オックスフォード大学のアナリストたちの調査によると、ロシアと中国とトルコとイランの国が支援している媒体からの、新型コロナウイルスに関するいかがわしい記事が世界中で、メジャーなニュース媒体の記事よりも広く共有されている。フランス語とドイツ語とスペイン語と英語の普通のニュースサイトは、ソーシャルなエンゲージメントが、これら外国起源の記事よりも少ない。
この調査は、Computational Propaganda Project(コンピューターによるプロパガンダ研究)というプロジェクトが今行なっているCOVID-19偽情報キャンペーンのモニタリングの一部だ。この調査グループは、Le Monde、Der Spiegel、El Paisのようなメジャーなニュース媒体に比べて、Russia TodayやChina Radio Internationalなどの、国が背後にいる媒体のコンテンツが、いくつかの測度で4〜5倍多く共有されていることを発見した。
彼らの初期の報告書は、このタイプのメディアの英語による共有を主に取り上げていて、それらは一般的に、「特定の記述を強調している事実もどき」、と呼ばれている。
彼らが繰り返し何度も発見したのは、主流的なニュース媒体は全体的なプレゼンスでは勝(まさ)っているが、国が支えるジャンクニュースは、一つのポストや記事あたりのエンゲージメントがはるかに多いことだ。最近の報告では、メインストリームの記事が一本あたりで平均25のエンゲージメントを集めているのに対し、国支援の記事は125だった。ユーザーやフォロワーの数は数百万もいるから、全体ではとても大きな差になる。
そのデータにはもっと細かいニュアンスがいろいろあるけど、一般的な傾向としては上のようなことが言える。偽情報はボットや通常の共有などによって広く拡散しているが、普通のニュースソースはアウトプットを増やし、初期のリーチを大きくすることで数を稼いでいる。どちらも、最初の到達数ではそれほど変わらない。しかしまだ分からないのは、英語以外のメディアでもそうか、ということだ。
さまざまなニュースソースから3週間にわたって集めたデータからは、確かに上記のようなことが言える。メインストリームのメディアは全体的なリーチは大きいが、国支援のメディアは一つの記事あたりのエンゲージメントが非常に高いことが多い。それは、国支援の媒体が論争的なネタや対立を煽るような記述を多用するからだろう。調査は次のように述べている:
- ロシアの、フランス語とドイツ語の媒体は、ヨーロッパにおける弱い民主主義と市民の動乱を一貫して強調しているが、パンデミックに関してはさまざまな陰謀説を提供していた。
- 中国とトルコのスペイン語の媒体は、自国のグローバルな指導性とパンデミックとの戦いを宣伝しているが、ロシアとイランの媒体はラテンアメリカとアメリカのスペイン語ソーシャルメディアのユーザーを狙った、二極分化を煽るようなコンテンツを生成していた。
もちろん、この種のクリックベイトはソーシャルメディア上で野火のように広がるが、軽率にシェアボタンを押してしまう人たちは、それがどこかの政府が支援するニュース機関が世界に不和の種を播くためにやっていることだとは、夢にも思わない。
しかし一方ではこれを、相手がやるからこっちもやる、という一種のフェアプレーと見る見方もある。
たとえば、中国の国が支援するニュースは、ウイルスが中国の生物兵器だとする、アメリカで盛んな陰謀説に対抗して、それはアメリカの生物兵器を中国でばらまいて中国に罪を着せようとしているのだ、という説を流している。
オックスフォードのKatarian Rebello氏が、ニューズリリースで次のように述べている。「これらの国支援の媒体の多くが、コロナウイルスに関する事実に基づいた信頼できる記事と、誤解を招く、あるいは偽の情報をブレンドしている。それらにより、COVID-19パンデミックを理解しようとしている一般大衆のオーディエンスの間に、大きな不安を植え付けてしまうこともある」。
ここで挙げた国が支えている媒体は、アラビア語の市場にも大きなプレゼンスがあり、研究者たちは今後の調査でそれらを含めたいとしている。