シンガポールのNugitが520万ドルを調達 AIを利用したビッグデータ分析サービスを提供

Colorful data graphs on glowing panel of computer screens

ビッグデータの時代が訪れ、データの組織化と処理の効率化が求められるようになった。それこそがマーケティングに特化したシンガポールのスタートアップであるNugitが得意とする分野だ。今週、同社はSequoia CapitalがもつIndia Fundから520万ドルを調達したことを発表した。Nugitは昨年、500社のスタートアップとThe Hub Singaporeから金額非公開のシード資金を調達している。

オーストラリア出身のマーケッターであるDavid Sandersonが創立したNugitは、顧客企業と顧客が持つデータ・プラットフォームの仲介役となり、そのデータが持つ意味を浮き彫りにする機能をもつ。現在はFacebook Ad Manager、Google AdWords、DoubleClickなど15個のデータ・プラットフォームをサポートしている。Nugitのアイデアとは、データに存在するノイズを排除するだけでなく、Nugit自体がPowerPointなどの「即座に意思決定につながる資料」を作りだすことで、デジタル・マーケッターの負担を軽減するというものだ。

マーケッターがデータを扱う際には、データのクリーニングやアラインメントなど数多くのプロセスを手作業でこなす必要がある。しかし、GroupMや他の広告代理店で勤務していたSandersonは、コンピューターを利用すればそのプロセスをただ完了させるだけでなく、データが持つ意味を浮き彫りにすることができると気づいたのだ。こうして、人間には相当の労力が必要なプロセスのオートメーション化を目的にNugitが設立されることとなった。

Nugit CEOのSandersonはTechCrunchとのインタビューの中で「そのようなプロセスは特にデジタル分野のマーケッターにとってエキサイティング時間でもあります。しかし、データの量が多すぎると質の高い分析を行うことが難しくなってしまいます。人間が処理できるデータの量は限られており、そのために置き去りにされるデータがあるのです。それに加え、人々はデータを集めることにうんざりしていて、代わりに即座に意思決定につながる情報を欲しがっています」と語る。

シンガポールを拠点とする25人のチームからなるNugitの顧客企業には、FacebookやJohnson & Johnson、Publicisなどがある。同社の料金体系はデータの量やソースによって利用料金が変わる会員料金型だ。会員料金は最低で500ドル、最高で2000ドルだ。また、特別なインテグレーションやホワイトラベル化された製品を必要とする顧客向けには、それぞれにカスタマイズしたオプションも提供している。

Sandersonによれば、元々は彼がよく知る広告代理店業界向けのビジネスとして始まったNugitではあるが、大量のデータを抱える他分野の業種にもビジネスの範囲を広げつつあるという。その最近の例として、金融業界の会計データの処理にNugitのテクノロジーを利用したいとのアプローチがあったとSandersonは話してくれた。

「多くの組織が大量のデータを保有してはいますが、社内に分析チームを抱えていてもデータを大規模に分析することができていません。そのような分析チームのほとんどが、多種多様なツールを使って人間の手でデータの分析を行っています」とSandersonは語る。「あと1年か2年もすれば、企業のコアとしてNugitが提供するようなデータマネジメント能力が必要だと気づくようになるでしょう。それはデジタルメディア向けのキャンペーンに関してのデータであっても、企業の財政データであっても、もしくは消費者の新製品購入に関するデータであっても同じことです」。

Nugitは今回調達した資金によって、R&Dを強化して同社のテクノロジーのさらなる開発に努めるとともに、新しい業種にもビジネスの範囲を広げていく予定だ。Sandersonによれば、来年の終わりまでに従業員の数を2倍に増やすことも考えているという。しかし、拠点はシンガポールのまま変わらず、今後もアジア地域の企業やグローバル企業にフォーカスしていくと話している。同社は顧客が利用できるSDKの開発にも取り組んでおり、これが実現すればNugitをベースにカスタマイズされたソフトウェアを顧客自身が構築することが可能になる。

Sequoia CapitalがアジアのAI系スタートアップに投資したのはNugitで2社目だ。今年の8月、Sequoiaはインドとアメリカを拠点にEコマース向けのサービスを開発するMad Street Denに対して金額非公開の出資を行っている。また、9月にはNugitと同じくシンガポールのAI系スタートアップであるViSenzeが楽天から1050万ドルを調達している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Websie /Facebook /Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。