バリュエーションがこのほど20億ドル(約2150億円)に到達した急成長中の作業コラボツールNotion(ノーション)は米国時間5月25日、同社のサービスが中国で使用できなくなっているとTwitter(ツイッター)で明らかにした。
ノートやwiki、タスク、チームコラボを統合したオールインワンのプラットフォームを利用しようと、生産性アプリのNotionは中国を含め世界中のスタートアップやテックワーカーを引きつけてきた。サンフランシスコで創業されて7年になるNotionのアプリは、2004年にサービス展開を始めたEvernote(エバーノート)の手強いライバルとして広く認識されている。
Notionは「状況を注視しており、引き続き随時アップデートする」と述べたが、使用禁止となったタイミングは、中国の全人代開催と明らかにかぶっている。全人代は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックのために2カ月遅れで5月22日に開幕した。中国で鍵を握る全人代の開催前後は通常、インターネット規制や検閲が厳しくなる。
Notionにコメントを求めようとしたが、すぐさまコンタクトを取ることができなかった。
中国で利用できるようになったものの現地の法律が適用されていないNotionや他のアプリにとって、突然の弾圧はほぼ予想されていた。中国のサイバーセキュリティ監視機関はNotionのノートシェアの自由な状態を問題あり、と判断したのだろう。一部のユーザーはNotionの使い勝手の良いデスクトップバージョンを個人のウェブサイトに変更しさえした。もしNotionが中国で存在感を維持しようとするなら、中国における全コンテンツ制作プラットフォームに適用されるのと同じ規制に従う必要がある。
例えばEvernoteは2018年に合弁企業を立ち上げ、Yinxiang Bijiというブランド名で中国版をリリースした。Yinxiang Bijiでは機能が制限されていて、ユーザーデータが中国内に保存される。
作業コラボアプリの競争
App Annieのデータによると、中国で禁止になる直前の5月21日に、Notionは中国内のAndroidストアで最もダウンロードが多い生産性アプリになった。ダウンロード急増は、Notionが主な機能を個人ユーザーに無料で提供すると決定したことを受けてのものだ。また、Notionにそっくりだとしてデベロッパーコミュニティの間で議論が巻き起こった中国の模倣アプリHanzhou(寒舟)とも関係しているようだ。
Hanzhouの幹部で、以前ByteDanceが支援する書類コラボアプリShimoで働いていたXu Haihao(徐海豪)氏は、5月22日付の謝罪投稿の中で「Notionをベースにプロジェクトを展開した」と認めた。
「我々は初めから間違っていた」と徐氏は書いた。「しかし私は誰かを傷つけるつもりはなかった。(Notionの)テクノロジーから学ぼうという意図だった」。解決策として、Hanzhouは開発とユーザー登録を停止する、とした。
中国の最大のテック企業の一部は、職場生産性の業界を狙っている。新型コロナウイルス危機で最近にわかに需要が高まっている分野だ。Alibaba(アリババ)のDingtalk(ディントーク)は2019年8月に、1000万超の企業と2億人以上の個人ユーザーが同プラットフォームに登録したと述べた。Tencent(テンセント)のWeChat Work(ウィーチャット・ワーク)は2019年12月までに250万社とアクティブユーザー6000万人がサービスを利用したと明らかにした。
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(翻訳:Mizoguchi)