コレクターズアイテム投資が熱い。Michael Jordan(マイケル・ジョーダン)がルーキーシーズンに着用した「NIKE AIR JORDAN 1(ナイキエアジョーダン1ハイ)」が競売大手サザビーズのオークションで15万2500ドル(約1670万円)で落札され、Kanye West(カニエ・ウエスト)着用の「NIKE AIR YEEZY 1(ナイキエアイージー1)」が180万ドル(約1億9400万円)で落札された。
ドイツでコレクターズアイテムを使ったNFT投資のためのプラットフォームを提供するスタートアップ Timeless InvestmentのCEOであるJan Karnath(ヤン・カルナート)氏は、「今後3年でコレクターズアイテムはミレニアル世代にとって、株、暗号資産に次ぐ妥当な資産になるでしょう」と予測する。それはなぜか。同氏が詳しく説明する。
ミレニアル世代はコレクターズアイテムに夢中
カルナート氏は「ミレニアル世代の42%がコレクター品と何らかの関係を持っており、23.2%がNFTを何らかの形で使用している」と指摘する。23%というのはZ世代の3倍、ベビーブーム世代の10倍に当たるという。冒頭で挙げたスニーカーブームも、こうしたミレニアル世代のトレンドを反映しているという。
スニーカーだけではない。ミレニアル世代が親しんだポケモンカードも注目されている。初版の未開封デッキが高値で落札された例もある。
カルナート氏は、世界でたった1つのコレクターズアイテムの投資額を分割して、より多くの人が投資できるようにすることで市場を活性化することを目指している。これにはNFTの技術が不可欠だ。
「NFTはミレニアル世代によって動かされる次の山です。これによって根本からの変化が起きるでしょう」とカルナート氏は語る。
同氏によると、2021年の第1四半期におけるNFTのセールスボリュームは、その前の四半期よりも20倍に成長しているという。
カルナート氏は「これは何を意味するのか?コレクターズアイテム市場の急激な成長が起きているということです」と述べる。
NFTならお金がないミレニアル世代でも投資しやすい?
カルナート氏は「こうした成長の影響を最も受けるのは、歴史あるブランドとIPホルダーです」と断言する。「アイコン的製品の可能性を解放することで、コレクターズアイテム市場が良い方に変わっていくでしょう」。
しかし、こうした流行にも問題がある、というのが同氏の見解だ。ミレニアル世代がコレクターズアイテムに注目しているといっても、その多くは成長するコレクターズアイテム市場に参加することができていない。なぜなら、この世代はコレクターズアイテムへのアクセスと、コレクターズアイテム市場に参加するための資本が乏しく、また、この世代は市場の理解と資産の流動性を十分保持していないからだ。
「当社はミレニアル世代向けのコレクターズアイテム投資をもっとやりやすくしたいのです。そしてこの成長は今後数世代は続くものだと思います。当社はコレクターズアイテム投資をより便利に、アクセシブルに、インデペンデントにしたいのです」とカルナート氏。
そのため、同社では投資案件を集め、保証している。また、投資案件を小さく「シェア」という形で分割することで、1回の投資を手頃な値段にし、1口50ユーロ(約6660円)で投資することも可能だという。さらに、同社のプラットフォーム上でコレクターズアイテムの取引も可能にし、ユーザーが売りたいときに売りに出せるようにしているという。
カルナート氏「当社のプラットフォームを使ってもらえれば、資産を再度売りに出すまでに2年、4年、と待っていただく必要もないです」という。
カルナート氏がイメージするコレクターズアイテム投資は、アクセサリーや服などのファッションをプラットフォーム上で売買するものに近い。ユーザーがコレクターズアイテムをプラットフォーム上で探し、投資し、必要に応じて他のユーザーと取引するからだ。
21分で決まったロレックス投資
Timelessが100日間コレクターズアイテム投資のプラットフォームを運用してみたところ、さまざまなことが見えてきたという。「まず、どのコレクターズアイテムも1時間以内に買い手がつきました。取引のスピードが早いため、決済などの処理が追いつかない場面もありました」。
この100日間でプラットフォームを使用した投資家は1125人。そのうち複数回取引した投資家は24%だった。
カルナート氏は、取引が行われたコレクターズアイテムから、3つの例を紹介した。
例えば、写真の一番左のスニーカー。シェア売り切れまでにかかった時間は16分。これに関わる通知設定を行なったユーザー(つまり、投資に興味を持ったユーザー)は2900人。発売されたシェアは360だった。
写真中央はロレックスの腕時計だ。こちらはシェア売り切れまでにかかった時間は21分。通知設定を行なったユーザーは2500人。発売されたシェアは1900だった。
「このロレックスはシェアを持ちたいユーザーが非常に多かったので、2〜3倍の値段でも売れたかもしれないですね」とカルナート氏。
一番右はナイキのスニーカーだ。このシェアは140売り出され、5分間で売り切れてしまった。通知設定を行なったユーザーは1825人だった。「当社では毎週木曜にコレクターズアイテムを出品するのですが、それを見るために通知設定していたユーザーが一定数いたことがわかります」。
ミレニアル世代を惹きつけるためにすべきこと
カルナート氏は「ミレニアル世代を惹きつけるためにすべきことは3つあります」と語る。
1つめはコレクターズアイテムも分割することだ。これをすることで、暗号資産ファンだけでなく、より広い層がコレクターズアイテムに投資しやすくなる。
2つめは、既存のアイコン的なコレクターズアイテムを再度世に出していくことだ。世の中には多くのおもしろいコレクターズアイテムがある。それをデジタルな方法で紹介することが重要だという。
3つめは、新しいアイコン的なコレクターズアイテムを創造していくことだ。歴史あるブランドと若い投資家やミレニアル世代を繋ぐには、新しいコレクターズアイテムが肝要だ。
「コレクターズアイテムブームはブランドのチャンスです。この投資の流行をうまく活用できれば、低コストで新しい購買層とつながり、高い収益を狙うことができます。私たちは今、高級ブランドのNFT版を創ろうとしています。当社はブランドとユーザーをつなげ、歴史あるブランドをNFTの世界に呼び込もうとしています」とカルナート氏は語る。
【Japan編集部注】本記事はCrypt Asetts Conference 2021中のセッションを再構成したものとなる。
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