フォルクスワーゲンとArgo AIが初のID Buzz自動運転テスト車両を公開

小型商用車の開発と販売を手がける独立したVWブランド、Volkswagen Commercial Vehicles(フォルクスワーゲン・コマーシャル・ビークルズ)と、自動運転テクノロジー会社のArgo AI(アルゴAI)は米国時間9月5日、ID Buzz AD(自動運転)の初バージョンを公開した。

ミュンヘンで開かれるイベント、IAA MOBILITY 2021に先駆けて開催されたVWナイトイベントで、2社は共同開発した全電動自動運転のバンを今後4年間でテスト・商業展開する計画を明らかにした。計画している最初のテスト車両5台の1台であるプロトタイプの試験はすでに始まっていて、ミュンヘン近くのノイファーンにあるArgoの開発センターならびにミュンヘン空港近くにある同社の9ヘクタール(9万平方メートル)あるクローズドコースで続けられる。試験は、欧州の運転コンディション特有のさまざまな交通状況と、米国にあるArgoのテストトラックを想定して行われる。

「当社の5年にわたる開発と、大きく、複雑な米国の都市でのオペレーションから学んだことに基づいて作り上げており、MOIAとの自動運転商業ライドプールサービスの立ち上げ準備のためにミュンヘンの路上で間もなくテストを開始することを楽しみにしています」とArgo AIの創業者でCEOのBryan Salesky(ブライアン・セールスキー)氏は声明文で述べた。

モビリティソリューションで地方自治体や地域の公共交通事業者と協業しているVW Groupの子会社であるMOIAは、2025年に自動運転ライドプールシステムの一環としてハンブルグでID Buzzを商業展開する。ライドプールサービスは都心部の混雑を和らげるために自律システムのパワーを活用する。

自動運転専門の部門を別に設け、Argo AIの株式を獲得したVolkswagen Commercial Vehiclesはイベントで、自動運転システム経由のライドシェア(相乗り)が交通の流れの管理でいかに役立つかデモンストレーションしてみせた。

「LiDAR6台、レーダー11台、カメラ14台を車両のあちこちに備える環境認識システムは人間のドライバーが運転席からとらえることができる以上のものを把握できます」とVolkswagen Commercial Vehiclesの自動運転責任者、Christian Senger(クリスチャン・センガー)氏はイベントで述べた。

VWは2017年に、ファミリーキャンパーバンとして懐かしさを呼び起こすクラシックなマイクロバスに未来的な要素を加えたID Buzzをコンセプトカーとして発表した。Buzzのルーフの上に設置されているArgo独自のセンサーであるArgo LiDARなど、自動走行に必要なすべてのものを含んでいる最終プロダクトの外観は、アイコン的キャンパーとは少し異なる。Argo AIによると、同社のLiDARは1300フィート(400メートル)以上離れたところにある物体を検知できる。Argoは4年前にLiDAR企業のPrinceton Lightwaveを買収した。これによりArgoは、黒い車両など低反射率の物体をとらえて感知し、そして正確に認識することができるよう、最小の軽粒子である単一光子を感知できる特許取得済みのGeigerモードテクノロジーを備えた新しい高精度センサーを製造できるようになった。

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VWの声明文によると、Argo AIのシステム全体は、コンピューターが車両の周囲360度を見ることができるようにするセンサーとソフトウェアで構成され「歩行者や自転車、車両の動きを予測し、経験を積んだドライバーが運転するように車両が安全かつ自然に走行することができるよう、エンジン、ブレーキ、ハンドル操作システムに指令を送る」。

Argoの技術が人間輸送に今後使用される例は今回が初ではない。ArgoとFord(フォード)は2021年7月、今後5年間で少なくとも1000台の自動運転車両を配車サービスLyft(リフト)のネットワークを使ってマイアミやオースティンといった都市で展開する計画を発表した。また同月、カリフォルニア州公共事業委員会はArgoにドライバー付きAVパイロット許可証を発行し、Argoはカリフォルニア州の公道でテストできるようになった。VW GroupがArgo AIへの26億ドル(約2860万円)の投資を最終決定してからほぼ2年、Argo AIの直近のバリュエーションは75億ドル(約8240億円)となった。

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画像クレジット:Volkswagen Group

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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