日本のAmazonともいうべき巨大eコマース企業、楽天はデジタル・メディアとeコマースの強化に惜しみなく投資中だ。今回はファッション分野のスタートアップを買収した。
楽天が買収したのはエストニアで創立され、現在ロンドンに本拠を置くFits.meだ。同社の開発したバーチャル試着室は消費者とリテラーの双方にメリットをもたらす。消費者は関心を持ったファッション・アイテムが自分に似あうかどうかオンラインで試着できる。同時にリテラーはユーザーに関する詳しい情報を入手できる。
楽天はFits.meを引き続き独立の事業として運営させる考えだ。同社はこれまで通り、独自にテクノロジーを開発し、ビジネスを拡大することになる。Fits.meのテクノロジーを利用している既存のクライアントにはThomas Pink、Hugo Bossのような有名ブランドやホーム・ショッピング・サービスのQVCなどがある。
Fits.meには65人の社員がおり、買収後もJames Gambrellが引き続きCEOを務める。共同ファウンダーのHeikki HaldreとPaul Pallinも社員として活動中だ。
われわれの得た情報によると、楽天がFits.meを買収したのは数週間前だという。両者ともこの点についてはコメントを避けている。
この半年ほど楽天は精力的に買収と投資を進めている。3月にLyftに対する5億3000万ドルの投資ラウンドをリードし 、6月には資金を確保するため1880億円に上る株式の公募増資を行った。この増資のために設けられた大型買収の停止期間が今日(米国時間7/12)終了した。そこでFits.meの買収が公表されたわけだ(なお、楽天は別のヨーロッパ企業の買収にも興味を示しているという。一方、一時進んでいると伝えられたPopSugarの買収は不調に終わったもようだ)。
Fits.meは将来は楽天とさらに密接に事業を展開することになるだろう。まだ詳細は明らかでないが、楽天の事業にFits.meを利用できる分野が多数あるのは明らかだ。
メイン・ポータルRakuten.comにファッションや美容分野のショップが無数に出店している他に、楽天はファッション通販専門の StyLife(日本) やVault (アメリカ)を運営している。また楽天はPinterestの大株主だが、このソーシャル写真サイトは最近コマース分野に力を入れ始めている。
Fits.meが開発した消費者向けテクノロジーの一つは、ユーザーが関心を抱いたファッション・アイテムを着用してみせるオンランのバーチャル・マネキンだ。このロボット・マネキンは消費者が身長、体重、年齢などの情報を入力するとそれに合わせてサイズなどを変化させる。
楽天は当初Fits.meへの投資を考えていたようだが、交渉が進むうちにまるごとの買収を提案したという。Gambrellによれば「楽天はFits.meにとって適切なパートナーだと考えて提案を受諾した。楽天はさらなる成功のためにクリエーティブな方法を求めており、われわれは楽天の事業のさまざまな分野でその方法を提供できる」という。もう一つの考慮は、ライバルとの競争だ。GambrellによればFits.meが注目しているライバルは、バーチャル試着室のMetailからオンラインの消費者のアイテムの選択を助けるサービスまで320社もあるという。
これに加えて、この分野における集中化のトレンドもすでに目立っていた。eBayがPhiSixを、MyntraがFitiquetteを、それぞれ買収している。またFits.me自身もClothes Horseを買収している。楽天の傘下に加わることでFits.meは生き残りと事業の拡大の保証を得たことになる。
Fits.me、楽天ともに買収金額を明らかにしていないが、情報源によれば「投資家は皆ハッピーになった」という。
楽天の最近の買収は日本のトラベル・サイトVoyaginだった。ヨーロッパでの買収にはメッセージ・アプリのViber、ビデオストリーミングのWuaki、フランスのeコマース・ポータル、Priceministerなどがある。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)