ワシントンD.C.に住む活動家やオーガナイザーたちは、反対抗議集会のイベントを削除したFacebookの判断に異議を唱えている。この集会を呼びかけたのは、2017年に死傷者まで出したバージニア州シャーロッツビルの集会を計画した白人至上主義者ジェイソン・ケスラー(Jason Kessler)だ。
Facebookは、「No Unite The Right 2 – DC」(DCの右翼の結束を止めろ2)イベントを、そのなかのアカウントのひとつがFacebookが呼ぶところの「不正な行動との連携」を示しているとして削除した。同社はこの活動を「自らの正体や活動の目的を隠して他の人々を欺く目的で、人または組織がアカウントのネットワークを作るもの」と特定している。
論争の中心となっているFacebookページは「Resisters」(反政府主義者)という名称だった。このページは、ユーザーを欺くために偽のアカウントを準備する「bad actors」(大根役者)によって作られたとFacebookが特定したことを、TechCrunchは確認している。最終的にFacebookがUnite The Right 2 – DCの削除に踏み切ったのは、Resistersページとのやりとりや関与があることが判明し、そのページは最初から不正に作られていると判断したからだ。
Facebookは同社のブログ記事にこう書いている。
Resistersページも、8月10日から12日の抗議のためのFacebookイベントを立ち上げ、実在する支持者のリストを掲載している。……Registersページの偽の管理者は、このイベントを協賛している5つの不正なページとつながっている。
同社はまた、よく知られているInternet Research Agency(IRA)のアカウントも反抗議イベントに管理者として加わっていることも確認している。しかし、ここが管理者となっていたのは7分間だけだった(IRAは、ロシアの情報機関とつながりのあるプーチン支持者が立ち上げた「コンテンツ工場」であるとの疑いで、アメリカの情報当局の調査も入っている)。その上、IRAのアカウントは、2017年にResistersが主催したFacebookイベントをシェアしているとも指摘している。
ここで物事は、さらにややっこしくなる。このFacebookが削除したイベントは、いくつかの実在するワシントンD.C.の活動家グループに引き継がれた。これには、Smash Racism DC(民族主義を潰せ DC)、Black Lives Matter DC(黒人の命は大切だ DC)、Black Lives Matter Charlottesville(黒人の命は大切だ シャーロッツビル)、その他の地元グループが含まれ、「Shut It Down DC」(止めよう DC)という名のもとに連合している。彼らの行動や計画は、No Unite The Right 2 DCイベントから引き継がれたものではなく、たまたま合致しただけのことだ。それ以来、連合はFacebookイベント名を「Hate Not Welcome: No Unite The Right 2」(憎悪はお断り:右翼の結束を止めろ)と変更した。
BLM and numerous other groups are central to organizing against a real threat to DC. We do not organize because of Russia, we do this to make sure our loved ones, communities, and neighborhoods stay safe from fascists in, and out of, uniforms.
— ShutItDownDC (@shutitdowndc) July 31, 2018
https://platform.twitter.com/widgets.js
「BLMと数多くのグループが中心となり、ワシントンD.C.の本当の脅威に対抗するための結束を行っています。ロシアのための団体ではありません。私たちの愛する人たち、コミュニティー、地元の街を、制服を着た、または平服のファシストから守るために、この活動を行っています」「そこで私たちは、新しいFacebookイベントを作りましたが、本当の結束は、近所の人たちと話し合うことで築かれます。そしてそれが、ワシントンD.C.での本当の抗議運動になります。それはジョージ・ソロスでも、ロシアでもありません。我々自身です」
TechCrunchは、ワシントンD.C.を拠点に活動する人たちに話を聞いたが、そのなかの一人、Shut It Down DCにも属するワシントンD.C.の活動家Andrew Batcherは、地元のオーガナイザーの連合が、ひとつのイベントとアカウントで結ばれて、Facebookから不正だと目を付けられる仕組みを明らかにしてくれた。
「それは、この問題に興味を持つ、たくさんのグループの草の根の集まりでした」とBatcherは話す。「たくさんのグループが、去年、シャーロッツビルに向かいました。シャーロッツビルは、ワシントンD.C.から南へわずか2時間の街です」
彼の説明では、それらのグループはケスラー自身が主催したイベントに惹きつけられたのであって、オーガナイザーたちが出会ったFacebookイベントではなかったとのことだ。
「組織化を始めたころ、私たちはFacebookページを作ろうと話し合ったのですが、それはすでに作られていたのです」とBatcherは言う。「大きなイベントが数多く開催されるワシントンD.C.では、よくあることです」
「私たちは、そのイベントの共同主催者に加えてもらい、私たちの情報も掲載して欲しいと要請しました」とBatcher。それには、動画による運動への参加呼びかけや、写真や、イベントの詳細など、いろいろなコンテンツがあった。「そして、却下されたのは、すべて私たちのものでした」
最初にプレースホルダーのページを作ったあと、Resistersのページは「まったく介在しなくなった」とBatcherは言う。「それによって、私たちはまるでロシアの駒であるかのように扱われました。私たちは、そうではありませんし、私たちがこれを準備してきた活動です」
彼やその他の左翼の活動家たちは、一般大衆と積み重ねてきた努力が台無しにされ、悪くすれば、ピザゲート事件のように、実際の暴力事件にまで発展しかねない陰謀説まで現れるのではないかと危惧している。
Facebookは、合法的なNo Unite The Right 2 – DCのオーガナイザーに、次のメッセージを送ったと話している。
まだ電話でのお話はできていませんが、今朝早く、あなたが共同主催者に名を連ねている「No Unite Righte 2 – DC」Facebookイベントを削除した旨をお伝えしたく存じます。理由は、そのイベントを立ち上げたページのひとつに、不正なアカウントを作り不正な活動の調整に関わっていたことでFacebookから削除されたResistersが含まれていたからです。
あなたが驚かれ、憤慨されているであろうことは理解しています。私たちは、これがあなたや、あなたのページには関係がないことを示す関連情報をお届けし、ご理解いただけるよう連絡差し上げた次第です。本日、この後より、このイベントに興味を示されたおよそ2600名のユーザーと、すでに参加をされている600名以上のユーザーに、イベントの削除に関する情報の提供を開始します。他のイベントの設定に関してご質問があれば、私たちの公的な連絡手段を用いて、喜んでご説明いたします。
Batcherによれば、Shut It Down DCのイベントのオーガナイザーをしていた人たちには、ほとんどなんの連絡もなく、一部の人が「2行」のメールを受け取っただけだという。
Facebookが、オーガナイザーにほとんど連絡をすることなく、さっさとイベントを削除してしまったことで、グループは意気消沈してしまった。TechCrunchとのインタビューでは、彼も他のオーガナイザーたちも、Facebookに対する根深い不信感を示し、その行動を決断させた証拠となる情報をもっと多く見せて欲しいと望んでいる。ワシントンD.C.の複数のグループとつながっている一人のオーがナイザーなどは、疑わしい協調活動のためにVPN(プライベート仮想ネットワーク)が使われないよう、Facebookは、活動家の結束する意欲をくじこうとしているのではないかと疑っている。こうした心配があることを伝えると、Facebookは、同社の規定では、VPNの利用や一般的なプライバシー保護対策を行ったからといって、アカウントやページを削除する理由にはならないと説明している。
「何か悪いことをしたアカウントがあれば、そのアカウントは排除されます。それを、このすべての合法的な活動にまで押し広げて適用するべきではないと私は考えます」とBatcherは言う。「私たちが求めるのは、公的な謝罪であり、私たちは実在する人間であり、実際に活動を行っていることを世間に知らせることです」。さらに彼は、現実に協力し合ってイベントをまとめた人たちに与える損害に関して、Facebookには考慮する様子が見られないとも話している。
この不信感は、右翼左翼の双方に影響を与えた。右翼の側の、Facebookがコンテンツの検閲を行っているという心配は、アメリカ議会の公聴会でも持ち上がり、その主張を示す証拠はほとんどないまま、多くの右翼ユーザーの間に広がっている。左翼側は、Black Lives Matterの支持者からLGBTQコミュニティーに属するすべての人たちに影響を与えた不注意による検閲がときどき行われるグレーな歴史がFacebookにはあると考えている。こうした状況では、その通報ツールを悪用して、狙った相手に嫌がらせをするFacebookユーザーも現れるが、Facebookは、そうした問題に対処するポリシーの変更に消極的だ。
Facebookはまた、おおっぴらな嫌がらせや、民族主義的コンテンツの問題への対応も遅く、つい最近は、白人至上主義を禁止する一方で白人民族主義を許すという内部方針を批判されている。そして、これら2つの人為的な区別と広く知られるようになる考え方が生まれた。こうした災難は、Facebookだけの問題ではない。悪意のあるすべての人たちにとって、Facebookというプラットフォームは絶好の環境となった。
反抗議活動のオーガナイザーは、その後、新しいFacebookイベントを立ち上げ、活動を継続しようとしているが、状況はまったく落ち着かず、この世界最大のソーシャル・プラットフォームによる介入の強化に対する疑念は消えない。今回の新事実と、2017年の問題では、ソーシャルメディアによる影響合戦の新しい形、つまり偽アカウントが現実の普通の人たちの活動を悪用するという「混合型」には、まったく油断がならないことがわかった。
いわゆる「大根役者」は、合法的な動機につけいり、混乱を引き起こし、すべてを懐疑的にしてしまう。そうした活動が明るみに出たとしても、これはアメリカの政治情勢にさらなる不和と疑念を植えつけようと考えるあらゆる人間にとって、必勝方程式となる。それ以外の人たちには、勝ち目はなさそうだ。
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(翻訳:金井哲夫)