スタートアップ向け法人クレカ発行のBrexがローンチ後1年未満で評価額2200億円に

TechCrunchが入手した情報によれば、フィンテックビジネスのBrexが、このたびローンチ後1年未満で、シリーズDラウンドを行い、数百万ドルを調達することがわかった。同社は起業家のために誂えられた人気絶大のコーポレートカードを発行し、スタートアップ業界に旋風を巻き起こした企業だ。

ブルームバーグの記事によれば、Brexは評価額20億ドル(約2200億円)で調達を行おうとしているらしい。ただし、複数の情報源からTechCrunchに寄せられたタレコミによれば、同社はまだ新旧の投資家たちと交渉を行っている最中だという。TechCrunchがコメントを求めたところ、Brexの共同創業者兼CEOであるヘンリケ・ダブグラス(Henrique Dubugras)氏からは、現時点ではなにも発表できるものはないという回答が返された。

ラウンドを主導しているのは有名VCのKleiner Perkinsだが、仲介したのは元ジェネラルパートナーのムード・ロウアニ(Mood Rowghani)氏である。ロウアニ氏は昨年同VCを去った後、メアリー・ミーカー(Mary Meeker)氏ならびにノア・ナウフ(Noah Knauf)氏らとともに、Bondを設立した人物だ。以前に報告したように、Bondのスタッフは今でもKleinerの10億ドル規模のDigital Growth Fund III(彼らがKleinerを退職する前に担当していた資金のプール)からの資金の展開を進めている最中だ。

最近12億5000万ドルのデビューラウンドを完了し、最初の投資を行ったBond自身は、Brexのラウンドには参加していないことが複数の情報源によって確認されている。なおBondからのコメントは得られなかった。

Y Combinatorの2017年冬クラスの卒業生であるBrexは、2018年10月に11億ドル(約1200億円)の評価額の下に、1億8200万ドル(約200億円)のVC調達を行った。これはスタートアップのためのコーポレートカードをローンチしてから3カ月後のことであり、YCのアクセラレータープログラムを完了してからも1年未満のことだった。

ごく最近Brexは、Greenoaks Capital、DST Global、そしてIVPが主導する、1億2500万ドルのシリーズCラウンドを行った。またPitchBookによれば、PayPalの創業者ピーター・ティール(Peter Thiel)氏とマックス・レブチン(Max Levchin)氏や、Ribbit Capital、Oneway Ventures、そしてMindset VenturesなどのVCファームも投資を行っている。

同社の成長ペースは、過大評価と特大ラウンドが一般的であるシリコンバレーでさえ、前例のないものだ。何故だろう?その理由は、技術革新を迫られているレガシープレーヤーによって支配されている市場にBrexが関わってきたこと。そしてもちろん、スタートアップの創業者たちは常にクレジットを必要としているからだ。そのことが、YCの数百のスタートアップ創業者たち(すなわちBrexの顧客たち)のネットワークに上手く乗るかたちで、数十億ドルの評価額への道筋を加速したのだ。

Brexは、その顧客から、いかなる種類の個人保証または保証金も要求せず、創業者がほぼ即時にクレジットにアクセスできるようにする。さらに重要なことに、起業家たちは他の場所で得られるよりも、最大10倍高い信用限度額を与えられるのだ。

投資家たちはまた、同社がサードパーティのレガシー技術を使っておらず、ゼロから作り上げられたソフトウェアプラットフォームを誇っている点にも魅了されているのだろう。それに加えて、Brexは企業に対して統合された経費支出情報を提供することによって、フラストレーションのかかる企業の経費処理の多くを単純化する。

「私たちは、起業間もない企業に対して、Stripeと非常によく似た効果を提供することができますが、その効果はより早く得ることができます。なぜならシリコンバレーの企業は収益を上げることよりも、経費を使うことの方が得意だからです」とダブグラス氏は昨年末に私に語っている。

比較のために述べておくならば、Stripeは2010年に創業されている。2014年までに、同社はユニコーンラウンド行い、17億5000万ドル(約1920億円)の評価額で8000万ドル(約88億円)の資金調達を行っている。現在Stripeは、200億ドル(約2兆2000億円)強の評価額の下に、合計でおよそ10億ドル(約1100億円)の資金調達を行っている。

ダブグラス氏と、同じくBrexの共同創業者である23歳のペドロ・フランチェス(Pedro Franceschi)氏は、2016年の秋にブラジルからスタンフォード大に入学するために移住してきた。彼らは、当初Beyondという名の仮想現実のスタートアップで、YCへの参加を望んでいたが、それは受け入れられなかった。BeyondはほどなくBrexとなった。最近ダブグラス氏がTechCrunchに語ったところによれば、この名前が選ばれたのは、ドメイン名として利用可能な数少ない4文字単語の1つだったからだという。

Brexの資金調達の歴史

2017年3月:BrexがY Combinatorを卒業
2017年4月:シリーズA(650万ドル)評価額2500万ドル
2018年4月:シリーズB(5000万ドル)評価額2億2000万ドル
2018年10月:シリーズC(1億2500万ドル)評価額11億ドル
2019年5月:シリーズD(未公開)20億ドル程度の評価額

4月には、BrexはBarclays Investment Bankから1億ドル(約110億円)のデットファイナンス(借入金融)を受けている。そのときダブグラス氏はTechCrunchに対して、近い将来のベンチャー投資は考えていないと語っていたが、Brexが本当に資金調達を行うことを決定した際には、この借入資本が重要なプレミアムとなるだろうとコメントしていた。

2019年に、Brexは成熟に向けていくつかのステップを踏み出した。最近、顧客向けの報酬プログラムを開始し、Elphと呼ばれるブロックチェーンのスタートアップに対して、注目される初の買収を行った。その後まもなく、Brexは2番目の製品として、特にeコマース企業向けに作られたクレジットカードをリリースしている。

この先調達される資本は、おそらくフォーチュン500ビジネス向けに調整されたペイメントサービスの開発に使われることになるだろう。これは、ダブグラス氏の言葉によれば、ファイナンシャル技術全体をディスラプトしたいBrexの長期計画の一部である。

[原文へ]

(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。