オンラインで不特定多数の人に業務を発注できるクラウドソーシング。その多くはデザインやプログラミング、ライティングなどオンラインに閉じた業務がほとんどだ。
その取り組みをオフラインの業務まで拡大するのが、4月7日よりランサーズとKDDIが取り組む「ランサーズプレイス」だ。
このランサーズプレイスでは、工事や引っ越し、印刷など、リアル領域の業務をクラウドソーシングで展開する。すでに、KDDIの法人向けプログラム「KDDIまとめてオフィス」を展開する営業部隊が、顧客企業向けにランサー(受注者)としての登録を案内。ランサーズにてその申し込みをアクティブ化しているという。また同時に、発注者としてのニーズをヒアリングしている。今後は個人、法人を問わずに受注者の登録を拡大していく。当面はベータ版として運用し、10月にも本サービスを開始する。2014年度10万件の案件掲載を目指す。
「クラウドソーシングの本質的な価値はネットで完結すること。つまりITありきだった。そのため非ITの領域にはリーチできなかったが、そこにリーチできるようになるのが強み」——ランサーズ代表取締役の秋好陽介氏は今回の取り組みについてこのように語る。
KDDIの法人営業としては、顧客企業からの細かなニーズのすべてをサービスとして自社で提供することが難しい。そんな課題に対して顧客同士をクラウドソーシングでマッチングすることで解決したいというニーズもあったそうだ。
また同時にランサーズでも「たとえばこれまでランサーズでデザインを作っても、それをプリントする印刷会社までをつなげることができなかった」(秋好氏)というように、ITと非ITをつなぐソリューションがないままで、この溝を埋めたいという思いがあったという。
「リアル」ゆえの課題も
ただ一方で課題もある。KDDIまとめてオフィスの顧客企業には、ITリテラシーのあまり高くない中小企業も少なくない。秋好氏からは、KDDIの営業部隊に対して「クラウドソーシングとは何か」というところを理解してもらうまでにも時間がかかったという話も聞いた。そういう環境で、果たしてクラウドソーシングをどこまで利用してもらえるのだろうか。実際、KDDIの営業部隊が顧客からもらった紙の申し込み資料をランサーズがアクティベーションする時点でも説明が必要なケースが多々あるという話も聞いた。
しかしランサーズビジネス開発部の小口展永氏によると、クローズドベータ版の段階で、都市部については比較的ユーザーが集まっており、地方でも徐々に成功事例が出てきているという。「中小企業ではアウトソーシングができないと思っていた人が多い」(小口氏)とのことなので、潜在的なニーズをいかに顕在化できるかという点こそが成長の課題になってきそうだ。