2年前、Appleはヘッドホンジャックを葬った。私はこのことでまだ彼らを許していない。
AppleがiPhone 7にはヘッドホンジャックがつかないと発表したとき、私はすぐにいら立った。それでも数カ月で慣れるだろうと思った。そうではなかった。状況はもっと悪くなると悟った私は、プラットフォームを切り替えた。すると他のメーカーが揃って先例に倣った。
これはもちろん、私にとった新たないら立ちではない。私は携帯電話のヘッドホンアダプターを、ここ、このサイトで「二〇〇九年」から嫌い続けている。それでもなんとか我慢してきた。
今や世界はドングルやヘンテコな独自オーディオジャックでいっぱいだ。Sony EricssonはFastPortを作った。NokiaはPop-Portを作った。Samsungは10種類だかのジャックを作り誰も見向きもしなかった。どこの端末メーカーも支配したと宣言していないので、どのジャックも標準になっていないが、あらゆるメーカーが「自分たちの」ジャックが「ザ・ジャック」になることを望んでいる。標準化されたオーディオジャックを備えていた端末でさえ、ほとんどが小さな2.5 mmジャックを採用していたため、結局アダプターが必要だった。
そして、オリジナルiPhoneが3.5 mmヘッドホンジャックと共に登場した。それはいやらしく埋め込まれた3.5 mmジャックで、ほとんどのヘッドホンは使えなかったが、それでも3.5 mmジャックだった。AppleはiPodの成功に便乗し、この噂のデバイスは発表される前からiPod Phoneと呼ばれていた。そんな製品にヘッドホンジャックが「ない」ことなど考えられなかった。
iPhoneは急激に売れた。2007年に数百万台。2008年に約1200万台。2009年は2000万台だった。潮流は動き始めた。Appleの小さなガラス片がスマートフォンの世界を支配するにつれ、他のメーカーはAppleがなぜそんなにうまくいっているのかを探ろうとした。かつてちゃちなボタンで覆われたプラスチックの獣たち(これはスライドする! こっちは回転する!)でいっぱいだったスマートフォン市場が統一された。新製品がでるたびに、あらゆる端末がiPhoneに似てきた。小さなガラス板。高級な材質。最小限の物理的ボタン。そして、もちろん、ヘッドホンジャック。
数年のうちに、標準ヘッドホンジャックはセールスポイントではなくなった——必須だった。私たちは、自分のヘッドホンを使いたいときはいつでも使える素晴らしい世界に突入した。
そして2016年9月7日、Appleは「勇気」をもって3.5 mmジャックの廃止を発表した(ああ、そうそう、あの新しい150ドルのワイヤレスヘッドホンもお忘れなく!)
ヘッドホンジャックをやめたのはAppleが最初ではない——しかし、それを採用する決断と同じく、削除する決断もまた潮流を変えた。ジャックのないiPhone 7が発表された数カ月後、XiaomiがMi 6のジャックをなくした。そしてGoogleはフラグシップAndroid端末Pixel 3からジャックを消した。Appleの判断を風刺していたSamsungさえもジャックの廃止を検討しているらしい。リーク情報によると、次期Galaxy S10にはヘッドホンジャックが付くらしいが、ミッドレンジのA8ラインからは今年すでになくなっている。2016年をAppleがヘッドホンジャックに剣を突きつけた年とするなら、2018年はとどめを刺した年だった。
そして私は今も怒っている。
テクノロジーは移り変わるものであり、Appleでも常に起きている。ノートパソコンからCDドライブをなくす? それは問題ない——CDは廃れていたしそもそもひどかった。Flashを排除? Flashは終わっていた。USBポートを別のタイプに切り替えた? 「いいだろう」と私は思う。新しいUSBはあらゆる面で良くなっている。最低でも、上下を間違えてひっくり返したら最初が正しかったと気づくことはない。
しかしヘッドホンジャック? あれは「よかった」。100年の長きにわたってテストに耐えてきた。それには理由があった。とにかく、使える。
私は、なぜヘッドホンジャックの廃止が、他のあっさりと捨てられたポート以上に私を悩ませるのかを考えてみた。それはヘッドホンジャックがほぼいつでも〈私を喜ばせることしかなかった〉からだと思う。ヘッドホンジャックを使うことは、大好きなアルバムを聞くことを意味していた。あるいは、空き時間を使って見逃した番組を見ること、あるいは友だちにイヤホンを貸して新曲を一緒に聞くことだった。幸せな時間を作り、決して邪魔をしなかった。
いまはヘッドホンを使いたいときはいつも、いらいらする自分がいる。
Bluetooth? おっと、充電し忘れた。あるいは、おっと、リュックの中のノートパソコンとペアリングしようとしている!
アダプター? おっと、職場のヘッドホンに刺したままだった。あるいは、どこかに落として、またひとつ買わなくては。
私は山ほどアダプターを買い込み、全部のヘッドホンに差し込んだ! 誰かに借りるときのために余分のアダプターをバッグに入れてある。現時点でアダプターが5つということになる。問題解決だ! おっとちょっと待て:寝ながら音楽を聞きたいけど、明日のためにiPhoneを充電しなくてはいけない。それは別のもっと高価な分岐アダプターだ(その多くができの悪いゴミだ)。
どれをとっても大した話ではない。ヘッドホンくらい充電しろよ、Greg。アダプターをなくすのをやめよう。問題は、かつて〈ただ〉使えていて〈ただ〉私を幸せにしていたものが取り上げられて、代わりに〈ただ〉わたしを苦しめ続けていることだ。友だちからYouTubeのリンクが送られてきてまわりの人に迷惑をかけずに見たいと思ったら、たまたまカバンの中にあったどんな安物の使い古したヘッドホンでも使うことができた。今は、山ほどの障壁のあるプロセスを経なくてはならない。
「でも、防水になったじゃないか!」 防水携帯電話はずっと前から存在していて、その多くにヘッドホンジャックがついていた。最近の例では、SamsungのGalaxy S9はIP68規格の防水だ(iPhone Xsと同等)。
「でももっと薄くできる!」 だれもそんなこと頼んでない。
「でも内蔵バッテリーを大きくできる!」 バッテリー容量は6sから8の間にほとんど増えいていない——1715 mAhから1821 mAh。バッテリー容量が大きく増えたのはiPhone Xで本体が幅広く縦に長くなってからだ。
この記事で何かが変わるかって? もちろん違う。Appleは、ヘッドホンジャックはなくてもよい、と高らかに宣言しだれもがそれに従った。翌年——そしてその翌年も——Appleは2億台以上の端末を売った。その時点でAppleは、ヘッドホンジャックアダプターを同梱することさえやめた。Appleの決心は固まったのだ。
しかし、もしあなたが悩んでいて、”なぜAppleはヘッドホンジャックをなくしたのか”をググってこの記事にたどり着いたのなら、これだけは知ってほしい。あなたはひとりじゃない。2年が過ぎ、今も私はこれを決めた誰かに腹を立てている——それに倣った人たち全員にも。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )