脱炭素化に向けた競争がアースデイ(4月22日)に加速した。ロサンゼルスに本拠を置き、民間航空機用の水素貯蔵ソリューションと変換キットの開発を目指すUniversal Hydrogen(ユニバーサル・ハイドロジェン)というスタートアップ企業が、シリーズA投資ラウンドで2050万ドル(約22億1200万円)を調達したと発表したのだ。
同社創業者でCEOを務めるPaul Eremenko(ポール・エレメンコ)氏は、TechCrunchによるインタビューに「水素は航空業界にとって、パリ協定の目標を達成し、地球温暖化防止に貢献するための唯一の手段です」と語った。「私たちは、航空用のエンド・ツー・エンドの水素バリューチェーンを、2025年までに構築するつもりです」。
今回の投資ラウンドは、Playground Global(プレイグランド・グローバル)が主導し、Fortescue Future Industries(フォーテスキュー・フューチャー・インダストリーズ)、Cootue(クートゥー)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)、Plug Power(プラグ・パワー)、Airbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)、Toyota AI Ventures(トヨタAIベンチャーズ)、双日株式会社、Future Shape(フューチャー・シェイプ)などの投資家シンジケートが参加した。
Universal Hydrogenの最初の製品は、水素燃料電池を搭載した航空機に、再生可能エネルギーで製造された「グリーン水素」を輸送する軽量なモジュール式カプセルになる。このカプセルは最終的に、VTOL(垂直離着陸機)エアタクシーから長距離用の単通路機まで、さまざまなサイズの航空機に対応する予定だ。
「現在の民生用電池のように、航空機のクラスごとに互換性を持たせたいと考えています」と、エレメンコ氏は語る。
このカプセルの市場を立ち上げるため、Universal Hydrogenは、40~60人乗りのターボプロップ機を改造して、700マイル(約1127キロメートル)までのリージョナルフライトが可能な飛行機を自身で開発している。この取り組みは、シード投資家で水素と燃料電池を供給するPlug Power(プラグ・パワー)と、電動航空機用モーターを開発するmagniX(マグニックス)との共同で行われている。
エレメンコ氏は、2025年までに50席以上の大型機で乗客を乗せて飛行させ、最終的にはリージョナル航空会社が自社の航空機を改造するためのキットを製造したいと考えている。
「Boeing(ボーイング)とAirbus(エアバス)が2030年代初頭に製造する航空機を決定する前に、水素の認証と乗客の受け入れにおけるリスクの顕在化を回避するため、2、3年はサービスを提供したいと考えています」と、エレメンコ氏はいう。「少なくとも両社のどちらかが水素航空機を作らなければ、航空業界は気候変動対策の目標を達成できないでしょう」。
水素に賭けているのはUniversal Hydrogenだけではない。英国のZeroAvia(ゼロアヴィア)は、より野心的なスケジュールで独自の燃料電池リージョナル航空機を開発しており、エアバスは水素航空機のコンセプトに取り組んでいる。
エレメンコ氏は、シンプルで安全な水素ロジスティックスのネットワークを構築すれば、新たに参入する企業を呼び込むことになるのではないかと期待している。
「Nespresso(ネスプレッソ)システムのようなものです。私たちがまず、最初にコーヒーメーカーを作らなければ、私たちのカプセル技術に誰も興味を持ちません。しかし、私たちはコーヒーメーカーの製造をビジネスにしたいと思っているわけではありません。私たちのカプセルを使って、他の人たちにコーヒーを作ってもらいたいのです」。
Universal Hydrogenは、今回のシリーズAラウンドで調達した資金を使って、現在12人のチームを40人程度まで拡大し、技術開発を加速させたいと考えている。
Plug Powerの水素燃料電池とMagniXのモーターを搭載したUniversal Hydrogenの航空用パワートレインの30kW縮小デモンストレーション。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:Universal Hydrogen、水素、燃料電池、資金調達、飛行機、脱炭素
画像クレジット:Universal Hydrogen
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(文:Mark Harris、翻訳:Hirokazu Kusakabe)