生産性を重視したTeamflowの仮想HQプラットフォームが390万ドルを獲得

ビデオ通話やSlackによるメッセージが主なコミュニケーション手段となってから約1年。ここにきて再び働き方や職場のあり方が変化を遂げようとしている。Teamflow(チームフロー)の創設者Florent Crivello(フロレント・クリベロ)氏は、オフィス勤務を再開する人やリモートワークを続ける人など多種多様なポストコロナの世界で仕事の効率化を図るための、非常に有益なアイデアを生み出したとして高額の資金調達に成功した。

以前はHuddle(ハドル)として知られていた同社は、様々な場所から働くチームメンバーが単一のプラットフォームから共同作業やコミュニケーションをできるようにする仮想本社を構築している。過去6か月間プライベートベータテストを行ってきた同スタートアップは、本日Menlo Ventures(メンロ・ベンチャーズ)のNaomi Ionita(ナオミ・イオニータ)氏が率いるシードファイナンスラウンドで390万ドル(約4億円)を調達したと発表した。

競争が「過熱」しているこのタイミングでの資金調達にクリベロ氏は満足しているようだ。現在HQプラットフォームは市場に溢れかえっており、ベンチャー企業に支援されているものや独自開発のものなどがあるが、どれもゲーミフィケーションと生産性を組み込んだサービスとなっている。

「シリコンバレーのエンジニアや技術者の多くがこの1年、この課題を肌で感じてきたかと思います」とクリベロ氏。

以前はUber(ウーバー)でチームを率いていたクリベロ氏によると、競合他社のプラットフォームがソーシャル的な要素に注力する中、Teamflowのフォーカスは仕事そのものであるという点で他社と差別化を図ることができているという。競合他社には、よりソーシャル的な要素が強いBranch(ブランチ)や、最近20億ドル(約2080億円)で評価されたプラットフォームで、デジタル会議をプロデュースするHopin(ホップイン)などがある。

「ポケモン的な楽しみ方が製品の強みではありません。仕事自体が我々のフォーカスです」と同氏は言う。

Teamflowをひと目見てみると、デザイン性よりも生産性を重視しているということが見て取れる。仮想空間に入るとホワイトボードやカウントダウンタイマーなどのサイドバーが用意されており、さらには近々NotionやGoogle Docsとの統合も追加されるようだ。

現在のリモートワークがもたらした「アプリ中心」の世界で、Teamflowがその中心的な存在になれたらとクリベロ氏は考えている。アプリだらけの混沌とした状況を整理し、コラボレーションレイヤーとして一箇所に集約させるプラットフォームになろうというわけだ。

従業員がより自然な体験を得られるようにするための空間技術が使用されており、同僚の横を通り過ぎると会話に参加することができ、そこから遠ざかると会話の音量も徐々に小さくなっていく。また個室空間も用意されているため、招待制の会議を行うことも可能だ。

同製品はベータ版を開始して以来すでに成長の兆しを見せている。プラットフォームの利用時間は週ごとに30%増加しており、プラットフォーム体験において計5万時間以上のユーザーテストを達成。さらに待機リストには1000人ものユーザーがいる。

「朝から一日中開けっぱなしで使用するような製品になってくれるのではないでしょうか」とクリベロ氏は言う。

いくら生産性を重視しているからといっても、消費者にこのアプリを終日使ってもらえるようにするためにはデザインの良し悪しも無視できない。より多くの時間を同プラットフォームで過ごしてもらうには、仮想本社の雰囲気をユーザーがより深く感じられるようにするための投資がTeamflowには必要である。競合他社がゲーム的機能を前面に押し出している理由はここにある。

どんなバーチャルHQ企業であれ、毎日の貴重な時間をプラットフォームでおとなしく過ごしてもらえるようユーザーを納得させる必要がある。

うまくいけばTeamflowはSlackやZoomに取って代わるリモートワーク・ソリューションになれるかもしれない。クリベロ氏によると既にこの2つのアプリの使用を中止した「企業が複数いる」とのことで、Teamflowは現在Slackに匹敵する社内チャット機能を構築中だという。

最新の価格情報によると、1か月あたりのサブスクリプションコストは1人につき15ドル(約1560円)からとなっている。

「コミュニケーションの方法以外にも、リモートワークの共同作業において必要なことはたくさんあります」とクリベロ氏は述べている。SlackとZoomが主に従業員同士をつなげることを重視している一方で、Teamflowを使用すれば仕事も会話も全てを一箇所で済ませられるようになるというのが同氏の考えだ。

言うまでもなく、遠隔で働くチームに向けたプラットフォームを広く普及させることができればその利益は絶大だ。コロナ禍か否かにかかわらず、時代は分散型ワークの主流化に向けての転換点を迎えたとTeamflowは考えている。創業者らはチームの幸福度と生産性を高く保つためのソリューションを模索することになるだろう。

「今後リモートワークを選択肢としない企業は、競争上不利になるのではないでしょうか」とクリベロ氏。

アーリーステージのスタートアップというのは、長期的な成功が初めから明らかでなくても多少許されるものだ。しかしTeamflowやその他多くの仮想HQプラットフォームに関して言えば、成功の行方はパンデミック後の消費者習慣が顕在化した瞬間すぐに、明確に見えてくることだろう。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:リモートワーク 資金調達

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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