次の稼ぎ頭を探すApple

Appleは常に進化し続ける会社だ。実際には、新たな製品カテゴリを発明したことはないのだが、手を付けた製品カテゴリを、より優れた、より賢いものにしてきたように常に思われている。そして、その製品の値段が高くても、人々に欲しい思わせる方法を開拓してきた。今日の(訳注:2019/2/18付)WSJによれば、AppleはiPhoneを収益モデルの中心に置かない未来像を探ろうとしているという。

このような変化は、iPhoneの需要が伸び悩んでいる状況の中、Appleが数年ぶりの収益の低下を報告したことによって引き起こされたもの。変化している中国市場の影響も大きいが、ユーザーのiPhone買い替え周期が長くなっていることも無視できない。そうした中、iPhoneの価格が1000ドル以上にまで上昇したことが、売上減につながった。

15%というiPhoneの売上減少は、もちろんAppleらしい収益報告ではなかったものの、年初に第1四半期の見込みが下がっていることを発表した時点で、すでに予測していたものだろう。もしも、このThe Wall Street Journalの記事が正しければ、すでにAppleは自らを次のフェーズに、おそらくはサービス業を中心とした会社に、移行させるための措置を取ろうとしている。

(参考記事:Apple lowers guidance on Q1 results, cites China trade tensions

そうだとすれば、それは、さまざまなタイプのハードウェアのデザインを再考しながら、その過程で一般的なデザイントレンドを頑固に拒否してきたという、この会社の伝統からの根本的な離脱を意味する。1970年代から1980年代にかけて、Apple Computerという名前だったころ、Steve JobsとSteve Wozniakは、まだほとんどの人がDOSプロンプトで仕事をしていたときに、GUIを備えたコンピュータを作った。

2000年代の初頭には、AppleはiPodという一種のMP3プレーヤーを発売し、iTunesというミュージックストアを開店した。iPhoneを発表する前年の2006年までには、Appleは4200万台以上のiPodと、8億5000万曲の音楽を販売した。衰退しかかった会社を強大な企業に変貌させたのは、まさにこうしたハードウェアとサービスの組み合わせだったのだ。

2007年にAppleがiPhoneを発表したとき、それがiPodの売り上げを減少させることは分かっていたはずだ。もちろん実際にそうなったわけが、それが論理的に進むべき方向だったのだから、何も問題はなかった。2008年にApp Storeを導入すると、もはやiPhoneは単体のハードウェア以上のものになった。それは、新種のハードウェア・サービスモデルであり、会社にとって途方もない富を生み出すものとなった。

iPadは2009年に登場し、その5年後の2014年にはApple Watchも加わった。それぞれ、それなりに健闘はしているものの、iPhoneの成功に匹敵するようなものは何も登場していない。アナリストは、前の四半期で、Appleが7100万台のiPhoneを販売したと推定している。そして、売上が減少したとされているのも、その同じ四半期のことなのだ。どんなものであれ、たった3ヶ月の間に、7100万個ものものを売るのは難しい。しかも減った結果がそれだと言うのだ。

次に来るのは、おそらくエンターテイメントとコンテンツの組み合わせ、そしてAR/VR、自動運転車、人工知能など、先進技術を活用したものになるだろう。そうした領域の中で、Appleがどの方向に進もうとしているのかは定かではない。しかし、最近の採用や買収によって、それらの方向が確かなものだということだけは分かっている。

(参考記事:Sorry that I took so long to upgrade, Apple

長い間、Appleがコンテンツ分野で派手な買収をするのではないかと噂されてきた。Appleの、インターネットソフトウェアおよびサービス担当上級副社長のEddie Cueは、昨年のSouth by Southwestの際、CNNのDylan Byersにインタビューを受けた。 そこでBuyerは、具体的にNetflixやDisneyのような資産を買う気はないのかとCueに尋ねた。それは、そうした大手のコンテンツ制作会社とApple TV組み合わせたらどうか、ということを暗に示していた。

Cueは、それらの2社はApple TVの素晴らしいパートナーである、とは述べたものの、そのような線で何かをコミットするには至らなかった。「一般論ですが、Appleは、その歴史の中で、これまで大規模な買収を行っていません」と、彼はAppleの立場を説明した。Appleとしては、現状でうまくいっているものを買うのではなく、未来がどこにあるのかを理解して、そこに到達するための何かを創り出したいと考えているのだと。

Apple TV自体は、他のデバイスほどの大きな成功を収めていないものの、サービスから得られる収入は着実に伸びている、ということは注目に値する。最新の決算報告によると、Appleは109億ドルのサービス収入を計上している。これは、前年比で19%増だ。それは、同社がその四半期全体として発表した843億ドルに比べれば、まだ小さい割合しか占めていないが、成長していることは間違いない。

それはともかくとして、Appleが他の製品によって、iPhoneで成し遂げたのと同じような成功に近づくことができるかどうか、誰にも分からない。しかしAppleは、その莫大な富にもかかわらず、どんな会社も過去の成功に頼るのは危険であることが分かっている。そこでAppleは先を見据えて、新たな血統を雇い入れ、できるだけiPhoneに依存しない将来を模索している。Grateful Deadがかつて歌ったように、「戻ることはできないし、立ち止まることも許されない。雷は避けられたとしても、稲妻には打たれるだろう」と知っているからだ。Appleはそのような運命を避けたいと望んでいる、そしてその道を切り開くのは、おそらくハードウェア、コンテンツ、そしてサービスの、何か新しい組み合わせだろう。

画像クレジット:Justin Sullivan/Staff/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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