リモートでカットの指示が出せる撮影プラットフォームのSoona、シリーズBで約40.1億円調達

eコマースの劇的な成長と並んで、一部ではパンデミックが追い風となり、販売業者がオンラインビジネスに参入することを容易にするサービスの需要も増加した。Soona(スーナ)というスタートアップは、シリーズBで追加調達した3500万ドル(約40億1000万円)の資金をバックに、このマーケットに参入している。Soonaのプラットフォームでは、写真や動画の「仮想」撮影によって、ブランドのeコマース用ウェブサイトやマーケティングのコンテンツを作成できる。つまり、Soonaのテクノロジーを使えば、販売業者は別の場所で写真撮影を行うためにアイテムを送付してその結果を待つ代わりに、リモートかつリアルタイムでブランドの写真撮影プロセスに参加することができるのだ。

「私たちはブラウザで写真撮影に招待します。Zoom(ズーム)の会議に参加するのとそれほど変わりません」と、Soonaの共同創業者兼CEOであるLiz Giorgi(リズ・ジオルジ)氏は説明する。「カレンダーの招待をクリックすると、写真撮影の様子がブラウザに表示され、リアルタイムでキャプチャされる写真やビデオクリップをすべて確認できます。それらのアセットは操作できるので、お客様やチームはアセットのフィードバックをカメラマンに提供することができます」。

画像クレジット:Soona

Soonaの顧客は、構図の変更や、シーンの小道具の追加・削除、写真撮影のその他調整など、要望に応じてカメラマンとやり取りができる。その上、販売業者にとってサービスの前払いをしなくていいのはありがたい。写真1枚につき39ドル(約4470円)、ビデオクリップ1つにつき93ドル(約1万700円)を支払って、実際に必要なアセットだけ購入すればいいのだ。選び終えると、写真や動画は24時間以内に納品され、ウェブサイトやマーケティングチャネルにアップロードする準備ができる。また、いつでも過去の撮影記録にアクセスして追加のオーダーをすることもできる。

ビジネスの成功によって今回新たな資金の調達にこぎつけたSoonaは米国時間1月24日、Bain Capital Ventures(ベインキャピタルベンチャーズ)の取りまとめによって3500万ドル(約40億1000万円)の資金を新たに調達したとアナウンスしている。前の投資者であるUnion Square Ventures(ユニオンスクウェアベンチャーズ)、Matchstick Ventures(マチスティックベンチャーズ)、Starting Line Ventures(スターティングラインベンチャーズ)、2048 Ventures(2048ベンチャーズ)、Range Ventures(レンジベンチャーズ)もラウンドに参加し、Soonaの合計調達額はこれまでに5100万ドル(約58億5000万円)に達した。

ジオルジ氏のバックグラウンドは専門的なメディア制作だ。Soonaを始める前は、インターネットビデオ制作のMighteor(マイテアー)という自分の会社を経営し、その前はメディアおよびテレビの制作会社で働いていた。そうした経験を通して、コンテンツの作り方、特に美しいコンテンツの作り方を見定める目が養われた、と氏は述べている。一方、氏の共同創業者、Hayley Anderson(ヘイリー・アンダーソン)氏のバックグラウンドはアニメーションにあり、マイテアーのクリエイティブディレクターだった。マイテアーは後に、クリエイターネットワークのStandard(スタンダード)に買収された

ヘイリー・アンダーソン氏とリズ・ジョルジ氏(画像クレジット:Soona)

2人は2019年にSoonaを設立し、その年に最初の商品を発売した。最初の頃、Soonaの業務では、顧客に写真や動画の撮影のために実際のスタジオに来てもらい、ソフトウェアを使用して映像をすぐにアップロードして、顧客がすぐに購入できるようにしていた。しかしパンデミックのために、Soonaは再調整して仮想モデルに切り替えることを余儀なくされた。結果的には、このモデルを採用したことがビジネスの成長に役立った。パンデミックの最中に直接接触をともなう活動ができなかったときだけでなく、リモートワークが普通のビジネス環境になってからもそうだ。Soonaの収益は、2020年から2021年にかけて400%増加し、2021年から2022年にかけてさらに300%増加した。Soonaは年間収益の数字を公開しないが、ビジネス上の評価基準は非公開ながらも競争上の優位性に言及している。(参考までに)。

Soonaは現在、約1万の販売業者にサービスを提供しており、Wild Earth(ワイルドアース)、Lola Tampons(ロラタンポン)、The Sill(ザシル)、SNOW(スノー)、Birchbox(バーチボックス)などの顧客がいるが、サブスクリプションモデルではなく、取引ベースのビジネスをしている。ジオルジ氏は、これが商品市場に適していることが明らかになったと考えている。2021年は月ベースで、収益の63%はリピート客から得た。顧客の約60%は100万ドル(約1億1500万円)から500万ドル(約5億7300万円)のeコマースストアであり、その多くはShopify(ショッピファイ)を利用している。ショッピファイは化粧品、美容、健康、ファッション、履き物に強く、現在は消費者向けパッケージ商品や栄養商品の分野の成長が大きい。

「私たちのビジネスモデルは繰り返し型ではないかもしれませんが、ブランドでこうしたアセットが必要とされる頻度は高いレベルにあります。それで、こうした視覚的なアセットにいつどのようにお金を使い、投資するか、選択できるようにすることで、本当に簡単にSoonaを使い続けることができるようにしました」と、ジオルジ氏は述べている。「しかし、サブスクリプションを検討の対象から外しているわけではありません」。

現在、リモートでの写真撮影のために販売業者が商品を送付できるようにしている企業は、Pow Photography(パウフォトグラフィ)など他にもあるが、Soonaのようにリアルタイムではない。従来のeコマースサイト向けに「白地に商品」の写真、つまり白い背景の商品画像に主に重点を置いているライバルもいる。これは、たとえばリビングルームやキッチンセットの写真ショットで商品とモデルを組み合わせて作るリッチコンテンツなどとは逆である。一方、どちらかといえば市場方式で業者とカメラマンを直接結びつけようとする競合他社もある。

画像クレジット:Soona

しかし、Soonaの独自テクノロジーでは、オンラインでの写真撮影を計画するために必要なものをすべて顧客に提供する。人とペット両方のモデルやスタイリストを使用することもできる。モデルは、他のギグエコノミーの仕事と同様、契約ベースで働く。しかし、Soonaのカメラマンは、ギグワークとして仕事を請け負うか、フルタイムの従業員に移行することができる。現在、カメラマンは、フルタイムのスタッフとして約35人、請け負いで100人ほどいる。

Soonaは追加の資金を得て、モデルのサービスの市場を拡大することを目指している。この市場は現在、Soonaのビジネスで最も成長の速いセグメントの1つであり、実際、2021年のビジネス全体の20%を占めた。Soonaは、2022年にこのプラットフォームの規模を3倍にして、さまざまな人材のタイプを増やし、販売業者の顧客のために商品の見栄えをよくする新しい方法を取り入れることを計画している。また、精選したビジネスデータと販売業者の目標について尋ねることで、ブランドのためにどんなタイプの写真撮影をすればよいかに関する提案を増やすのに役立つテクノロジーにも投資する。Soonaはすでに、Amazon(アマゾン)およびInstagram(インスタグラム)推奨の撮影を始めており、類似のことをTikTok(ティックトック)で始める計画を立てている。

また、この会社は、APIプラットフォームを拡張して、ショッピファイ以外にも統合を拡大することも計画している。ショッピファイは現在、顧客ベースで55%を占めている。計画を進めるにあたり、Soonaは、たとえばKlayvio(クラビヨ)やBigCommerce(ビッグコマース)など、他のeコマーステクノロジー企業との統合に狙いを定めている。

この会社は、デンバー、オースティン、ツインシティーズに拠点を持っており、ミネアポリスの現在のチーム以外のエンジニアを増やすことで、エンジニアリングチームも3倍にする。商品チームも拡大する。

ジオルジ氏はSoonaの現在の評価額について話すことを避けたが、Soonaは女性が創業した次のユニコーンになる「道を歩んでいる」と考えている。「私たちは間もなくそこに到達します」と氏は断言した。

画像クレジット:Soona

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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