個人が不動産債権に投資できるプラットフォームGroundfloor、事業拡大に向け資金調達

クラウドファンディングは、企業が資金を調達する方法としてますます人気が高まっていて、投資家も注目している。不動産クラウドファンディングのプラットフォームとして初めて規制当局の認可を取得したGroundfloor(グラウンドフロア)は、2015年以来となる機関投資家からの資金調達を発表した。

Groundfloorは、モバイルネットワークの元幹部のBrian Dally(ブライアン・ダリー)氏と、超党派のJOBS(Jumpstart Our Business Startups)法の共同提案者であるNick Bhargava(ニック・バーガヴァ)氏によって2013年に創業された。アトランタを拠点とする同社は、JOBS法の下で新しいクラウドファンディングの規則が施行され、中小企業が商品を登録することなく非適格投資家から最大7500万ドル(約86億円)を資金調達できるようになった直後に、Fintech VenturesがリードしたシリーズAで500万ドル(約5億7000万円)を調達している

Groundfloorのプラットフォームは、15万人超のユーザーに不動産債権への投資を提供しており、最低投資額は10ドル(約1100円)となっている。CEOを務めるダリー氏は、プラットフォームで提供されるほぼすべての商品は非適格投資家に開放されている、と話す。Groundfloorのユーザーがこのプラットフォームを利用する理由はさまざまで、公開市場より安全な代替手段を求める新規投資家から、ブローカーを使うよりアプリを使った投資を好む経験豊富な投資家までユーザーは多岐にわたるという。

ダリー氏によると、機関投資家と同じようにリスク・リターンプロファイルにアクセスする機会を一般的な投資家に提供するためにGroundfloorを始めたとのことだ。同社はそうした投資家に「公募REIT(不動産投資信託)を買ったり、賃貸物件を丸ごと買って運用リスクや集中リスクを負ったりすることなく」不動産にアクセスする代替手段を提供している。

Groundfloor共同創業者のブライアン・ダリー氏とニック・バルガヴァ氏(画像クレジット:Groundfloor)

ダリー氏によると、同社の「秘策」は規制の枠組みの深い理解にある。「最初の製品を発売するのは、新薬の認可を待つような感じでした」と同氏は話し、最初の州で事業を行うために米証券取引委員会(SEC)から認可を得るのに2年という時間と約100万ドル(約1億1000万円)を要したと指摘した。同社は現在、米国50州のうち49州で証券を販売し、35州で不動産プロジェクトに資本を貸し出している。

Groundfloorは、融資を受ける不動産投資家の実績や経験を重視し、6つの要素でリスクを判断して各ローンにグレードを割り当てるアルゴリズムを使ってプラットフォーム上のローンを引き受けている、とダリー氏は説明する。そして、Groundfloorの投資家はこのスコアをもとに、自分のリスク許容度に見合った配分を決定することができると、同氏は続けた。

Groundfloorは、2021年秋に開始した貯蓄・投資アプリのStairsなど、新たな債務投資商品を追加してプラットフォームを拡大し、現在では投資資産2200万ドル(約25億円)を抱える。Stairsでは、ユーザーは基本的に当座預金として保有する現金に対して4%から6%の利息を得ることができる。Groundfloorは、Stairsのユーザーから得た資金をもとに不動産起業家への融資を行っていて、自社で短期間保有した後に投資家に売却しているとダリー氏はいう。Stairsのユーザーには常に流動性があり、好きな時にアプリから資金を引き出せる、とダリー氏は付け加えた。同氏によると、この斬新な仕組みがSECの承認を得るまでに9カ月かかった。

「これらはRegTechの大きな課題です。多くのリーガルエンジニアリングが必要です。そのため、プロセスには多くの時間がかかりますが、それだけの価値があると考えています」とダリーは述べた。

同社は2018年、自社プラットフォームと株式クラウドファンディングプラットフォームSeedInvestを通じて自社ユーザーからの資金調達を開始し、その後4回の公開株式調達で合計3000万ドル(約34億円)を調達した。現在、個人投資家がGroundfloorの約30%を保有しているとダリー氏は話した。

今回発表されたシリーズBは、2021年に売上高が114%増の1200万ドル(約13億円)に達するなど、Groundfloorが大きく成長した後に行われた。投資家は同年、同社のすべての不動産ローンで平均リターン10%を享受した、と同社は話す。

Groundfloorの不動産ローンクラウドファンディングプラットフォーム(画像クレジット:Groundfloor)

今回のラウンドでは、イスラエルの不動産会社Medipowerから株式で580万ドル(約6億円)、クラウドファンディングプラットフォームSeedInvestを通じてGroundfloorを支援する3600人超の個人投資家から720万ドル(約8億3000万円)の出資を受け、累計調達額は1億1800万ドル(約135億円)になった。また、個人86人がGroundfloorのアプリを通じて直接このラウンドに参加し、その投資は5ドル(約82円)の転換社債で構成されている。ダリー氏は、転換社債はGroundfloorの商品の中で唯一、非適格投資家が利用できないものであり、それは部分的には同社が転換社債をほとんど調達していないためだと述べた。

Groundfloorは、今回の資金調達のニュースの中で、ショッピングセンターと小売用不動産を専門とするMedipowerとの戦略的パートナーシップを発表した。Medipowerは2022年、最大1億ドル(約115億円)、2023年にはさらに最大2億2千万ドル(約252億円)をGroundfloor上のローンに投資する計画だ。テルアビブ証券取引所でティッカーシンボル「MDPR」で取引されている同社は、プラットフォーム上の個人投資家と同じ条件でこれらのローンに投資し、他の投資家が押し出されないよう投資額を制限する予定だ。この取引の一環として、Medipowerの創業者で会長のYair Goldfinger(ヤイール・ゴールドフィンガー)氏がGroundfloorの役員会に加わる。

Medipowerの投資額は、2022年末までにGroundfloorの運用資産の25%に達する可能性があるとダリー氏はいう。同氏は、Medipowerのローン投資を非希薄な資金源とみている。というのも、MedipowerがGroundfloorに投資することで組織に認めてもらうことになり、他のソースからの収益を引き寄せると期待しているからだ。

ダリー氏は「その資本の直接的な恩恵を受けるのは、全国で新しい建設プロジェクトを行い、住宅を建設している不動産起業家たちです」と語った。

Groundfloorは、今回のラウンドで得た資金で、現在約70人で構成されているチームに新たに50人を加える予定だ。同氏によると、新規採用のうち約40%はエンジニアで、同社の成長計画、特に製品面を支えることになる。

「16万人の投資家を、今後2〜3年で100万人にする準備をしています」とダリー氏は語った。

画像クレジット:krisanapong detraphiphat / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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