情熱から趣味そしてスタートアップへ

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。
やあみんな!アレックスだ。今週はお休みをいただく。平日のコラムで私を助けてくれている副操縦士のアンナが私が不在の間のニュースレターを扱う。最高なものになるだろう。お楽しみに!

さて数週間前、私たちは成長に焦点を当てながら、いくつかのスタートアップの結果を調べた。今回私たちは、そうして書いたスタートアップコレクションからさらにそれを1社に絞り込む。Water Cooler Trivia(ウォーター・クーラー・トリビア)だ。

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多くのスタートアップは、何らかの問題を解決しようとして始まる。1人の開発者が世のワークフローの欠陥を見つけ、そのソリューションをコード化し、そのハッキングを拡張可能な製品に組み込む。そんな感じだ。

だがCollin Waldoch(コリン・ウォルドック)氏はこれとは違うやり方を選んだ。彼の趣味をビジネスに変えたのだ。

ウォルドック氏は、彼が競争好きと呼ぶ6人兄弟の家庭の出身である。大学時代にはバートリビアを主催し、その後、学校を卒業した後には職場で毎週トリビアの質問を送信していた。Lyft(リフト)での勤務期間を含む、社会人としての初期キャリアの間、彼はその習慣を維持し続けた。

ウォルドック氏が、企業がチーム活動に多額の費用を費やすことをいとわないことに気づいたのは、彼が企業で生活を送っている間のことだった。たとえば彼がとある仕事をしているときに参加したサッカーチームは、十分な数のレギュラー選手を確保するのに苦労していたが、彼の雇用主はそれにかなりのコストを費やしていた。企業が、その従業員のほとんどが望んでいないグループスポーツにそれだけのお金を落とすなら、おそらくトリビア製品で攻略できる予算もあるだろうと彼は考えた。

そこで、ウォルドック氏はWater Cooler Triviaを開始した。企業向け製品として、彼と友人たちが副業として開発したそのプロジェクトはARR(年間経常収益)で約2万ドル(約219万円)に達した。ウォルドック氏は、当時そのレベルの成功をビール代をまかなうのには十分だったと語る。プロジェクトの収益を助けたのは、解約率が非常に低いことだった。このことに後押しされて、ウォルドック氏はLyftでのフルタイム仕事を辞め、これまでの副業をフルタイムで行うことにした。

現在、Water Cooler Triviaは30万ドル(約3292万円)相当のARRに達し、世界中の労働者たちを楽しませている。企業は、毎週のトリビアクイズの難易度を選択し、リーダーボードを使用して従業員のスコアを追跡することができる。

ウォルドック氏の見解によれば、このアイデアの成功の要因の一部は、HR向けではなくエンドユーザー(従業員)向けに構築されていることだ。つまりそれが実際に楽しいことを意味している。現在は、ある程度の解約はみられるものの、それでも100%近くの継続率を誇っている。こうした特徴は、エンタープライズSaaSのようなグレードアップオプションを備えていない製品には大切な性質だ。

それにサービスは安価だ。率直に言って安すぎるとも言える。100人で月額100ドル(約1万1000円)というWater Coolerの利用料金は、程なく値上げされて収益を押し上げるかもしれない。ウォルドック氏は、2021年の第4四半期に料金の引き上げを始める可能性があると述べている。しかし、もし値上がなくても、Water Coolerは、コア製品から大きな成長が見込めると考えている。

私もそうだと思う。人生をちょっぴり楽しくしてくれるソフトウェアに幸あれ。

Drift、Xometry、Carrot

無数のIPO申請80億ドル(約8778億円)分のYCスタートアップピッチの忙しい週だったが、他にも話す必要のあることが起こった。

私はDrift(ドリフト)のプライベートエクイティ(PE)への売却に興味を持っている:ボストンのDriftはその株式の大部分をVista Equity Partnerに売却したことを先週発表した。同社がポッドキャストを録音するための部屋を私たちに貸してくれたので、Driftのオフィスに行ったことがある。そこの人びとはすばらしかった。しかし私は、2020年に70%のARR成長を報告した同社が、なぜより多くの資本を調達して成長を続ける道を選ばなかったのかに、非常に興味がある。同社は過去に多くの民間資金を調達することに成功している。例えば 2018年のラウンドでは6000万ドル(約65億8000万円)を調達した。このように会社の大部分を早々とエグジットさせてしまうことは、Gainsight(ゲインサイト)のPEへの売却が少々頭を悩ませたのと同じように、少し奇妙に感じられる。ボストンにとっては、このエグジットは新しいエンジェル投資家を生み出すのに役立つかもしれないので朗報である。しかし、それでも重要な詳細が欠落しているエグジットのように感じられる。

Xometry(ゾメトリー):これはメモフォルダにしばらく置かれていたのだが、今週は休みをとるのでここに含めておく。私は数週間前の業績報告会の後で、XometryのCEOであるRandy Altschuler(ランディ・アルチュラー)氏から話を聞いた。Xometryが2021年初めに公開されたことを思い出して欲しい。アルチュラー氏は、COVID-19の最中に公開を行なったことについて基本的に強気な見解を報告し、彼の会社のZoom(ズーム)ロードショーは、旅行関連の疲れを防ぎながら、より多くの人々とチャットできたという意味で効率的だったと語った。

Xometryの続き:しかし、IPO後のありがちな雑談の中で、アルチュラー氏は私の記憶にひときわ残る言葉を残していた。その1つ目は、インフレがテクノロジービジネスに影響を与える可能性があるということだ。コストの上昇は、請求コストに影響を与える中古車の価格に対応しなければならないRoot(ルート)のような企業に影響を与えている。インフレは、製造業の需要と供給を結びつけるXometryのビジネスにも影響を与える。マクロ市場の状況は、テクノロジーの世界では本当に重要で、常に簡単に確認できるようなものではないことは忘れないようにしたい。

Xometryのさらに続き:アルチュラー氏はまた、ある時点での炭素税は避けられないと考えていると述べた。この話題は、将来的な米国でのオンショア製造に関する、私たちの議論の中で浮かび上がった。現在の輸送費は高額であり、税金として炭素排出量を追加した場合にはさらに高額になるだろう。これにより、特に地元製造業の競争力が高まる可能性がある。おそらくそれは、脱工業化社会の中でより多くの工業生産を求める人たちに恩恵をもたらすだろう。物理世界の商品を扱うハイテク企業にとって、それは気に留めておくべきことだ。

そして最後に、Carrot(キャロット):メモされたさらに別の話題からCarrotの話をお届けする。同スタートアップは数週間前に7500万ドル(約82億3000万円)を調達した。そこで同社にその成長の歴史やいくつかのことについて尋ねた。Carrotは、雇用主が労働者に出産手当を提供できるようにする製品を販売している。人類の出生率が低下していることを考えると、この種の報告は時間の経過とともに、数が増していく可能性が高い。

もちろん、他の要因も働いてはいるものの、過去18カ月はCarrotのビジネスにとって加速的に働いたことが証明されている。同社によれば、過去6四半期で「全体として約5倍の成長」が見られたという。Carrotは、2021年末までに450社にリーチする予定であり、合計で約100万人の対象者がいると見込まれている。

Carrotは、シリーズBとシリーズCの評価額の差について答えることを拒んだ。幸いPitchBookにこの件に関するデータがあるので、そのデータセットを使って報告するなら、Carrotの評価額は、シリーズ2100万ドル(約23億円)を調達したシリーズB後の約6600万ドル(約72億4000万円)から、シリーズC後に2億6000万ドル(約285億3000万円)へと上昇している。これは、会社の従業員と創業者にとって良い上昇だ。

将来的な出産支援のニーズの高まりに強気な私の予想は、同社の精神と一致している。そのことを同社はその電子メールの中で「出産と家族形成に対するケアは、医療、歯科、視力に並ぶ、従業員の福利厚生とヘルスケアの第4の柱となる可能性があり、またそうあるべきなのです」と述べている。大賛成だ。

では今回はここまで。どうぞご安全に。予防接種を受け、お互いに親切にできますように。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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