国境を越えて存在、爆発的に増えるDAO(自律分散型組織)のための運用システムを構築するUtopia Labs

最近、DAO(Decentralized Autonomous Organization、自律分散型組織)というものが流行している。トークンやスマートコントラクトを基盤に会社を作る試みが、爆発的に増えている。そして、新しいタイプの組織が誕生すると、インフラストラクチャの必要性も高まる。

Utopia Labs(ユートピア・ラボ)を創設した4人は、数カ月前にDiscord(ディスコード)とTwitter(ツイッター)で出会ったという。ブロックチェーン技術によって、すべてが信じられないほど速く動いているWeb3.0の世界では、そんな話を耳にすることもますます増えている。

CEOのKaito Cunningham(カイト・カニンガム)氏は、最近まで暗号資産企業のM31で働いており、On Deck(オン・デック)のCatalyst(キャタリスト)プログラムに参加している。共同設立者であるPryce Adade Yebesi(プライス・アダデ・イェベシ)氏、Alexander Wu(アレクサンダー・ウー)氏、Jason Chong(ジェイソン・チョン)氏も、FacebookのインターンシップやLunchClub(ランチクラブ)、Microsoft(マイクロソフト)などで、各々が技術系の仕事に携わっていた。しかし、DAOへの関心が彼らを引き寄せることになる。チャットで交流を始めた彼らは、最終的にこの分野のための開発を行うことになった。

DAOの爆発的な流行についてよく知らない人のために簡単に説明しておくと、DAOとは、従来であれば合同会社とか株式会社といった構造を必要とする、1つの命題の元に人々が集まってコミュニティを運営するに当たり、それらに代わってブロックチェーンソリューションを取り入れた組織形態のことだ。要するに、レガシーな法的構造ではなく、スマートコントラクトによって管理される会社構造である。最近の報告によれば、上位20のDAOが保有する暗号資産は、2021年初めの10億ドル(約1110億円)から60億ドル(約6660億円)以上に増えていると推定されている

曲線に描いてみると、その成長の可能性が莫大であることがわかるだろう。そして、DAOの大部分は国際的な境界線を越えてグローバルな規模で活動しているため、契約が終了した後に引き継がれるインフラ(給与、経費、トークンの配布、人事管理など)の構築には大きなニーズがある。

Utopia Labsは、そんなDAOのためのさまざまなインフラツールのスタックを構築しており、まずは支払いの分野から始めているところだ。そのために同社は、投資家グループから150万ドル(約1億6700万円)を調達し、フルスタックエンジニアとフロントエンドエンジニアの雇用を開始した。

この投資ラウンドは、Zora(ゾラ)やBitski(ビツキ)のような最先端の暗号プラットフォームに投資してきたKindred Ventures(キンドレッド・ベンチャーズ)が主導し、Syndica DAO(シンディカDAO)、4th Revolution Capital(フォース・レボリューション・キャピタル)、Ascend Venture Capital(アセンド・ベンチャー・キャピタル)の他、Brud(ブラッド)のTrevor McFedries(トレヴァー・マクフェドリーズ)氏、これも大手DAOであるFriends With Benefits(フレンズ・ウィズ・ベネフィット)のAlex Zhang(アレックス・チャン)氏、ZoraのTyson Battistella(タイソン・バッティステラ)氏、On DeckのAnirudh Pai(アニルーダ・パイ)氏、Binance(バイナンス)のColin Goltra(コリン・ゴルトラ)氏、YGGのGabby Dizon(ガビー・ディゾン)氏、Spartan Fund(スパルタン・ファンド)のJason Choi(ジェイソン・チェ)氏、Stripe(ストライプ)のJeff Weinstein(ジェフ・ワインスタイン)氏、Junaid Hassan(ジュナイド・ハッサン)氏などのエンジェル投資家が参加している。

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信じがたいほど先進的に聞こえるかもしれないが、確かにその通り。チームがこの会社を設立したのは9月のこと。そう、まだ1月も経っていないのだ。彼らはWeb3.0の世界に活気を与えるこの分野でチャンスを見つけ、飛び込んだのだ。

多くのDAOでは、メンバーへの支払いを独自のトークンで行い、組織の所有権を高めることで、メンバーに将来的に大きな報酬を得る機会や、すぐに換金能力を得る機会を提供している。Utopiaは、ほとんどのDAOの財務基盤であるGnosis SAFE(グノーシス・セーフ)の上に構築されている。そのV1製品は、メンバーの支払いと請求書のワークフローに焦点を当てたものだ。

大多数のDAOは、データの未加工ダンプに基づいてトークンの配布や支払いを運用している。諺にもあるように、CSVを見ればビジネスチャンスがあるのだ。

Utopiaのチームは、DAOが請求書や償還請求を受け取り、支払い、管理できるように、請求書や償還請求のワークフローを構築したという。また、DAOが複数の人やコインにまたがる支払いを1つのトランザクションにまとめることができる、オールインワンのトランザクションも構築した。

次のステップは財務分析と会計だ。Etherscan(イーサスキャン)のダンプを使って手作業による会計処理を避けるために、支払いにラベルとメタデータを付与する。

将来を見据えたロードマップには、従来のフィアット通貨サービス、クロスチェーンDAO、現実世界のコンプライアンスワークフロー、DAOエコシステムのパートナーシップが含まれている。

DAOの世界は現在、非常に勢いがあり成功が見込める数十の組織があるが、それらを本当に効率的なものにするためのインフラはほとんどない。2016年にThe DAOがEthereum(イーサリアム)を脱線させそうになって以来、実に興味深く多様な状況が長く続いている。今日の多くのDAOは、ネットワーク規模よりも企業規模だが、動きが速くてお金の入れ物よりもクールなものを作っている。

Friends with Benefitsの共同設立者であり、DAOの探求者でもあるCooper Turley(クーパー・ターリー)氏は「オンチェーン・ペイロールは、DAOを真にクリプト・ネイティブなものにします」と語っている。「世界の隅々から何十人ものメンバーが貢献している世界では、給与、インセンティブ、バウンティを自動化することが、DAOを拡大させる唯一の方法です」。

Utopia Labsが行っていることに加えて、Multisafe(マルチセーフ)、Commonwealth(コモンウェルス)、Parcel(パーセル)、Colony(コロニー)は、DAOインフラストラクチャーの分野で注目すべき名前である。

画像クレジット:Yorke Rhodes

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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