ポルシェ、ヤマハが電動モビリティのオンライン販売を行うRidepandaに出資

電動マイクロモビリティのオンラインディーラーであるRidepanda(ライドパンダ)が、375万ドル(約4億1600万円)の資金調達を発表した。この資金は、同社のeコマースおよびB2Bソリューションを発展させるため、エンジニアリング、プロダクト、デザインの各チームの増強に使用される予定だ。また、同社は配送業者や、電気自動車を購入した従業員に通勤手当を支給する企業との戦略的パートナーシップを強化したいとも考えている。

2020年は電動アシスト自転車や電動スクーターの販売が急増した。Bicycle Associationは、新型コロナウイルスが2020年1月から10月までの間に英国のサイクリング経済に与えた影響を詳しく調査しているが、そのリポートによると、電動アシスト自転車の販売台数は2倍以上に膨れ上がったことが明らかになった。Deloitte(デロイト)は、2023年には電動アシスト自転車の販売台数が全世界で4000万台を超え、220億ドル(約2兆4000億円)以上を生み出すと予測している。電動マイクロモビリティの選択肢増加にますます追い風が吹いている市場において、Ridepandaの事業は、一般消費者向けと商用(配達業務やレンタル事業)向けの両方で、電動アシスト自転車、電動キックスクーター、電動スクーターの販売を牽引する可能性がある。

「自動車による移動の60%は5マイル(約8キロメートル)以内です。その程度の移動であれば、もっと良い方法があると、私たちは考えています」と、Ridepandaの共同創業者でCEOを務めるChinmay Malaviya(チンメイ・マラヴィヤ)氏は、TechCrunchに語った。「電気自動車は1つの解決策ですが、私たちが提供する車両は、もっと安く、より扱いやすく、より手軽に乗れて、より実用的で、渋滞にも強く、収納しやすく、駐車しやすく、充電しやすく、環境にやさしく、健康にも良いので、より楽しく乗れると思います」。

サンフランシスコを拠点に米国48州に出荷しているRidepandaは、Segway-Ninebot(セグウェイ – ナインボット)の電動キックスクーターから、Aventon(アヴェントン)の電動アシスト自転車、Niu(ニウ)の電動オートバイまで、さまざまな電動軽車両を提供している。2019年の創業以来、同社は販売した車両の台数を明らかにしていないが、マラビヤ氏はTechCrunchに「4桁の数字」だと語った。

共同創業者でCTOのCharlie Depman(チャーリー・デップマン)氏によると、電動アシスト自転車が最も人気があり、電動キックスクーターがそれに続くという。電動スクーターにはまだ成長の余地があるが、このカテゴリの販売が伸びない理由の1つは、現在も解決されていない新型コロナウイルスの影響による部品供給不足の問題があるためではないかと、デップマン氏は考えている。

Ridepandaは、サイトに掲載している各車両を事前に審査し、すべてのパーツが高品質で修理や交換が容易であることを確認している。故障した電動キックスクーターを従来の自転車店に持ち込んで、苦い経験をした人なら、その有益性が非常によくわかるだろう。

Ridepandaのサイトにアクセスすると、洗練されたレコメンデーションエンジンが、都市部での通勤や郊外でのレジャーなど、それぞれのユーザーの用途に合った最適な乗り物を選ぶのを手伝ってくれる。

「当社のお客様の5分の1は、当社のサイトを訪れたときに、自分がどんな種類の乗り物を求めているのかを知らないのです」と、デップマン氏はTechCrunchに語った。「当社では、お客様のユースケースや好みの機能に応じて、ランク付けされたおすすめの車種を紹介します。そこからそれぞれの車種のページに移動すると、当社についての詳しい説明や、メンテナンスプランやロードサイドアシスタンスなどを提供しており、安心して所有していただくことができます。基本的には自動車を所有するのと同じくらい簡単ですが、普通はこのようなインフラの多くは、電動軽車両を所有するためには用意されていません」。

車両は顧客に直接配送され、顧客は自分で組み立てるか、訓練を受けた技術者が家に来て自宅で組み立てるかを選択できる。

同社では、今回調達した資金によって、このような受注から納車までのフルフィルメントプロセスの自動化や「PandaCare(パンダケア)」アプリによるアフターサービスの構築など、ユーザーと直接関わるアプローチを改善していきたいと考えている。

PandaCareは、メンテナンスやロードサイドアシスタンス、延長保証など、すべてのサービスを提供する当社のフラッグシップディーラーシップです」と、デップマン氏は語る。「理想としては、このアプリを使ってすべてのサービスにアクセスできるようになることです。例えば、メカニックを呼んで自分の車両の修理をしてもらったり、あるいは予防的なメンテナンスの必要を、オーナーや当社に通知することで、車両の寿命を伸ばすこともできるでしょう」。

Ridepandaは製品面でも、地域に合わせてパーソナライズすることを目指している。このような電動軽車両を取り巻く法規制は州によって違い、購入時に支給される補助金も州ごとに異なるからだ。

2021年2月、オレゴン州選出のEarl Blumenauer(アール・ブルーメナウアー)議員は、Electric Bicycle Incentive Kickstart for the Environment(環境のための電動アシスト自転車奨励金導入)法案を提出した。これは新しい電動アシスト自転車を購入する際に、30%の還付可能な税額控除を行うというものだ。この法案はまだ議会を通過していないが、もし可決されれば、これをきっかけに購入を検討する人は増えるだろう。それにともなう販売増加の促進に一役買いたいと、Ridepandaは望んでいる。

マラヴィヤ氏によると、Ridepandaはサンマテオ郡の電力会社であるPeninsula Clean Energy(ペニンシュラ・クリーン・エナジー)と提携し、地域の電動アシスト自転車奨励金を展開することで、低所得者層が購入時に利用できるようにしているという。

「私たちは、技術的なパートナーとして、また消費者にとっては、これらの奨励金をや補助金をシームレスに統合することで、その利点を簡単に利用できる精選されたプラットフォームとして、当社がどのような役割を果たすことができるかを、非常に楽しみにしています」と、マラヴィヤ氏は語っている。

マラヴィヤ氏によれば、2020年のシード資金調達の延長となる今回の375万ドルのラウンドは、Porsche Ventures(ポルシェ・ベンチャーズ)、Yamaha Motor Ventures(ヤマハ・モーター・ベンチャーズ)、Poeza Ventures(ポエザ・ベンチャーズ)が主導し、Lime(ライム)の共同創業者であるエンジェル投資家のToby Sun(トビー・サン)氏と、シリコンバレーのVCであるGeneral Catalyst(ジェネラル・カタリスト)が参加したという。

「これらのパートナーシップから私たちが得られるものはたくさんあります」と、マラヴィヤ氏は語る。「ヤマハからは、ディーラーシップやサプライチェーンの管理から、実際に自転車やスクーターを提供するまで、どのようにやっているかを学ぶことができるでしょう。ポルシェも同じです。ポルシェはハイエンドの電動アシスト自転車も発売しましたが、ディーラーシップや製品へのアクセス、さらにはブランディングの面でも協力できることを楽しみにしています。Proezaからは、サプライチェーンに関する専門知識を得られることを非常に期待しています。また、これらの企業について重要なこととして、ポルシェの本社はドイツにあり、ヤマハは日本、Proezaはラテンアメリカにあることも挙げられます。私たちが米国以外の地域に進出する際には、大きな助けとなるでしょう」。

関連記事:二輪ライドシェアの元社員が電動二輪車のマーケットプレイス「Ridepanda」を米国に開設

カテゴリー:モビリティ
タグ:Ridepanda資金調達電動キックスクーター電動自転車eコマース

画像クレジット:Ridepanda

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。