米国防省は1兆円超のJEDIクラウドの最終候補にMicrosoftとAmazonを選定、Oracleは選外

米国防省は10年で100億ドル(約1.12兆円)を支出するJEDIクラウドプラットフォームの契約者決定にあたって最終候補、2社を選定したことを発表した。抗議声明訴訟裏口からの大統領への嘆願を含む数々の努力にもかかわらず、Oracle(オラクル)は選に漏れた。選ばれた2社はMicrosoft(マイクロソフト)とAmazon(アマゾン)だった。

TechCrunchの取材に対し、国防省の広報担当官であるElissa Smith氏は2社がMicrosoftとAmazon(AWS)であることを確認し、以下のように答えた。

各社案を検討した結果、国防省はJEDI(統合エンタープライズ国防インフラストラクチャー)クラウドの調達にあたり、合衆国の法規ならびに当省の規定に合致した最終提案の提出をMicrosoftとAmazonの両社に求めた。この両社の提案が今後の調達決定過程において考慮されることとなる。

国防省のクラウド計画が業界の強い関心を集めたのにはいくつかの理由がある。まず第一に総額の巨大さだが、それ以上に重要なのはこれが勝者総取りのプロジェクトだということだろう。

MicrosoftにせよAmazonにせよ、調達に選定されたとしてもいきなり100億ドルのキャッシュが手に入るわけではない。また10年間という期間も保証されたものではない。国防省はどの時点であれ計画を中断ないしキャンセルできる。とはいえ、単一企業が契約者となるという点は当初から参加者に緊張を強いるものとなっていた。

昨年、Googleがレースから離脱する一方、IBMとOracleは「選定過程が不公平だ」と大声で不平を並べた。またこれほど大規模なプロジェクトをジョイントベンチャーではなく単一ベンダーに任せるという決定に対する疑問の声も上がっていた。一方、100億ドルというのはたしかにバカにできない金額だがクラウドビジネスでは天文学的というほどの数字ではないが、関心の焦点は金額だけではなかった。

この契約の勝者は今後、各種の政府調達契約で優位に立てるのではないかというのが重要なポイントだった。つまりJEDIプロジェクトはディナーの前菜で、この後にメインのコースが続くはずという予想だ。合衆国政府にとってももっとも高い信頼性、機密保持能力を求められる国防クラウド計画を首尾よく運営することができるなら、連邦政府、州政府の他の大型クラウド計画の選定過程においても絶大な説得力を発揮するはずだ。

結局、関係他社の抗議にもかかわらず、国防省はことを予想どおりに進めた。ファイナリストはクラウド事業でもっともある実績がある2社で、国防省の仕様書の内容を実行できる可能性がいちばん高かった。MicrosoftはAmazonからだいぶ引き離されているとはいえ、この2社がクラウドの1位、2位の事業者である点は疑いない。この分野をモニターしている調査会社のデータによれば、Amazonは圧倒的な33%、Microsoftは13〜14%程度で、この2社で市場シェアのほぼ半分を握っている。

Microsoftの強みは非常に強力な生産性アプリケーションを擁するAzure Stack。これはプライベートなミニAzureで、軍にとってはきわめて使い勝手がいいはずだ。しかしMicrosoftだけでなくAmazonももちろん政府業務の経験は十分に積んでいる。両社はそれぞれにメリット、デメリットがあるので、どちらかを選ぶのは非常に困難な作業となる。

去る2月にはさらに別のドラマが展開した。国防省は元Amazonの社員が国防省が作成した新サービスの仕様策定に関与したのちAmazonに戻ったかもしれないという利益相反の疑いについて調査を実施したという報告書を公開した。報告書は「利益相反の事実はなかったが、倫理的行動義務の違反となるような部分があったかもしれない。この点の情報については省内の倫理行動基準を調査する部門に引き渡した」と述べた。

国防省は今月末に勝者を発表するが、その後もドラマはさらに続きそうだ。

画像:SOPA Images / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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TechCrunch Japan

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