ニュースアプリ各社はタダ乗り問題やネイティブ広告をどう見てる?

左からスマートニュースの鈴木健氏、ユーザーベースの梅田優祐氏、グライダーアソシエイツの町野健氏、Gunosyの木村新司氏

7月17日、18日に福岡で開催されている「B Dash Camp」。本日の目玉とも言えるセッション「スマホニュースメディアの勝者は誰か?」にはGunosyやNewsPicks、Antennaの3メディアに加えて、飛び入りでスマートニュースの代表までもが登壇。一部で「コンテンツ泥棒」と指摘されているタダ乗り問題、話題のネイティブ広告、さらには「ヤフーやLINEにやられて嫌なこと」といったセンシティブな話題について各社が胸の内を明かした。

登壇者はGunosyの木村新司氏、グライダーアソシエイツの町野健氏、ユーザーベースの梅田優祐氏、スマートニュースの鈴木健氏の4人。セッションの火蓋は、モデレーターを務めたユナイテッドの手島浩己氏の次のような質問で切って落とされた。

――キュレーションアプリはコンテンツにタダ乗りしていると言われるが、媒体社に利益を還元することについてどう考えている?

木村:僕らはキャッシュするにあたって、媒体社の了承を取っている。Gunosyは受注した広告を配信することで、媒体社は何もしなくても収益が出るような仕組みを作っている。

鈴木:スマートモードでキャッシュしたページでは、媒体社が指定する広告を表示できる「スマートフォーマット」という仕組みを提供している。そこで発生した収益は100%媒体社に還元する。

――各社は「競争」をどの程度意識している? Gunosyは一気に攻めているが。

鈴木:どうしましょうかね(笑)

木村:僕らは負けてたので踏み込むのは当然。今年3月の時点でスマートニュースは300万ダウンロードだったが、僕らは180万ダウンロード。今は僕らが少し抜いたくらい。

――Gunosyとスマートニュースはユーザーインターフェイスが似てますよね?

木村:似てます。ユーザーを見ていると、(サービス開始当初に売りにしていた)パーソナルニュースだけじゃなくて、その日に全国で起こった共通の話題を知りたいニーズがある。

鈴木:メディアについて考えるときに、ある種のメディアが独占的になるのはよろしくない。世界中を見ても、日本ほどアグリゲーター(ヤフー)が強い国はない。何千万人が読むメディアは政治的な影響力も大きい。僕らはこれを意識しないといけない。1つのメディアをみんなが見るのは危険。海外のように複数メディアが共存しているのが健全。経営者としてはシェアが欲しいが、社会全体を考えると、代替的なメディアがあるのが健全。ヤフーは競合と言われるが、第2、第3の選択肢が出るのはいいこと。」

木村:僕も同じ考え方。我々のようなメディアは色を持たないことが重要。Gunosyとしては記者を抱えて意見を書けば色を持ち始めるかもしれないが、それはやりたくない。

――梅田さんは(元東洋経済編集長の)佐々木さんを抱えて何やるの?

梅田:一生健命チームアップしているところ。9月くらいには出したいが、テーマを決めてNewsPicksらしいコンテンツを出せれば。前提として考えているのは、アグリゲーションはコモディティ化するということ。生き残るのは1、2社。結局はいろんなプレイヤーが真似して、同じようなインターフェイスに収れんする。最終的な競争はコンテンツに行く。長い目で見るとコンテンツが重要というのが根底にある。

鈴木:我々はアグリゲーターなので、コンテンツを作る部分とはレイヤーを意識するのが大事。現時点で独自コンテンツを作る予定はないが、梅田さんの話は説得力がある。

――ヤフーやLINEにやられて嫌なことは?

鈴木:グノシーを買収することですかね。(事業が)加速しそう。

木村:KDDIさんから出資を受けてますので……。今のLINEニュースはアプリを捨てて、LINE内でのニュース配信に力を入れているし、多分伸びている。LINEは5000万ダウンロードがある。アクティブ率も高い中でコンテンツを送られるのは辛いものがある。

――テレビCMの効果どうでした?

町野:効果は高かった。我々はターゲットを女性に絞ってオシャレなメディアを目指して、CMは都心の認知度を高めるのが狙い。認知率40%を目標にしていたが、(親会社の)マクロミルの調査では50%くらいに上がった。今後は認知を刈り取るような展開も考えている。

木村:CMではアプリのダウンロード数を重視している。3カ月で17本くらいCMを作っていて、ウェブのバナーみたいな感じで作っている。(代理店の反応は)ドン引きですね。

鈴木:検討はしてます。

――ネイティブアドは今後どの程度伸びる?

木村:ネイティブアド、いわゆる記事広告は書く人の数が限られるのでスケールしない。それよりも、スマホのサイトで5000万PVがあるのに、月間売上は1000万円しかなかったりするのが根本的な問題。雑誌や新聞からユーザーが移ってきても、そこの広告費が来る場所と見せ方がない。その再発明をすることが大きな収益を生む。

鈴木:ワールドカップ期間中にナイキとソニーを広告を出した。本当に実験でやっていて、ユーザーの反応や体験を実験するのが狙い。今後、広告事業をどうするかは、すごい問い合わせがあちこちから来ている。どこと組んでやっていくか検討しているのが現状。」

――ニュースアプリ=ポータルと定義した時に、今後はどのように事業領域を拡張する? ヤフーみたいになるのか?

木村:ニュースだけでは人の時間は埋められない。スマートフォンにはまだ可処分時間が残っていると思っていて、そこに対するコンテンツをひとつひとつ提供するのはやっていきたい。その中で天気やスポーツ、占いはあると思うし、ヤフーがやっているようなコンテンツはある。今の僕らは、ユーザーのもとに届いて心地良いものを考えている。

鈴木:スマートニュースは天気やスポーツもやっているし、どんどん広げていく。結果としてヤフーが持つコンテンツに近づくのはあると思う。でもそれは最低限。スマートニュースがやったことは、スマホでニュースを読む文化を切り開いたこと。その結果、20年前にウェブの世界でやっていることの繰り返しではやる意味がない。僕らはイノベーションでプロダクトの力で圧倒的なユーザー体験を目指していく。

スマートニュースのミッションは、良質なコンテンツを提供すること。良質というのはやっかいで、人によって意見が全然違う。スマートニュース代表ではなく、個人的な意見としては、その人のモノの見方や人生観を変えるものをやりたい。

梅田:僕たちはビジネスパーソンの情報接点を全部抑えたい。経済の領域の外には出ないことは決めている。可能性の1つはテレビを含む動画、もう1つは紙の領域。社内では反対されているが、僕は紙の領域にも可能性を感じている。


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TechCrunch Japan

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