息をつく暇もないとはこのことだ。
スキャンダルの渦中にある中国のコーヒーチェーンLuckin Coffee(瑞幸咖啡)が、上場している米国の証券取引所から退場を求められていたことがわかった。米国時間6月23日付で米国証券取引委員会に提出された報告書に書かれている。
Luckin Coffeeの報告によれば、同社はNASDAQから次のような書面の送付を受けていた。
「この通知は【略】Luckin Coffeeが2019年12月31日を終期とする期間についての20-F様式による報告を提出しなかったことを示す追加書面である【略】同社がNASDAQへの上場を廃止すべきことを示す追加証拠であり【略】同社が5月中旬に公開した本委員会が送付した2通の通知に追加される(証拠である)」。
NASDAQは「送付した通知はいずれもLickin Coffeeが開示した情報が上場を維持するために不十分なものであることを示すものだ」と付け加えている。
Luckinの目覚ましい躍進とあっという間の墜落は、太陽に近づき過ぎて死んだイカロスの神話を思わせるほど劇的だった。中国を拠点とする同社は2019年4月に株式公開の意図を明らかにし(未訳記事)、大型上場で6億5100万ドル(約700億円)を得た(未訳記事)。当初はウォールストリートの証券会社も同社の米国市場参入を歓迎していた(未訳記事)。
しかし運命は逆転を始める。上場申請の約1年後、Luckinは収入と支出を数億ドル(数百億円)以上水増ししていた可能性があることを公表した。しかし2020年4月には「Luckin Coffeeが320億円の不正会計疑惑で内部調査を開始」と報じられることとなった。
NASDAQがLuckinに市場から出て行けと言い出したのは驚きではない。
不正会計の公表で株価が80%近く暴落した後、一部のユーザーがLuckinに殺到した(未訳記事)。これは経営の行き詰まりで、貯めていた割引ポイントやクーポンの価値がなくなることを恐れたためだ。ところが同社は、SECに対する経営報告の提出にあたってちょうどいいスケープゴートを発見した。新型コロナウイルス(COVID-19)だ。
社内トラブルの言い訳に世界的パンデミックを使った興味深い例として LuckinのSEC報告書は「新型コロナウイルスの流行により、財務諸表の準備が遅延し、以前に開示した内部調査も停止されたため当社は年次報告書を提出できなかった」と主張した。
ドラマはなお進行中だ。中国の有力なビジネスメディアのCaixin(財新)は、Luckinの会長であるLu Zhengyao(陸正耀)氏は同社の会計の実態に対する調査を妨害しているとして取締役会の一新を図っていると報じた。 陸氏は取締役会に会計を正常化するための特別委員会を設置するよう求めているという。
責任がなかったなら詐欺ではない。しかしドイツのフィンテック企業であるWirecardでは21億ドル(約2240億円)が行方不明となり、TechCrumchも報じたとおり、前CEOが逮捕されたばかりだ。
[原文へ]
(翻訳:滑川海彦@Facebook)