企業のXRデバイス管理を支援するプラットフォーム「ManageXR」

ManageXR(マネージXR)は米国時間12月16日、Rally Ventures(ラリー・ベンチャーズ)が主導するシードラウンドで400万ドル(約4億5000万円)を調達し、ベンチャーパートナーで前回のリードエンジェル投資家であるJay Borenstein(ジェイ・ボーレンスタイン)氏が同社の取締役会に加わったことを発表した。

この資金を使って、ManageXRはチームの拡大とGo-To-Market戦略を推進する予定だ。同社は2019年11月にベータユーザーに提供を開始し、2021年4月に正式にローンチして以来、急速に成長を遂げている。このスタートアップ企業は、世界中でハードウェアおよびソフトウェア企業のパートナーネットワークを拡大する方法を引き続き模索していくと、創業者兼CEOであるLuke Wilson(ルーク・ウィルソン)氏はTechCrunchに語り、2022年は大企業により注力するつもりだと付け加えた。

ManageXRは、組織の中核インフラとして機能するVRおよびARデバイス用に設計された企業向けデバイス管理プラットフォームを構築した。このプラットフォームは、企業のXR展開を拡張し、アプリやファイルの配布、ホーム画面のユーザーエクスペリエンスのカスタマイズ、デバイスの状態や使用状況の追跡など、XRデバイス群のあらゆる側面をリモートで制御できるようにする。

「デバイス管理ソリューションは何年も前から存在していましたが、最近までVRやARデバイスのための有効な選択肢はありませんでした。私たちは、産業の変曲点にいる企業のために、その問題を解決します」とウィルソン氏は述べている。

ManageXRは、XRHealth(XRヘルス)やBrink’s(ブリンクス)など、中小企業や中堅企業が使用する数千台のVR・ARデバイスで、これまでに20万以上のセッションを促進してきた。また、最近では、VR・ARハードウェアメーカーのPico Interactive(ピコ・インタラクティブ)と提携し、米国で販売されるすべてのPico製デバイスにManageXRをプリロードしている。

Accenture(アクセンチュア)が6万台のヘッドセットを導入したことからもわかるように、企業がXRを非常に大規模に、従業員へ提供する傾向が増大しています。これらの企業は、XRを利用して従業員のオンボーディング、トレーニング、スキルアップを図るとともに、メタバースをコミュニケーションやコラボレーション、業務遂行の新しい場として活用する新しいワークフローを導入しています」と、ウィルソン氏は述べている。「これらの企業にとって、デバイス管理は新しい概念ではありません。テクノロジーを拡張性のある安全な方法で使用するために、この種のインフラがいかに重要であるかを理解しているのです」。

ウィルソン氏は2018年、病院内の小児患者向けにVR体験を構築する目的でManageXRを設立した。当時、同社は医療環境でコンテンツを配信するために、基本的なデバイス管理プラットフォームを独自に開発しなければならなかったと、ウィルソン氏は語った。2019年後半、同社は他のあらゆる企業が、ManageXRのように、同じ問題を自力で解決しなければならないことに気づき、2020年初頭にManageXRのみに注力するように社の方向を転換した。同社のチームは、XRを大規模に使用する際の課題を、深く個人的なレベルで理解しており、それが会社の運営方法に大きな違いをもたらしているとウィルソン氏は言う。

画像クレジット:ManageXR dashboard / ManageXR

その競合他社には、携帯電話やノートPC向けに同様のツールを構築している既存のモバイルデバイス管理会社や、一部のデバイスメーカーがある。しかし、XRは発展途上で動きの速い市場であり、これらの企業には対応できない様々な要件があると、ウィルソン氏は続けた。

「これらのハードウェアメーカーは、独自に基本的なデバイス管理システムを作成していますが、機能性や使いやすさの点ではことごとく的を外しています。このようなメーカー純正の管理システムは、ユーザーに1つのメーカーのハードウェアのみを使用することを強要し、市場にある多種多様なハードウェアを顧客が使用することを妨げます」と、ウィルソン氏は述べている。

ウィルソン氏によれば、同社の顧客はデバイスごとに、月額または年額の料金を支払っているという。製品層によって異なるが、ライセンス費用は1デバイスあたり月額7〜10ドル(約795〜1135円)。その中でも、1台あたり月額10ドルのプレミアム製品層が、群を抜いて最も人気が高い。

「最近ではいくつもの大手ハイテク企業がこの分野に投資を行っており、企業はVRやARを従業員のトレーニングから患者の治療、販売促進まであらゆる用途に使用しています。企業における拡張現実は、大規模導入の入り口にあるところです。私たちは、Rally Venturesが仲間に加わってくれることに心を躍らせています」と、ウィルソン氏は述べている。

「XRは、事業の運営や協業のやり方、そして仕事や私生活における世界の体験を根本的に変えるものですが、導入が進むにつれ、企業がプログラムを首尾よく実行するために直面する課題も増えています」と、Rally Venturesのベンチャーパートナーであるジェイ・ボレンスタイン氏は語る。「企業がXRデバイスを大規模に管理することで恩恵を受ける方法を加速させ、最終的に企業規模のXRを普及させるために、ルークと彼の成長を続けるチームを支援できることを非常に嬉しく思います」と、ボレンスタイン氏は締め括った。

画像クレジット:ManageXR

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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