フェイスブックとInstagramで「いいね!」の数を非表示可能に、徐々に展開中

Facebook(フェイスブック)は5月下旬に、2019年に開始した先行テストに続き、FacebookとInstagram(インスタグラム)の両方における投稿の「いいね!」を非表示にするオプションを公に展開する。「いいね!」の表示に関する決定を世界中のユーザーの手に委ねるというこのプロジェクトは何年も前から開発が進められていたものの、新型コロナウイルスのパンデミックと同社側の対応作業のために優先順位が下がっていたと同社は伝えている。

関連記事:Instagramは「いいね!」の数を世界で非表示にする実験を実施

当初、Facebookのソーシャルネットワークで「いいね!」の数を非表示にするというアイデアは、ユーザーが感じているプレッシャーを緩和させるという点に焦点を当てたものだった。自分の投稿に対する「いいね!」の数が少ないと人気がないと見なされ、ユーザーは度々不安になったり恥ずかしさを感じたりするという事実がある。この問題は特に友達からどう思われているかを重視する若年層のユーザーに顕著で、中には「いいね!」の数が少ない場合投稿を削除してしまうというケースもある。

特にInstagramでは「いいね!」の数を求めるという風習により、知名度や影響力を得るために投稿をするという環境ができ上がってしまい、その結果あらゆる投稿が信憑性に欠けたものになるという状況になっている。Facebookでは「いいね!」などのエンゲージメントを獲得することが、何らかのリアクションを必要とする偏向的なコンテンツの投稿につながることもある。

こういったプレッシャーが渦巻く中、人気度を気にすることなく友人やその他の人々との関わり合いを楽しめる「いいね!」の数から解放された安全な空間を求めるユーザーが増えてきたのである。その結果としてMinutiaeVeroDayflashOgglの他、 Dispoといったニューカマーや大人気のPoparazziなどのソーシャルネットワークや写真共有アプリが誕生した。

関連記事:性的暴行疑惑で写真SNS「Dispo」取締役ドブリック氏が退任、VCは「一切の関係を断つ」と決定

FacebookとInstagramは「いいね!」の機能を完全に削除し、ソーシャルネットワークを新しい方向へと導くこともできたはずなのだが「いいね!」のメトリクスとプロダクトエクスペリエンスがあまりにも深く関わり合っているため、完全に削除できないことが分かったのだ。問題の1つに、インフルエンサーコミュニティが「いいね!」をある種の通貨として利用し、オンラインでの人気をブランドとの契約や仕事のチャンスとして取引しているということが挙げられる。こういったユーザーにとっては「いいね!」の削除など選択肢にないのである。

どの決定を下したとしても、どちらかのユーザーを怒らせることになるとInstagramは気がついた(どちらにせよアプリの使用率など他の中核的なメトリクスにはあまり影響がないのだが)。

画像クレジット:Instagram

「Instagramでの体験をユーザーがどのように感じ、どれだけ使うかという視点から見ると、自分や他人の『いいね!』の数は私たちが考えていたほど影響がないことが判明しました。ただし結果的にはかなり偏った意見となっています。とても良いと感じるユーザーと、まったく良くないと感じるユーザーのどちらかです」とInstagramの責任者であるAdam Mosseri(アダム・モゼリ)氏は話している。

「良いと感じたユーザーは我々が期待していた通りの意見で、これによってInstagramでのプレッシャーが緩和されると感じています。まったく良くないと感じるユーザーは『いいね!』を使ってInstagramやFacebookで何がトレンドになっているのか、何が人気なのかを把握しているため、それがなくなってしまい腹を立てていたのです」と同氏。後者のタイプには、ソーシャルメディアでの存在感を確立しようと努力している小規模なクリエイターなどが多いが、大物のインフルエンサーの中には『いいね!』の削除に対して好意的な人も少なくないという(モゼリ氏によるとケイティ・ペリーは『いいね!』削除の賛成者だという)。

最終的に同社はこの決定を分割することにした。オンラインコミュニティの将来に関する難しい選択を行う代わりに「いいね!」の非表示という選択肢を両プラットフォームでユーザーが自由に設定できるようにしたのである。

Instagramではコンテンツ消費者とコンテンツ制作者の両方の投稿に対する「いいね!」や「閲覧数」のカウントを非表示にすることができる。つまり、フィードをスクロールしているときに見えるこれらの数を表示しないようにすることも、自分が何かを投稿した際に他人が「いいね!」の数を閲覧できるかどうかを選択したりすることもできるのだ。これらは異なる2つの設定として分けられており、より柔軟にコントロールできるようになっている。

画像クレジット:Instagram

一方、Facebookでは「設定とプライバシー」から「ニュースフィードの設定」(デスクトップ版では「ニュースフィードの環境設定」)の新しい設定にアクセスすると、ここに「リアクション数を隠す」というオプションがあり、自分の投稿だけでなくニュースフィード、グループ、ページ内の他の人の投稿についてもこの設定をオフにすることができる。

この機能は公開プロフィールと非公開プロフィールの両方で利用可能で、以前に公開した投稿もこれに含まれるとFacebookは伝えている。

画像クレジット:Facebook

Instagramは2021年4月、グローバルユーザー向けにこの新設定を公開する前に、最終的なバグを解消するためこの機能のテストを再開し、またFacebookでのテストも間もなく開始すると発表している。それなのに現在すでにこの機能の公開を進めている。なぜこのような短期間のテストを行ったのかというTechCrunchの質問に対してInstagramは、2019年からこの件に関するさまざまなテストを繰り返し行ってきたため、世界規模での公開を進めるのに十分なデータを得ることができたと答えている。

関連記事:Instagramが「いいね!」の表示・非表示を選べるテストを開始、フェイスブックも続く

またモゼリ氏は「いいね!」に関する決定がネットワークに大きな影響を与えるという考えを否定している。「いいね!」数の削除はユーザーの行動に多少の影響を与えたものの、問題になるほどではなかったという。あるグループではむしろ投稿数が増えており、これは同アプリ使用にまつわるプレッシャーが減ったことを示しているのかもしれない。ただし、使用が減ったグループが存在することも確かだと同氏は話している。

画像クレジット:Facebook

 

「『いいね!』の数の多さを見てその投稿に興味を持ち、その投稿へのコメントを読んだりさらにスワイプしたりして深く見入っていく場合もあります。少なからず影響はあり、プラスの効果もあればマイナスの効果もありますが、いずれも小さなものです」と同氏。またユーザーは自分の気分次第であらゆるタイミングでこの機能のオンとオフを切り替えるだろうとInstagramは考えている。

さらにモゼリ氏はゲーム化されたソーシャルメディア空間がユーザーの精神衛生に悪影響を与えるという世間の懸念に反対し「『いいね!』が人々の健康に悪影響を与えるという厳密な研究結果はない」と主張。むしろ人々の1日の中でInstagramはまだ小さな存在であり「いいね!」がどう機能するかは人々の全体的な精神衛生には影響しないと主張している。

「Instagramの規模は大きいですが、その影響力を過大評価しないように注意しなければなりません」と同氏はいう。

同氏はまた、利用状況を直接測定するのではなく、ユーザーが自己管理するという方法に過度に依存しているというソーシャルメディアの使用の悪影響をうたう最近の研究に対して否定的である。

つまり、同社は人気度に起因する精神的な悪影響を考慮して「いいね!」数を削除しようとしているわけだけではないということだ。

競合であるTikTok(ティックトック)がFTC(連邦取引委員会)との和解後に行ったのと同様に、13歳未満の子どもにもInstagramアプリを利用できるようにするという計画もこれに関わっている可能性があると言えるだろう。この場合「いいね!」をデフォルトで非表示にするか、あるいはペアレンタルコントロールのオプションを追加する必要があるからだ。InstagramはTechCrunchに対し、子ども向けアプリで何をするかを決めるにはまだ機が熟していないが「いいね!」をデフォルトで非表示にするオプションについては「必ず検討していく」と話している。

関連記事:米国の州司法長官らがフェイスブックに子ども用Instagram計画の撤回を要求

FacebookとInstagramの両社はTechCrunchに対し、この機能は米国時間5月26日から展開し、その後世界中のユーザーに向けて徐々に展開していく予定だと話している。Instagramに関しては数日で完了するかもしれない。

しかしFacebookに関しては、5月26日にこの機能が導入されるのはごく一部のユーザーのみだという。ニュースフィード上のアラートで通知されるこの機能は「今後数週間のうちに 」Facebookの世界中のユーザーに行き渡るとのことだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookInstagramSNS

画像クレジット:

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。