無人飛行ソフトのXwingは短距離の地域型航空貨物輸送を目指す

パイロットを乗せずに、あらゆる飛行状況に対処できる航空機の商用運用を実現するためには、長く、曲がりくねった、規制と技術的な障害に振り回される、莫大な費用のかかる道のりを進まなければならない。自律航空のスタートアップであるXwing(エックスウィング)の創設者Marc Piette(マーク・ピート)氏は、無人飛行への道のりを短縮して費用効率を高めたいと考えている。

自律型のヘリコプターや飛行機を一から作り上げるのではなく、Xwingは既存の飛行機を使って無人飛行を可能にするソフトウェアスタックに注目した。数カ月前に1000万ドル(約10億6000万円)の新たな資金調達を行い、 Cessna(セスナ)208B Grand Caravan(グランド・キャラバン)を使った自律飛行テストを成功させた同社は、このほど市場展開のための詳細を公表した。Xwingによると、2020年7月以降、すでに地上と空でのテストのための70時間以上の「エンジンタイム」を完了させ、40時間以上の自律飛行を行っているという。

昔から貨物輸送、飛行訓練、自動的ミッションに使われてきた多用途機であるCessna 208B Grand Caravanは、同社が計画する商用輸送飛行において最初の運用の要となる機体になる。計画では、500マイル(約800km)以内の、人家のない地域の上空を航路とする局地的な運用に的が絞られている。

Xwingは貨物輸送を予定している。しかしピート氏は、それにこだわることなく、同社の技術を他の目的に使用する企業との提携やライセンシングも視野に入れているという。

Xwingの「Autoflight System」(オートフライトシステム)と呼ばれる技術は、対応する航空機を選ばないようデザインされている。最新の電話インタビューでも、すでにそうだと話していた。Cessna 208B Grand Caravanは、ほんの始まりに過ぎない。

「まだ開発中ですが、安全な航空機であり、私たちにとって無人航空機に改造するにはもってこいのプラットフォームなのです」とピート氏は話す。

既存の機体にオートフライトシステムを後付けすれば、安全を確保しコストを低く抑えながら、短時間で運用が開始できるとピート氏は考える。オートフライトシステムは、航空機本体の飛行制御システムに統合され、航行、離陸、着陸を自動制御する。遠隔操縦士が航空管制官と協力しながら飛行を監視する設計になっていると、Xwingは説明している。

ただし商用運用を開始するには、Xwingは規制当局の認可を受けなければならない。

Xwingが事業を始めるためには、小型プロペラ飛行機による運送業務者に必要とされる「Part 135 Air Carrier」という免許を取得しなければならない。Xwingは現在、この免許をCessna 208B Grand Caravanでの貨物輸送用に更新中だ。さらにXwingは、4000ポンド(約1814kg)以上の貨物積載量を有する無人操縦Cessna 208B Grand Caravanのための飛行証明をFAA(米連邦航空局)から取得しなければならない。FAAと調整を重ねてきた同社だが、1年以上も前からNASAのUnmanned Aircraft Systems(無人航空機システム、US in the NAS)プログラムにも参加している。米国の航空界に無人航空機を参入させるために必要な、まだ確立されていない重要な技術を成熟させることを目的とした取り組みだ。

「この挑戦を短縮しようとは考えていません。規制当局にとっても、まったく新しいものであり、安全面からしても、本来的に大変に難しい課題だからです」とピート氏。「2022年の早い時期に米国で、無人飛行による商用貨物輸送事業が開始できればと期待しています。それが実現可能かどうかを、私たちは見届けなければならないのです」。

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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