同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を行う、大阪大学発スタートアップ「クオリプス」は3月16日、総額約20億円の第三者割当増資に関する契約を締結したと発表した。引受先は、JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合(JICベンチャー・グロース・インベストメンツ)、ジャフコSV6投資事業有限責任組合、ジャフコSV6-S投資事業有限責任組合(ジャフコ グループ)、京大ベンチャーNVCC2号投資事業有限責任組合、阪大ベンチャーNVCC1号投資事業有限責任組合(日本ベンチャーキャピタル)、富士フイルム、セルソース他。
同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートとは、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞(iPS心筋)を主成分とした他家細胞治療薬で、シート状に加工したものを心臓に移植するという(他家とは、第三者提供のiPS細胞から作った細胞を使うことを指す)。有効な治療法がない重症心不全の患者を対象とし、心機能の改善や心不全状態からの回復等の治療効果が期待されている。
今回調達した資金により、同社はこの同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの実用化を一層加速化させ、様々な細胞製品の培養・加工を通じ、画期的な細胞治療薬の創生に貢献するとしている。
富士フイルムは、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートを用いた心筋再生医療研究開発の促進を、またセルソースは、同種由来間葉系幹細胞および同種由来iPS細胞由来エクソソームの利活用を通じた再生医療分野での協業を期待し資本参加したという。
クオリプスは、大阪大学の技術・研究成果をベースに、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を行うことを目的とする、2017年3月設立の大阪大学発スタートアップ。同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの製造方法に関する研究開発を推進し、さらに効率的な生産技術を確立して、世界に先駆けて再生医療等製品として製造販売承認を取得することを目指す。
同社は2020年夏、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの早期実用化を進めるべく、現在大阪大学で実施中の医師主導治験を支援するとともに、同製品の製造・供給体制を構築するため商業用細胞培養加工施設を大阪府箕面市において稼働させている。
また今後、3年後の上市に向けて、研究開発の加速化や商業用細胞製造施設の安定稼働を図り、事業化体制を構築するとともに、海外展開のための準備、第2、第3プロジェクトの探索研究を推進するため、第三者割当増資の実施に至ったという。
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