ロシアYandexの自動運転部門がGrubHubと提携、米国の大学キャンパスにロボット配達を展開

ロシアの大手ハイテク企業であるYandex(ヤンデックス)の自動運転部門としてスピンオフしたYandex Self-Driving Group(ヤンデックス・セルフドライビング・グループ)は、フードデリバリーサービスのGrubHub(グラブハブ)と提携し、米国の大学キャンパスで複数年にわたりロボットによる配達を行うと発表した。Yandex Self-DrivingのDmitry Polishchuk(ドミトリー・ポリシュチュク)CEOからの発表によると、同社はこのパートナーシップの期間中に250以上のキャンパスにサービスを提供したいと考えており、まずは今秋に数十台のロボットを導入することから始めるという。

Yandexの自動運転部門は、2020年9月にUber(ウーバー)との合弁会社からスピンオフした。2021年5月には、自動運転で合計700万マイル(約1100万キロメートル)の走行距離を記録し、当時のWaymo(ウェイモ)を上回ったと発表している。Yandexは2017年よりフルサイズの自律走行車を開発しており、イスラエルのテルアビブやミシガン州のアナーバー、ロシアのイノポリスで、ロボットタクシーを使ったテストを行っている。2020年4月には、ロシアのスコルコボで、同社の自律走行車と同じ自動運転技術スタックを搭載した重量約68キログラムの6輪自動走行ロボット「Yandex.Rover(ヤンデックス・ローバー)」による商業配達を初めて開始した。

関連記事:ロシアYandexがUberとのJVから自動運転事業をスピンアウト、159億円を新会社に投資

「技術は確かに非常に複雑ですが、小さな町や大都市の特定の地区では、配送ロボットやロボットタクシーの形で導入を開始できるレベルに達しています」と、同社の広報担当者はTechCrunchに語り、次のように続けた。「3~4年後には、モスクワやニューヨークのような都市の中心部における渋滞時間帯に、経験豊富な人間のドライバーと同じように、安全かつ効率的に運転できるレベルに到達すると、私たちは確信しています」。

Yandexの商業化へのアプローチは独特だ。自動車用の自律走行技術を開発している多くの企業の中でも、Yandexはまずロボットで市場に出ようとしており「それは非常に効率的な方法のように思えます」と、広報担当者は語っている。「2018年6月に始まった配達用ロボットを作るというアイデアから、このようなきちんとした商業契約を結ぶまでに2年を要しました」。

Yandex.Roverは、ロシアではすでにフード配達プラットフォーム「Yandex.Eats(ヤンデックス・イーツ)」と食料品速達プラットフォーム「Yandex.Lavka(ヤンデックス・ラフカ)」で商用テストを行っている。同社の発表によると、Yandex.Roverは、時速5〜8キロメートルで移動し、歩道、歩行者エリア、横断歩道を自律的に運行できる。自動車が通行不可のキャンパスエリアには適したアイディアだ。このサービスはすでにGrubHubのアプリに完全に統合されている。ユーザーエクスペリエンスの面では、ローバーが目的地に到着すると、顧客はプッシュ通知を受け取り、外に出てアプリでロボットのハッチを開けることができる。

Yandexによると、同社の配送ロボットは、昼夜を問わず、雨天時や雪天時にも、信号機付きあるいは信号機のない横断歩道でも、運行させることができるという。ローバーはほとんどの場合、自律的に運行可能だが、同社の広報担当者によると、酔っぱらった大学生に乗られるなど、困難な状況に陥った場合には、遠隔支援のリクエストを送信することがあるとのことだ。

同社では、まだGrubhubとの提携を反映したロボットのブランド化は行っていないとTechCrunchに語っているが、今秋に数十台の車両を送り出すという目標が、無理なく達成できることを期待していると述べている。

「Yandexと協力して、大学生のフードデリバリー体験を変えていきます」と、Grubhubの法人・大学パートナー担当バイスプレジデントであるBrian Madigan(ブライアン・マディガン)氏は語っている。「私たちは、学生たちのユニークな食事のニーズに対応しようとしている全国の大学に、費用対効果が高く、拡張性があり、迅速なフードの注文 / 配達機能を提供できることをうれしく思います。大学のキャンパスは、特にフードデリバリーにおいて、自動車の乗り入れが難しいことで知られていますが、Yandexのロボットは、自動車が通行できないキャンパスの一部にも簡単にアクセスすることができます。これは大学が新しいテクノロジーを導入する際に直面する大きなハードルを効果的に取り除くことになります」。

問題は、新型コロナウイルス収束後の秋の新学期が始まる頃、酔っ払った男子学生がロボットを破壊したり盗んだりしようとする危険を掻い潜って、それらのロボットのうち何台がYandexに戻って来られるかということだ。

Yandexは、ロボットタクシーサービスの開発も継続して事業の商用化を進め、同社の自動運転技術をさまざまな場面で活用していきたいと述べている。

関連記事
自動配送NuroがFedExと提携、配送ロボをライスマイルデリバリーに大規模導入
スクーターの利便性を持つ無人配達用3輪EV展開を目指すFactionが約4.7億円調達
Alphabet傘下で2021年初めに解散したLoon元トップがロボット配達Starship TechnologiesのCEOに
北京市が自律走行車両の公道試験の許可をJD.com、Meituan、Neolixに

カテゴリー:ロボティクス
タグ:YandexGrubHub自動運転ロボット配達フードデリバリー

画像クレジット:Yandex Self-Driving Group

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。