チーズを愛するStockeld Dreamery、豆類からチーズを作るために約22億円調達

チーズは一度ハマると虜になる食べ物の1つだ。また、ミルク以外のものから作るのが最も難しい食べ物の1つでもある。Stockeld Dreamery(ストッケルド・ドリーマリー)は、その難題に挑戦しただけでなく、その成果として製品を生み出した。

9月上旬、ストックホルムを拠点とする同社は、Astanor Ventures(アスタノール・ベンチャーズ)とNorthzone(ノースゾーン)が共同で実施したシリーズAラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達したことを発表した。創業者のSorosh Tavakoli(ソロシュ・トヴァコリ)氏がTechCrunchに語ったところによると、このラウンドは「植物由来の代替品を扱う欧州のスタートアップとしては過去最大のシリーズAラウンド」であるとのことで、Gullspång Re:food(グルスポング・リフード)、Eurazeo(ユーラゼオ)、Norrsken VC(ノルフェンVC)、Edastra(エダストラ)、Trellis Road(トレリスロード)、およびエンジェル投資家のDavid Frenkiel(デイヴィド・フレンキエル)氏とAlexander Ljung(アレキサンダー・リュング)氏が参加した。

トヴァコリ氏は以前、動画広告のスタートアップ「Videoplaza(ビデオプラザ)」を設立し、2014年にOoyala(ウーヤラ)に売却した。次のプロジェクトを探していた同氏は、自己分析を重ねた結果、次の会社では環境に好影響を与えるようなことをしたいと考えていたという。そして、行き着いたのが、食の世界、特に植物性食品の世界だ。

「動物に頼らないことは、工場式農場はもちろん、土地、水、温室効果ガスにおいて大きなメリットがある」と同氏はTechCrunchに語る。そして「チーズの影響が最も大きいことが分かった。しかし、人々は食生活を変えたいと思っていても、いざ代替品を試してみると、それが気に入らない」と続ける。

そこでトヴァコリ氏は、科学に精通する共同創業者を探し、バイオテクノロジーと食品科学をバックグラウンドに持つAnja Leissner(アンジャ・ライスナー)氏と出会った。そして2019年、両氏はストッケルドをスタートさせた。

ノースゾーンのジェネラルパートナーでありビデオプラザへの出資者でもあったPär-Jörgen Pärson(パー・ヨルゲン・パーソン)氏は、ストッケルド・ドリーマリーは「最高の技術と最高の科学がペアになった」結果であり、トヴァコリ氏とライスナー氏は「科学的な知識と未来のビジョンに基づく商業的なアプリケーションを提案しており、ユニークではないにしても、フードテックの分野では非常に珍しい存在だ」とメールで述べている。

同社の最初の製品であるStockeld Chunk(ストッケルド・チャンク)が5月に発売されたが、そこにはいくつもの挑戦や試練があった。トヴァコリ氏によると、製品といえる「チーズ」にたどり着くまでにチームは1000回以上のテストを繰り返し、納得できる配合を見つけ出したという。

植物由来のミルクのカテゴリーは、そのほとんどが成功しているが、それは必ずしも植物性だからという理由ではなく、美味しいからだと同氏は説明する。肉のカテゴリーでもイノベーションは進んでいるが、チーズはまだ難しいようだ。

「通常、植物由来のチーズは、でんぷんとココナッツオイルから作られており、その匂いやゴムのような口当たりでは食を楽しむことはできないだろう。それに、タンパク質も含まれていない」とトヴァコリ氏は付け加える。

ストッケルドは、タンパク質を主成分としたいと考えていたため、チャンクは発酵させた豆類(今回はエンドウ豆とそら豆)を使用している。その結果、フェタチーズのような見た目と食感を実現したことに加え、タンパク質を13%含んでいる。

チャンクは当初、スウェーデンのレストランやシェフを対象に発売された。その他にも、塗るチーズやとろけるチーズなどの製品を開発中であり、トヴァコリ氏は今後1年以内に市場に投入したいとしている。とろけるチーズは、作るのが最も難しいチーズの1つだが、成功すればピザの材料としての可能性が広がると同氏はいう。

今回のラウンドを含め、ストッケルドはこれまでに2400万ドル(約26億円)を超える資金を調達している。4人でスタートした同社は、現在23人にまで成長しており、トヴァコリ氏は来年末までにそれを50人にする意向だ。

今回の資金調達により、同社は研究開発に注力するとして、パイロットプラントを建設している。また、来年にはストックホルムの新本社ビルに移転する予定だ。さらに同社は、スウェーデン国外への展開や米国への進出も視野に入れている。

トヴァコリ氏は「当社には、当社がやろうとしていることを理解してくれる意欲的な投資家がいる。大きく考え、それに応じて計画を立てるチャンスがある。当社は、豆類をタンパク質に利用するという意味では、独自のカテゴリーに属していると思う。豆類を発酵させた第3のカテゴリーのようなもので、これをどこまで進化させることができるか、とても楽しみにしている」と述べる。

アスタノール・ベンチャーズの共同設立者兼パートナーのEric Archambeau(エリック・アーシャンボー)氏も、そのような投資家の1人だ。同氏もトヴァコリ氏とは前の会社で知り合い「植物由来の次世代のチーズ」を作るというアイデアを聞かされたとき、興味を持ったとメールで語っている。

「ストッケルドのチームは、設立当初から、本当に革命的でおいしい製品を作ろうとする勤勉さ、決断力、コミットメントを持ち、それに感銘を受けてきた。彼らは型にはまらない製品を作り、世界のチーズ業界の新しい未来に向けて道を切り開いたのだ」とアーシャンボー氏は語った。

画像クレジット:Stockeld Dreamery

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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