NHKは4月7日、生後6か月の男児が「乳児ボツリヌス症」で亡くなるというニュースを報じた。NHKによると乳児ボツリヌス症の死亡例は昭和61年以降、全国初だという。乳児ボツリヌス症は、消化気管が十分に発達していなく、腸内環境の整っていない生後間もない乳児がボツリヌス菌を摂取すると、腸内で繁殖し、毒素を出すことで発症する。ボツリヌス菌は自然界に広く生息していて、植物の花粉を汚染している場合、はちみつに混入する場合がある。ボツリヌス菌は家庭での加熱調理では死滅させるのが難しい。そのため東京福祉保健局は、1歳未満の乳児にはボツリヌス菌の芽胞に汚染される可能性のある食品(はちみつ等)を食べさせるのは避けるよう、注意を促している。
このニュースを受け、はちみつを含む離乳食レシピを掲載していることに対してレシピサイト大手のクックパッドに批判が相次いだ。
これまでもクックバッドは乳児向けのレシピについて注意喚起を行ってきたが、クックパッドは4月10日付けの投稿で料理レシピを再度確認し、注意喚起をさらに実施していくと伝えた。
今回の出来事は、市販のジュースにはちみつを混ぜたものを飲んでいたと報じられております。 クックパッドはこのような大変悲しい出来事に接し、サイト内に投稿された料理レシピについて再度確認の上、必要に応じた注意喚起を更に実施して参るとともに、皆様の「毎日の料理を楽しみにする」ために、食の安全に関する発信をさらに強化し、皆様の知見の向上を一層サポートさせていただく所存です。
他のレシピサイトも対応を進めている。楽天レシピも4月9日付けのブログ投稿で、はちみつの入った離乳食レシピの差し戻しを行っていると発表した。
楽天レシピでは、生後12ヶ月未満のはちみつが入った離乳食レシピは安全性を考慮して承認しないようにしております。また、該当するレシピは差し戻し処理を行っております。
情報の信憑性という問題では、昨年12月に起きた医療情報のキュレーションサイトWELQに端を発した問題が記憶に新しい。DeNAは、運営するWELQで医療関係者の監修を付けず、信頼性の乏しいコンテンツを制作、配信したことへの責任を問われたが、今回の件は、個人が自由にレシピを投稿して共有できるプラットフォームの運営元の責任を問う声がネットにあふれた形だ。
現在、世界ではフェイクニュースが問題となっているが、これもプラットフォームの運営元に配信するコンテンツの品質の責任を問うという意味では共通していると言えるかもしれない。
例えば、Facebookは捏造記事やフェイクニュースを拡散し、昨年11月の大統領選挙の結果に影響を与えたとして世間から批判を浴びた(Facebookの場合は、ユーザーが見たい意見しか表示されないようになるエコーチャンバーの問題とも絡んでいる)。これを受け、Facebookは外部の協力者の力を借り、フェイクニュースに警告をつけるなどの対応を進めている。
Googleも先日、検索結果に事実チェックを表示する機能を世界展開した。Google日本法人においては、WELQ問題を受け2017年2月にオリジナルで有用なコンテンツを持つ高品質なサイトが、より上位に表示されるようになるよう、日本語検索のアルゴリズムを変更する対応を行っている。
従来の新聞やテレビなどのメディアの場合、情報の安全性や正確さにおける責任の所在は情報を発信元にあることが、より明確だった。しかし、消費者が検索サービスやSNSといったプラットフォームであらゆる発信者が提供する情報にアクセスできるようになるほど、多大な影響力を持つFacebook、Googleをはじめ、レシピサイトといったプラットフォーム事業者にもその情報が安全で、正しいものかどうかチェックすることも期待するようになっているようだ。プラットフォーム事業者は豊富なコンテンツを集めるだけでなく、扱うコンテンツの品質まで気を配ることが求められていると言える。