スイス連邦民間航空局(Swiss Federal Office for Civil Aviation, FOCA)がMatternetに、同社の配達ドローンが昼夜を問わずいつでも、都市の上空を自律飛行してもよい、と認可した。この規制のハードルをクリアしたことによって来年早々から、MatternetのパートナーSwiss Post(スイス郵便)は、Matternetのドローンを使って血液サンプルなどの小荷物を、人口56000人の小都市ルガーノの病院間で配達できることになる。
MatternetのCEOで協同ファウンダーのAndreas Raptopoulosは語る: “わが社にとって大きな進歩だ。これからはわが社の技術を、スイス全域で運用できる。医療とeコマースの大きな機会が開ける”。彼がとくに強調するのは、Matternetのシステムをボタンひとつで利用でき、しかもスイス国内では見通し線を超えたドローンの飛行が可能になることだ。
配達ドローンで競合するZiplineやFlirteyなどは、ドローンを作って顧客のためにそれらを飛ばす仕事をするが、Matternetは同社の技術を、Swiss Postに代表されるような物流企業に売っている。
今回スイス政府が自律飛行を許可したMatternetのM2ドローンは、航続距離20キロメートルで2キログラムの荷重を運ぶ。平均速度は、毎時36キロメートルだ。クワッドコプターで、二重化センサーと自動操縦システムを搭載している。機上の電子機器がだめになったら、パラシュートを開いて着陸する。離陸も着陸も基地局から行い、そこには赤外線信号によるピンポイントの着陸ができる。
今月(2017/3)の初めにSwiss PostとMatternetは“共同イノベーションプロジェクト”を立ち上げ、手始めに、ティチーノのEOC病院グループのうちルガーノの2院間のドローン配達をテストした。それまでは血液サンプルも陸上輸送だったから、渋滞などで緊急の検査に間に合わないこともあった。病院間でサンプルを空輸できるようになり、しかも有人のヘリや飛行機は不要だから、検査と、その後の診療行為に遅れがなくなる。
ドローンの医療利用はすでに各所で始まっている。ドイツでは、DHLの“小荷物コプター”が、北海の孤島ユイストの住民に薬を届けている。ルワンダでは、Ziplineが政府の事業により、血液や医療用品を病院と診療所に配達している。
でも、MatternetとSwiss PostとティチーノのEOC病院グループの取り組みは、先進国の人口稠密市場における初めての、ドローン配達の医療利用だ。
Swiss PostとMatternetとのパートナーシップは2年前に始まったが、血液サンプルなど“バイオハザードな”素材に関しては、ドローンの利用に特別の許認可を要する現状が、今でもある。しかしドローンによる配達のテストを今後さらに重ねたのちには、ドローン配達の医療利用がSwiss Postの通常のオフィシャルなサービスになるだろう。