マイクロモビリティのBolt Mobilityが同業Last Mileの資産を引き継ぎ48の新市場に展開

金メダリストのUsain Bolt(ウサイン・ボルト)氏が共同創設した、マイアミを拠点とするマイクロモビリティのスタートアップBolt Mobility(ボルト・モビリティ)は、Last Mile Holdings(ラスト・マイル・ホールディングス)の資産を獲得し、48の新しい市場に規模を拡張する。

Bolt Mobilityの台頭とLast Mileの終焉は、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによって、すでに部分的に足下がぐらついていたビジネスモデルがひっくり返されたマイクロモビリティ企業に、1年間取り憑いていた不確実性のなせるわざだ。

Bolt MobilityもLast Mileも、どちらも新型コロナウイルスのパンデミックに打撃を受けていた。たとえばBolt Mobilityは、その影響で2020年にいくつかの市場から撤退している。同社はその後、ビジネスモデルを変更し、地元の事業者と手を組むことにした。元GMのグローバルデザイン部門副社長のEd Welburn(エド・ウェルバーン)氏を顧問として迎え入れ、二重ブレーキ、10インチタイヤ、LEDライト、走行距離40kmの交換式バッテリー、NanoSeptic(ナノセプティック)で抗菌処理を施した、手で触れることが多い部分に細菌やバクテリアをつきにくくするデザインのハンドルとブレーキレバーを装備した新型スクーターを導入した。

Last Mile Holdingsも災難だった。

Last Mile Holdingsという名前に聞き覚えがない人も、同社が所有していたブランドなら知っているかも知れない。Last Mileは、OjO Electric(オジョ・エレクトリック)スクーターと電動トライク、スクーター、バイクによるライドシェアのGotcha Mobilityを所有していた。Last MileはGotchaを1200万ドル(約12億4500万円)の現金と2020年3月に成立した株式交換で買収している。

2020年、Bolt Mobilityが躍進し顧客ベースが30万人に達する一方で、Last Mileは逆風に晒された。そしてトロント証券取引所にMILEというティッカーシンボルで上場されていたLast Mileは、米国での資産をオークションで売却する結果となった。Bolt Mobilityは実質的にそのすべてを、300万ドル(約31億円)のクレジッド・ビッドで入手したことが、2020年のSECファイリングに記されている。

資産には電動スクーター、電動自転車、ペダル式自転車、着座式スクーターなど8500台の新しい機材と、48の新市場で事業展開できる許可証が含まれていた。BoltのCEOであるIgnacio Tzoumas(イグナシオ・ツォマス)氏によると、新市場のうちの大半(30以上)が独占契約だという。48の新市場には18の大学のキャンパスも入っている。

「この資産買収によって、Boltは全方面に大きく拡張できるようになります」とツォマス氏はいう。さらに同社は、Gotchaの最高執行責任者Matt Tolan(マット・トーラン)氏を迎え入れたと話していた。同氏はBoltの最高商務責任者の役職に就くことになる。また、Gotchaの技術と運用の各部門で働いていたメンバー20人も雇い入れた。

Boltの新市場では、利用者はこれまでどおり、GothcaとOjO ElectricのiOSとAndroidのアプリを使って電動スクーター、電動自転車、ペダル式の自転車に乗ることができる。Boltは行政や大学と共同して、それらの市場をBoltのプラットフォームに移行する作業を進めている。この資産買収で、Boltのプラットフォームに初めて電動自転車が加わった。だが同社は、すでに独自の電動自転車の開発も行っている。2021年末に登場する予定だ。

写真クレジット:Bolt Mobility

Boltは、同社が2020年を生き抜いたばかりか発展できたのは、新しいビジネスモデルのおかげだと考えている。車両の管理と運営という複雑で多岐にわたる仕事を続ける代わりに、Boltは地元企業と提携する道を選んだ。これらのパートナーが、それぞれの市場の現場でBoltの車両を運用してくれる。このアプローチはカスタマイズができるため、市場によっては配送業者、レストラン、その他のスモールビジネスにスクーターを貸し出すという事業提携モデルも可能になったと、同社は話している。

7月までには、Boltとそのパートナー企業は、5つの新しい市場と、再開した市場での事業を展開できた。またBoltには、さらに20の市場での買収準備を整えたパートナーとの契約手続きが残っていると同社は話す。

ツォマス氏によれば、Boltはもうこれ以上借金をせずに取引を完了できるという。しかも「私たちが事業を行っているすべての市場のサービスの拡大と向上に、私たちの資産を今後も投入できるという条件付き」だ。この資産買収には、以前からのBoltの投資者であるFuel Venture Capitalからの資金も役立っている。また、Sofreh CapitalとThe Yucaipa Companiesの支援も受けている。

「私たちは、マイクロモビリティがコミュニティの中での人々の生活や移動の方法を変革するものと信じてBoltを創設しました」と、ウサイン・ボルト氏は声明の中で述べている。「今回の拡張は、才能ある人々、革新的なテクノロジー、Boltチームの賞賛すべき道労働倫理の力を支えにすれば、マイクロモビリティに不可能はないことを証明しています」

カテゴリー:モビリティ
タグ:Bolt Mobility電動キックボードマイクロモビリティ

画像クレジット:Bolt Mobility

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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