を提供する食品店、コンビニ、クリーニング店などの地域の店舗や、マンションの共有スペースなど。クックパッドは受け取り場所を提供してくれるパートナーを広く募集し、サービスの拡大を目指すという。

福崎氏によれば、クックパッドは今後、半径2kmのエリアごとに30〜50箇所の受け取り場所を用意し、「最寄り駅から自宅までの帰り道に受け取り場所が必ずあるだけでなく、職場の付近でのピックアップなど選択肢が複数あるような状態」していく予定だという。

こだわりの食材を、便利に

「各地域には長年お肉やお魚だけを扱ってきた名店がたくさんある。そういったお店が扱う、本当においしい食材をアプリで手軽に注文できるというのがクックパッドマートの特徴だ。そういった小規模店舗が参加でき、配送もこちらが一手に行うプラットフォームを作りたかった」と話す福崎氏。

その言葉の通り、クックパッドマートは他のECアプリとは少し変わった作りをしている。ユーザーは「鶏肉」など食品の種類ごとに食材を選択するのではなく、まずはパートナーのお店を選択し、その後にそのお店が扱う鶏肉を選択するというフローだ。このあたりからも、「街のお店のこだわり食材を手軽に購入できる」というクックパッドマートの特徴を大事にする様子が伺えるだろう。

上述したように、クックパッドマートのモデルではユーザーが受け取り地点までわざわざ食材を取りに行く必要がある。それだけ聞くと、「だったらスーパーまで買い物に行くのとあまり変わらないのでは」という意見もありそうだ。

でも、福崎氏の言葉の通り、クックパッドマートは地域に散らばる名店のこだわりの食材を一箇所で受け取れるサービスであると考えれば、このサービスを利用するメリットを理解しやすいのかもしれない。それに、クックパッドマートのような食品ECサービスを頻繁に利用するユーザーとして考えられるのは、共働きをする若い世代だ。そうしたユーザーは昼間に自宅にいないことも多く、好きな時間に職場からの帰り道にある受け取り場所でピックアップできるというモデルの方が逆に便利なのかもしれない。

クックパッドマートの当面の目標として、福崎氏は「年内に、利用可能エリアを複数のエリアに拡大し、受け取り場所も数十箇所設置する。そして、“クックパッドマートで生活する人”を作りたい。来年以降は、受け取り専門の店舗やクルマを設置することも考えている。来年度中にはこのビジネスモデルを確立したい」と語った。

クックパッドマートを手がける買物事業部のメンバー。写真中央が事業部長の福崎康平氏。

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TechCrunch Japan

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