グーグルがインドの通信大手Reliance Jio Platformsに約4800億円出資

Google(グーグル)はインドのReliance Jio Platforms(リライアンス・ジオ・プラットフォームズ)に投資する最新の有名投資家となった。同社は45億ドル(約4800億円)を出資してインド最大の通信ネットワークの7.73%の持ち分を取得する。Reliance Industriesの最高責任者であるMukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏が7月15日明らかにした。

今回のグーグルの投資は、グローバルでライバルのFacebook(フェイスブック)が支援している企業に出資するという稀なケースだ。Facebookは4月にReliance Jio Platformsに57億ドル(約6100億円)を出資し、9.99%の持ち分を取得した。Reliance Jio Platformsは創業4年弱で、購読者は4億人を超える。同社にとってFacebookは最大の少数株主だ。

インドで最も価値の高い企業Reliance Industriesの子会社であるJio Platformsは過去4カ月で13の投資家に株式の33%を売って202億ドル(約2兆1600億円)を調達した。参考までに、インドのスタートアップエコシステム全体で昨年145億ドル(約1兆5500億円)を調達している。

グーグルの投資でJio Platformsの株式価値は580億ドル(約6兆2000億円)になった。General Atlantic(ジェネラルアトランティック)、Silver Lake(シルバーレイク)、Qualcomm(クアルコム)、Intel(インテル)、Vista(ビスタ)などの他の投資家は持ち分取得に12.5%のプレミアムを払った。

7月15日の戦略的発表の一環として「グーグルとReliance Jio Platformsは次なる何億ものユーザーのための低コストでローエンドのスマホを開発すべく、カスタマイズされたAndroid(アンドロイド)OSに取り組む」とアンバニ氏は述べた。「そうしたスマートフォンはGoogle Playや未来の無線スタンダード5Gに対応する」とも話した。

「さらに多くの人へのテクノロジー提供はグーグルのミッションの大きな部分を占める」と同社CEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は同日のビデオチャットで述べた。「インドの何百万というユーザーがどうやってスマホを所有できるようになるかをゼロから考え直すことに興奮している。この取り組みは新たな機会を拓き、活気のあるエコシステムにさらに力を与え、新たなインド経済のための成長を生み出すイノベーションを推進する」と同氏。

今回のディールはさらに、音声通話やモバイルデータの料金値引きでインドの通信マーケットに変革をもたらしたJio Platformsに海外投資家がチャンスを見出していることを物語っている。Jio PlatformsがモバイルOSや端末に関心を示したのはこれが初めてではない。同社はKaiOSで作動するJioPhoneを少なくとも4000万台出荷してきた。こうした「スマート機能」電話はFacebookのWhatsAppを含むいくつかのアプリに対応している。GoogleはKaiOSの名称がそのまま社名になっているデベロッパーの投資家だ。

Bernsteinのアナリストは先月、Bharti AirtelそしてVodafone Ideaと競合するJio Platformsの顧客が2023年までに5億人に達し、2025年までにマーケットの半分を手中に収めると予想している、と述べた。Vodafone Ideaは英国大手企業Vodafone(ボーダフォン)0とインドの億万長者Kumar Mangalam Birla(クマール・マンガラム・ビルラ)氏のAditya Birla Group(アディティア・ビルラ・グループ)の合弁会社だ。

インドの全ネットユーザーにリーチしているFacebookと同じように、グーグルも7月13日に今後5〜7年でアジア第3位の経済大国であるインドに100億ドル(約1兆700億円)を投資するための新たなファンドを発表した。本日のJio Platformsへの投資はGoogle For India Digitization Fundの初の案件となる。

Jio Platformsはまた、音楽ストリーミングプレイヤーやビデオ会議アプリなど、さまざまなデジタルサービスを提供している。そして同社は7月15日、最新の商品Jio Glassを発表した。

Jio Platformsの幹部は、Jio Glass装着者はビデオ電話をしたり、24以上のアプリにアクセスしたりできるようになると話した。この新しいガジェットをいつ消費者に販売するのか、いくらになるのかは明らかにしなかった。同社は過去に、デバイスを発表してから消費者の手に渡るまで数年かかったり、静かに葬ったりしたこともある。Jioは昨年似たようなメガネを発表した。

画像クレジット: Jio Platforms via YouTube

一部の投資家らはTechCrunchに対しこの数カ月、Reliance Jio Platformsのオーナーであるインドで最も裕福な人物であるアンバニ氏がインドの与党に近いことも、Reliance Industriesのデジタル部門が多くの投資家を引きつけてきた重要な理由だと語った。

投資家らはJio Platformsの株式を購入すれば、彼らが現在インドで直面している規制上の負担が軽くなると考えている。彼らは政治的な関わりについて公に語ることを望まないため匿名を希望した。

Reliance Jio Platformsに投資した13社のうち1社の情報筋は同社の魅力について「グローバル企業にとって中国への依存や接点を減らす手段となることだ」と語った。

インドと米国はこの数カ月、中国企業への依存を制限するための措置を講じている。インド政府は2020年6月に、中国企業が開発したTiktokを含む59のアプリとサービスを禁止した。Reliance Jio Platformsは興味深いことに、これまで中国の投資家から資金を調達していない。

「Jioは10年以上にわたってインドのテクノロジー面での発展に大きく貢献してきた。通信インフラ、低価格スマホ、手ごろな価格のインターネットを拡大するための同社の投資は、何億もの購読者がニュースや情報を得たり、互いに連絡をとったり、サービスを使ったり、事業を経営したりする方法を変えた。Jioは、インドがいま歴史的に厳しい時期にある中で、経済成長や社会的インクルージョンをサポートする、デジタルサービス、教育、ヘルスケア、エンターテイメントのような分野の発展にますますフォーカスしている」とピチャイ氏は述べた。

石油化学製品が主幹事業であるReliance Industriesは、Jio Platformsともう1つの子会社Reliance Retailを5年以内に上場させる計画(未訳記事)を明らかにしている。今週はインドの企業にとって大きなニュースが続いている。7月14日にWalmart (ウォルマート)は創業13年のインドのeコマース企業Flipkartの12億ドル(約1280億円)の投資ラウンドをリード(未訳記事)した。

画像クレジット: Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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