ザッカーバーグ氏がアップルのプラットフォームポリシーと手数料は「イノベーションを阻害する」と非難

Facebook(a.k.a Meta)のCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、米国時間10月28日の自社イベント、Facebook Connect 2021の基調講演でメタバースの計画について述べた際、Apple(アップル)およびアプリのエコシステム全体に対する明らかな批判を口にした。具体的には、アプリプラットフォームとそれにともなう手数料は「イノベーションを阻害」していると非難し、同時にFacebook自身が手数料を高く維持することについては、成長を続けるVRエコシステムと自社のOculus Questストアへのさらなる投資が必要であることを理由に正当化した。


同氏の発言は、Facebookの広告ビジネスに打撃を与えた、Appleによる最近のアプリ・プライバシー変更を受けたものだ。App Tracking Transparency(アプリのトラッキングの透明性[ATT])の導入によって、Appleはアプリが他のアプリやウェブサイトを横断して消費者を追跡することを消費者が拒否できるようにした。そしてこの変更によってFacebookの収益が落ち込んでいることを会社は認めている。

関連記事:ついにアップルが導入開始した「アプリのトラッキングの透明性」について知っておくべきこと

現在Facebookは、Oculus向けに独自のアプリプラットフォームを構築することで新たな収入の流れを作る可能性に期待してる。デベロッパーが手数料を払う代わりに、収益を得るプラットフォーム。そして、別の会社の気まぐれな戦略変更によってビジネスが破壊されることのないプラッフォームだ。

ザッカーバーグ氏は、今こそこの変化を起こす時であることを強調し、最近彼が「プロダクトを作るだけでは十分ではない」ことを学んだと語った。

「私たちは、将来何百万もの人たちが恩恵に預かることのできる、人々の仕事が報われ、波が高まるにつれ利益をあげられるようなエコシステムを構築する必要があります。消費者だけでなく、クリエイターやデベロッパーにとっても」と彼は言った。「この時期私たちは謙虚でもあります。なぜなら私たちのような大きな会社でも、他のプラットフォームのためにものを作ることがどういうことかを学んだからです。そして彼らのルールの下で生きることは、テック業界に対する私の見方に大きな影響を与えました」とザッカーバーグ氏は続けた。

「何よりも、選択肢の欠如と高い手数料はイノベーションを妨げ、人々に新しいものを作るのをやめさせ、インターネット経済全体を抑制します」とザッカーバーグ氏は付け加えた。

一連のコメントは、AppleとGoogle(グーグル)に直接向けられたものであり、Facebookのプロダクトのほとんどは両社のプラットフォーム上にある。Facebookはアプリ内購入の手数料をApp Storeに払わなくてはならず、例えばユーザーがクリエイターをサブスクライブしたり、バッジを買ったり、ストリーミング提供者に直接チップを渡す場合も含まれる。Apple、Googleともに、小さな会社やメディア・プロバイダーやサブスクリプション・アプリに対しては手数料を値下げしたが、標準の取り分は今も変わらず70 / 30(プラッフォーム / デベロッパー)だ。

App Storeのルールは、Facebookが高い収益を得る可能性のある他のプロダクトを開発することも妨げている。最新のゲーミングサービスが一例だ。

たとえば2020年、iOSでFacebook Gaming(フェイスブック・ゲーミング)を公開した際、同社はAppleのポリシーを激しく非難した。Appleは他のアプリやゲームを中に含むようなアプリを許していおらず、それはサードパーティー・デベロッパーから収益を得る機会を失うからだ。このため、Android(アンドロイド)版ではミニゲームをプレイできるのに、iOSユーザーはFacebook Gamingでストリームを見ることしかできない。

しかし、Facebookの将来にとって本当の懸念は、手を出せないプラットフォームのポリシー変更によって、広告収益が脅かされていることだ。

広告収益は、過去何年にもわたってFacebookが他分野に投資し、アプリを無料にすることを可能にしてきた、とザッカーバーグ氏は指摘した。

「私たちはできるだけ多くの創作と商取引が生まれるように、クリエイターや販売者向けのツールを原価あるいはわずかな料金で提供しています。そして成功しています。何十億人もの人たちが私たちのプロダクトを愛しています」と同氏は強く語った。「私たちのプラットフォームには何億ものビジネスがあるのです」。

現在会社は、メタバースのエコシステム構築にも同じアプローチを取ろうとしている。デバイスを助成したり原価で販売することによって、消費者が手に入れやすくなる、とザッカーバーグ氏は言った。そしてAppleのApp Storeと異なり、Facdbookはサイドローディング(ストア外からのダウンロード)やパソコンへのリンクを可能にすることで、囲い込むのではなく消費者とデベロッパーに選択肢をあたえる計画だとFacebookは言っている(もちろん、多くのデベロッパーは発見してもらうためにQuest Store(クエスト・ストア)で公開することを選ぶだろう。Facebookにこの約束ができる理由はそこにある)。

さらに同氏は、Facebookはデベロッパーとクリエイターのサービス費用を極力低く抑えるつもりだとも言った。しかしザッカーバーグ氏は、会社の次のビジネスモデルへの思いを馳せながら、そうではないケースもあると警告した。新エコシスコムへの投資規模を踏まえると、一部の手数料は高くなるだろうと彼は話した。

「将来への投資を続けるために、一部の手数料を一定期間高く据え置いて、このプログラム全体であまり大きな損がでないようにする必要があります」とザッカーバーグ氏は説明した。「なんといっても、すでに利益をあげているデベロッパーが増える一方で、私たちは将来メタバースの規模が大きくなるまでの何年間、数十億ドル(数千億円)を投資する見込みなのです。しかし私たちは、次の10年間全員で努力を続ければ、メタバースは10億人に達し、何千億ドル(何十兆円)ものデジタルコマースをホストし、何百万人ものクリエイターとデベロッパーの職を支えられるようになると期待しています」。

言い換えると、Facebookの計画は今まで以上にデベロッパーの収益を活用し、独自のルールを決めることで、むしろAppleに似てくるだろうということだ。

画像クレジット:Facebook(ライブストリームより)

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。