モバイルウォレットでの支払いを「クレジットカードと同じくらい簡単に」、Citconが34億円調達

モバイルウォレットによる決済を提供するCitcon(シトコン)は、Norwest Venture PartnersとCota Capitalが共同でリードしたシリーズCラウンドで、3000万ドル(約34億円)の調達を完了した。

この資金調達には、Sierra VenturesとSonae IMも参加した。サンノゼを拠点とするCitconの、2015年の創業以来の調達額は約5000万ドル(約57億円)となった。

Citconのミッションは単純明快で、創業者でCEOのChuck Huang(チャック・フアン)氏によると、事業者が「現在の伝統的なクレジットカードによる支払処理と同じような簡単さ」で、モバイルウォレットや代替通貨による支払いを受けられるようにすることだ。

Citconの創業前、フアン氏はVisa(ビザ)のリードシステムアーキテクトとして4年間勤務し、モバイルペイメントゲートウェイやカードに基づく特典交換プラットフォームなど、複数の製品のシステムアーキテクチャーの設計・開発を担当していた。

Citconは、消費者と事業者の双方にとって「より使いやすく、より安全で、より安心な」非接触型のショッピングおよび支払い体験を、モバイルペイメントが提供するという前提のもとに立ち上げた。それは、新型コロナウイルスの大流行により非接触型決済が急増する前のことだった。

明らかに、Citconは正しいことをしていると言える。2021年が終わろうとしている今、同社の年換算決済額は約10億ドル(約1140億円)で、前年比300%以上の伸びを示している。フアン氏によると、収益も同じ割合で増加している。

Citconの決済技術は、東芝、Oracle、Cegid、Shopify、SAPなどのPOSシステムや電子商取引システムと統合されており、複数の企業が導入している。また、L’Oréal、Tumi、Texas Instruments、Macy’s、Panda Expressなど、3万社以上の事業者のサイトや拠点に導入されている。

Citconは、Apple PayやGoogle Payにはないものを提供しているとフアン氏はいう。

「当社はソフトウェアベースなので、Apple PayやGoogle Payとは異なり、ウォレットに連携させる銀行カードやクレジットカードは必要ありません」と同氏は説明する。「我々は、モバイルと代替決済手段(APM)の両方に対応する統一されたAPIを持っています」。

従来の決済インフラは、モバイルウォレットを受け入れるように設計されていなかったため、事業者は多くの実装に対応しなければならなかった、とフアン氏は話す。Citconは事業者のために単一のAPIへ統合するため、事業者は世界100種類以上のモバイルウォレットを受け入れることができる。

フアン氏によると、ソフトウェアベースのウォレットによる決済のトレンドは、ここ2〜3年の間に世界中で加速した。Citconはその流れに乗ろうとしている。

「中国はほとんど現金を使わない社会で、人々はこの種のウォレットを多用しています。世界中でも勢いを増しています」とフアン氏はTechCrunchに語った。例えば、米国ではPayPal(ペイパル)の子会社であるVenmo(ベンモ)と提携し、ユーザーにCitconのソフトウェアウォレットを提供している。また、Klarna(クラーナ)と提携し「今買って、後で払う」ウォレットを用意した。

Citconは今後、新たな資本を活用し、現在100人の従業員を増やし、グローバルに事業を拡大していく予定だ。同社は、すでに米国、カナダ、ヨーロッパ、アジアに拠点がある。「急速な」海外展開を目指しており、特にラテンアメリカとアジア太平洋市場に注目している。

Norwest Venture PartnersのパートナーであるPriti Youssef Choksi(プリティ・ユセフ・チョクシ)氏は、Citconのリーダーシップチームに最初にひかれたと話す。同氏は、フアン氏と社長兼COOのWei Jang(ウェイ・ジャン)氏を、決済の世界における「思想的リーダー」と評した。2人はともに中国出身で、米国内でモバイルウォレットがどのように発展していくかについて、国際的な視点をもたらすことができると指摘する。

「これは重要なことです。なぜなら、米国と海外の両方で、モバイルペイメントを中心にいくつかの重要なテーマが収束しつつあるからです」と同氏はメールに書いた。1つには、モバイルウォレットがクレジットカードを抜いて世界で最も広く使われる決済手段となっていることがある。モバイルウォレットの利用者数は、2020年の28億人から2025年には48億人になると見込まれている。

「米国では、新しいウォレット(暗号資産、今買って後で支払うプラットフォーム、ネオバンクウォレットなど)が若い消費者の間で人気を集めていることや、パンデミックの影響で消費者や事業者が非接触型の決済に向かっていることから、急速にシェアを拡大しています」とチョクシ氏は付け加えた。

また、同氏は、ウォレットや事業を展開する国を巡るコンプライアンス上の課題を解決してきた同社の能力にも感心している。

「これは、米国および世界中で、決済フローが規制当局の監視下にあることを考えると、特に重要なことです」と同氏は語る。

Cota CapitalのパートナーであるBen Malka(ベン・マルカ)氏は、Citconが世界と米国の両方で代案入札型の利用動向を注視していると話す。

「まだ初期段階にあると考えていますが、さまざまな種類の決済を可能にする非常に大きな市場機会があると思います。我々は、チャックと彼のチームに感銘を受けました。彼らは決済業界での深い経験と、グローバルな決済企業を構築するための適切な洞察力を持っています」。

画像クレジット:Citcon founder and CEO Chuck Huang

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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