ゼンリンCVCと第1号投資先レイ・フロンティアが創る「地図と位置情報データで住み良い街」

カーナビソフトなど地図データで知られるゼンリンは、2021年1月にCVC子会社としてゼンリンフューチャーパートナーズ(ZFP)を設立、4月に25億円規模の第1号ファンドを組成した。5月には投資第1号案件として、位置情報データスタートアップのレイ・フロンティアに出資を決めた。ゼンリンフューチャーパートナーズ代表取締役社長の松下春喜氏、ゼンリンMaaS企画部部長の藤尾秀樹氏、そして第1号出資先レイ・フロンティア代表取締役CEOである田村建士氏に話を伺った。

現在も協業、出資依頼が多いゼンリン

元々、ゼンリンにはベンチャー企業から協業や出資の提案は多く寄せられていた。ゼンリンは、これまでもM&Aや協業・資本提携により事業領域を拡大してきたが、近年の飛躍的な技術革新に対応し、事業領域を拡大していくためには、より広範かつ多岐にわたる分野・業種のベンチャー企業との協業や資本提携が有効であると判断し、迅速な意思決定や投資実行が可能となるようCVC子会社を設立することにした。

ZFPは合計6名のチームで始まり、60社以上のベンチャーの調査を進めている。事業シナジーを活かして、既存事業の成長と新規事業の創出を目指す。MaaS、物流、防災などへの応用の他、AI、量子コンピュータなどの基礎技術分野など、幅広く業界調査を行なって、投資間口を広くとっている。現在投資決定している第2号案件は、リテール業界におけるビッグデータを利用して個人向けプロモーション分析を行っている企業とのことだ。またベンチャーのステージについても、アーリーからレイターまで幅広く出資を検討する方針だという。

個人利用時に感じた技術力の高さがスピード投資を後押し

レイ・フロンティアとは、以前から長崎での観光型MaaS実証実験において連携するなど協業関係にあったが、事業部門からさらなる連携強化のため、同社への出資についても検討して欲しいとZFPに連携があった。連携を受けたZFPでは、事業シナジー効果の検証に加え、DD実施の上、投資の観点からも検証を行い、同社への出資がさらなる連携強化に資するとの結論に至った。

ZFP設立の当初目的とおり、迅速な意思決定がなされ、事業部門から連携を受けた3月初旬から約2カ月後の5月26日には出資が実現した。

レイ・フロンティアには位置情報を数秒単位での位置情報の取得が可能な位置情報収集技術「Silentlog SDK」、AIを活用した行動分析プラットフォーム「Silent Analysis」の技術があり、ゼンリンの自動車用ネットワーク、鉄道路線、駅構内通路、歩行者用ネットワークなど移動に最適化されたデータベース「Mobility based Network」と組み合わせることでMaaS推進を行っていく方針とのこと。すでに長崎での観光型MaaS実証実験においてスマートフォン向けアプリ開発に取り組んでいるという。

ゼンリンMaaS企画部部長の藤尾氏は「実際にレイ・フロンティアのSilentlogを、自分の移動、旅行遍歴などをトラックするのに使っていました。スマホの消費電力が相対的に少なく、いちユーザーとしてもその高い技術力を感じたことも投資決定に活かされています」という。また、レイ・フロンティアの田村氏は「スタートアップ側からすると地図データの収集は骨の折れる業務。ライセンスの問題もありましたが、、今回の投資、提携で事業が進めやすくなりました」と語った。

ゼンリンは「ZENRIN Maps API」も展開しており、データと地図が組み合わさり、技術成長や官民連携を通して、良い街や生活が実現されることを期待している。田村氏も「実際に、三陸鉄道と提携しリアルタイム運行情報をアプリで提供した事例では、通学学生からの電話などでの問い合わせが激減しました。少しずつでもポジティブフィードバックを積み重ねた先に、住み良い生活が待っていると考えています」という。

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カテゴリー:モビリティ
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TechCrunch Japan

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