ソフトバンクG孫社長がNVIDIAへのArm売却断念の経緯を決算会見で説明、2022年度内に再上場目指す

ソフトバンクG孫社長がNVIDIAへのArm売却断念の経緯を決算会見で説明、2022年度内に再上場目指す

NVIDIAへのArm売却断念、そして2022年度中にArmの再上場を目指すと発表したソフトバンクグループの孫正義社長は決算会見で、売却断念に至った経緯などを説明しました。

孫社長のコメントは下記の通りです。

「1年半前、コロナがこれからどのくらい地球上に災難をもたらすかわからないような状況で、我々は4.5兆円の資金化プログラムを発表しました」

「その一環として、Armを手放すことを意思決定したわけですけども、まあ泣く泣く意思決定したわけですね」

「でも、単純に手放したくはないので、売ったような買ったようなということで、Armを急成長しているNVIDIAと合体させて、我々がNVIDIAの筆頭株主になれれば、ArmとNVIDIAがくっつけばまさに鬼に金棒という状況になりますので、チップの世界で、圧倒的世界最強の会社ができると。その筆頭株主に我々はなるんだという願いで、ArmのNVIDIAへの売却を契約したわけです」

「しかしその後ですね、なんとGAFAに代表される主要なIT業界の企業が、こぞって猛反対。そしてアメリカ政府もイギリス政府もEUの国々もこれに猛反対という状況になりました」

「通常は独禁法で合併を阻止しようとする際、同じ業界、たとえば車のエンジンを作ってるA社とエンジンを作っているB社が合併しようとすると、マーケットシェアが大きくなりすぎるということで、独禁法で止められるということなんですが、NVIDIAとArmは全く違ったものを作っている。言ってみればエンジンとタイヤくらい違うわけですね」

「この違う事業をやっている2社の合併を独禁法で阻止するというのは、独禁法が始まって以来初めてのケースで、我々も驚いたわけですけども、なぜそれほど止めなければいけなかったのかというと、それは各国政府やGAFAに代表されるような企業が、それほど止めなければいけないというくらい、ArmがIT業界、シリコンバレーの殆どの企業がArmを直接あるいは間接的に活用している、欠かす事のできない最重要カンパニーの1つということなんですね」

「そして今日、さきほど、Armの売却を中止するということでNVIDIAと合意に至りました」

「NVIDIA側からしても、合併は今でもしたいという気持ちはたいへん強く、最後までその気持ちは大変強いという状況でしたが、これほど各国政府が合併を阻止する強い動きに出ましたので、これ以上は承認を得る努力をしても認められないだろうということで、合併を諦めるということで、NVIDIAと我々が合意にいたったわけでございます」

2022年度内に再上場めざす

「まあ我々としては、(Armの再上場は)プランBということになりますが、もともと我々がArmを買収したのが2018年で、そして5年後くらいの2023年ぐらいに再上場するということを、買収当時から実はコメントしておりました」

「我々はArmを買収して一旦非上場会社にしたわけですが、そこからもう一度新しいArmの製品群に先行投資をし、(新しい製品群の)準備が整ったところでもう一度再上場する、その期限はだいたい2023年くらいだと買収した当日から言っておったわけですが、ちょうどその時期に達したと。2022年度という2023年3月末までですから、ちょうど2023年になります」

「当初から思っていた期限で、再上場させるということで、もともとのプランに戻ろうということであります。NVIDIAとの合併という意味ではプランBになりますが、もともとオリジナルの案なのですから、むしろこちらがプランAなのかもしれない」

Armの黄金期がやってくる

孫社長はその後、2021年度にAWSがArmアーキテクチャを採用するなど、スマートフォンだけでなくクラウドにもArmの採用が進んだことを強調。

ソフトバンクG孫社長がNVIDIAへのArm売却断念の経緯を決算会見で説明、2022年度内に再上場目指す
そして今後はEV、メタバースで爆発的にArmの需要が増えるとしたうえで「第2のソフトバンクの成長の鍵になるのがArmだ。Armが戻ってきた。これから黄金期を迎える」とし「NVIDIAとのディールも成功した欲しかったが、むしろこっちも悪くない。振り返ってみたらこっちのほうが良かったと思うようになるんじゃないか」「Armは半導体市場最大のIPOになる」とコメントしました。ソフトバンクG孫社長がNVIDIAへのArm売却断念の経緯を決算会見で説明、2022年度内に再上場目指すソフトバンクG孫社長がNVIDIAへのArm売却断念の経緯を決算会見で説明、2022年度内に再上場目指す

──なぜArmの急成長を見込んでいるのに再上場させるのか

孫社長:Arm株の25%はビジョンファンド1が持っています。ここには外部の投資家がいます。彼らのためにも上場株としての価値を作るのは我々の使命の1つ。2つ目の理由は、社員に十分なインセンティブを与えるため。エンジニア中心の会社ですから、彼らの労に報いるために、上場株のさまざまなストックオプションを提供していきたい。また、これから社会のインフラを担うようになるために、できるだけ透明性のある経営とするためにも上場するのが適切だろうと考えた。

──Armはどこで再上場させる?

孫社長:米国のNASDAQを目指している。

──Armはもともと英国の会社だが、なぜロンドンではなく米国での再上場を考えているのか

孫社長:Armの利用者は大半がシリコンバレー。また投資家もArmについて非常に高い関心を持っていると聞いている。そういう意味では、ハイテクの中心である米国のNASDAQが一番適しているのではないか。おそらくハイテクの中心のNASDAQに再上場すると思っているが決定ではない。

Engadget日本版より転載)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。