中小企業へ「はやい・やすい・巧いAI」の提供目指すフツパーが数千万円調達

中小企業向けのエッジAIソリューションを手がけるフツパーは5月21日、ANRIから数千万円規模の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社が現在取り組んでいるのは、中小企業の課題を解決するための画像認識AIサービスだ。主なユースケースは食品工場や部品工場における検品業務など、従来は人が目視で行なっていた作業の自動化。工場の現場にAIを組み込んだデバイスを設置し、そのデバイス上で画像認識処理を実行する。

これはエッジAI全般に言える話ではあるけれど、クラウド側ではなくエッジデバイス側で処理を行うことで通信コストを減らせるほか、高速なデータ処理を実現できる。またネットワークを整備するための初期工事なども必要ないため、導入までのスピードも早い。

フツパーでは既存のハードウェアやAIモデルなどを組み合わせ、こうしたエッジAIの恩恵を中小企業が享受できるような仕組みを開発している。たとえばハードウェアはNVIDIA製のもの、AIモデルについてはGoogleやFacebookが手がけるオープンソースのフレームワークを採用。すでに存在する高品質なものを取り入れながら顧客のニーズに合わせてカスタマイズしたモデルを生成し、それを自社の圧縮技術によって手の平サイズのデバイスに搭載して、すぐに使える形で顧客へ届ける。

コンセプトは“はやい・やすい・巧い”AIだ。

「通常、工場の現場などでAIを活用したプロジェクトを始めるとなると数ヶ月かかることも珍しくなかった。自分たちの場合は小型のデバイスを現場にポン付けで導入できるので、すぐにスタートできる。初期投資も少なく手軽に始められるほか、(全てをゼロから自分たちで開発するのではなく)質の高い技術を組み合わせることで安くてもいいものを実現できる」(フツパー代表取締役CEOの大西洋氏)

フツパーは2020年4月1日に広島大学出身の3人が立ち上げた。大西氏は大学卒業後に電子部品メーカーを経て、工場向けのSaaSを展開するAI/IoTベンチャーで営業やPMを経験。取締役兼COOの黒瀬康太氏は日本IBMで多数のAI導入案件に携わった。中小企業向けのAIソリューションをテーマに起業を決めたのは、前職時代に感じた課題感も大きく影響しているという。

「九州の拠点で働いていたので、現地の中小企業の課題を聞く機会が頻繁にあった。(人手不足などもあり)AIを用いた解決策に興味を示す人は多かったものの、大手企業向けのサービスではどうしても金額感がフィットせず、本当に必要としている人たちにサービスが届きづらい状況だった」(黒瀬氏)

特に地方の場合はAIの導入支援をサポートするパートナー企業が少ないため、実際に導入するまでの工程を伴走できるのは大手企業くらいしかいないそう。その結果「ミニマムで数千万円から」といったように料金がエンタープライズ向けの価格帯となってしまい、AIの導入を断念する中小企業も多い。

フツパーでは上述した通り既存のものを組み合わせることでデバイス、モデル作成、実装込みで数百万円前半から導入できる仕組みを構築。判定結果を通知するSaaS型のクラウドサービスも月額数万円から使えるようにした。

「モデルを作る技術などで勝負するというのではなく、導入までの手軽さで勝負をしていきたい。(判定結果を)見れる画面までを用意した上で、デバイスとセットでAIを1日程度で提供でき、なおかつ従来のものと比べて料金的にも安ければ十分にチャンスはあると考えている」(大西氏)

初期は食品系の製造業をメインターゲットとして事業を展開する計画。フツパーが大阪に本拠地を構えていることもあり、まずは関西エリアを中心に事業を広げていく予定で、現在は数社と現場への導入に向けた打ち合わせを進めている状況だ。

直近では新型コロナウイルスの影響も受けて、狭い空間に人員が密集するリスクを出来るだけ避けたいというニーズも工場では生まれているそう。そのような要望への対応策としてもAIソリューションの提供を進めていきたいとのことだった。

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TechCrunch Japan

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