AI革命を掲げ、多くの中国ハイテク企業に投資しているソフトバンクグループの孫正義社長は8月10日の決算会見で、中国当局のIT大手締め付けについて『長い目でみれば、どこかでもう一度バランスを取り直すと私は信じている』とコメントしました。
孫社長は『6月末を過ぎたあたりで、中国の問題が出てきました。DiDiが上場した直後や、フルトラックアライアンスも上場直後でしたね。その後、アリババもテンセントもバイドゥもメイトゥアンも、中国のハイテク株は今受難のときであります。しかし、長い目で見ればですね、業績は伸び続けているわけですから、もう一度バランスを取り直して、株価も持ち直すと私は信じております』とコメント。
また『世界のAI技術の革新の中心は2つあって、米国と中国であると思っています。ですから、今後とも中国におけるAI技術そしてビジネスモデルの革新はどんどんと続いていくんだろうと強く信じております』と述べました。
一方で投資活動については『新たなさまざまな規制等がはじまっておりますので、どのような規制がどのような範囲で行われるのか、そしてそれが株式市場にどのような影響を与えるのかを、もう少し様子を見てみたい』とし、中国企業への投資は当面見合わせる方針を示しました。
加えて『我々が中国政府の動きに反対しているとか、そういうことは全く考えてませんし、中国の将来性について疑念を抱いているかというと、それも全く違います。ただ、新たな規制、新たなルールが今はじまろうとしているばかりですから、もう少し様子が固まるまで、我々としては様子を見てみたいと。おそらく1年2年すれば、新たなルールのもと、新たな秩序がもう一度しっかり構築されると私は信じておりますので、その状況がはっきりしてくれば、中国での投資活動を活発に行うということは十分に可能性としてはありますが、ここしばらくは様子を見てみたいということです』とも付け加えました。
また、ソフトバンクグループの時価純資産(NAV)の多くを占めるアリババについては『依然として売上1.3倍増くらいが続いていますし、直近もそれが衰えずに伸びておりますので、アリババの株価もいずれ回復すると私は信じております』と述べた一方、「直近ではNAVに占めるアリババ株の割合はソフトバンク・ビジョンファンドを下回っている」とも述べ、アリババ一本足打法とみなされる状況を脱却しつつあるとも強調しました。
また、ビジョンファンドにおける中国企業への依存度については、ビジョンファンド1・2のトータルでは『2021年7月末の時価ベースで23%』としたものの、2021年4月以降の新規投資では11%に留まっていることも明かしました。
(Engadget日本版より転載)
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