独ソフトウェア大手のSAPがベルリンのビジネスプロセスオートメーションのスタートアップ「Signavio」を買収

SAPがベルリンのビジネスプロセスオートメーションのスタートアップSignavioを買収するらしいという噂は飛び交っていた。そして米国時間1月27日、SAPはこれを正式に認めた。両社は買収金額を明らかにしていないが、Bloombergは米国時間1月25日に12億ドル(約1250億円)の見込みだと報じていた。

Signavioの買収により、SAPはクラウドネイティブのビジネスプロセスマネジメントツールを手に入れる。SAPのCFOであるLuka Mucic(ルカ・ムシック)氏は、ビジネスプロセスを理解し自動化することが企業のデジタルトランスフォーメーションの取り組みにおける重要な部分と見ている。

同氏は発表の中で「企業が新たな可能性やビジネスモデルに対応するために、全社にわたってビジネスプロセスを設計、測定、向上、変革できるようにすることの重要性は、どんなに強調しても強調しすぎることはありません」と述べている。

何年も前からエンタープライズ向けBPAツールはあったが、クラウドネイティブのツールを持つことでSAPはこれまでよりもずっとモダンなアプローチでこの問題に対応できる。クラウドを利用したビジネスプロセスの自動化は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により多くの従業員が在宅勤務をする中で重要性を増している。

SAPは、Signavioを同社のビジネスプロセスインテリジェンスユニットに欠けていた重要なピースであるとも考えている。ムシック氏は「SAPとSignavioのビジネスプロセスインテリジェンスを組み合わせて先進的なエンド・ツー・エンドのビジネスプロセストランスフォーメーションスイートを作り、我々のお客様が競争力を獲得するための要件を満たせるように支援します」と述べた。

SAPは最近になってプロセスオートメーションに取り組んでいる。同社は2020年12月のSAP TechEdでSAP Intelligent Robotic Process Automationを発表して、RPAの分野に進出した。この発表と今回の動きは良い組み合わせになるはずだ。

Savignoの共同創業者でCEOのGero Decker(ゲロ・デッカー)博士は、SAPのリソースによってSavignoだけではできないことができるようになると考えている。博士は発表の中で「SAPの立場、カバーしている地域、資金力を考えると、SAPはプロセスインテリジェンスをあらゆる組織に導入するための最大で最高のプラットフォームです」と述べている。

リソースの増加とリーチに関する議論は買収された企業のCEOなら誰でも経験することだが、SAPほどの規模の企業に買収されるのは諸刃の剣にもなり得る。確かにリソースは莫大だが、買収された企業にとっては巨大な海の中で自分の居場所を見つけるのは簡単ではない。Savignoがうまくフィットしてスタートアップから大企業の歯車になれるかどうかが、長い目で見ればこの買収の成否を決める。

Savignoはベルリンで2009年に設立され、Crunchbaseのデータによると2億3000万ドル(約240億円)近くを調達した。Apax DigitalやSummit Partnersなどが投資している。直近では2019年7月のシリーズCで1億7700万ドル(約184億8000万円)を調達し、評価額は4億ドル(約417億6000万円)となっていた。

同社の顧客にはComcast、Bosch、Liberty Mutual、そしてSAPなどがある。SAPはおそらくこれから料金が割引になるのだろう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SAPSavigno買収

画像クレジット:Alex Grimm / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

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TechCrunch Japan

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