英国政府が量子コンピューティングの商用化に210億円を投資

英国政府は米国時間6月13日、量子コンピューティングの商用化に向けた取り組みに、1億5300万ポンド(約210億円)を投資することを発表した。これは約1億9300万ドルに相当するが、業界からの多数の追加コミットメントにより、その総額は4億4000万ドル(約476億円)を超える。これにより、英国のNational Quantum Technologies Programme(国家量子技術プログラム)は、2014年の開始時以来、10億ポンド(約12.7億ドル、約1374億円)以上の投資を受けることになる。

米国では、昨年トランプ大統領が、量子コンピューティングへの12億ドル(約1300億円)の投資を行う法案にサインし、英国が離脱を試みている欧州連合(EU)も同様の規模の計画を開始した。確かに、この発表をBrexit(英国のEU離脱)の文脈で見ないようにすることは難しい。この離脱は英国を欧州の動きから切り離してしまうからだ。もちろん英国は基礎的なコンピューター科学研究に長い歴史を誇っており、それがこうした動きを行わせていることは間違いない。

「このマイルストーンは、『量子』が英国では、もはや実験段階ではないことを示しています」と本日の発表で語ったのは、英国の科学大臣クリス・スキッドモア(Chris Skidmore)氏だ。「私たちが、量子科学と技術で世界の先進国の1つになるにつれて、政府や企業による投資は成果をあげることになるでしょう。今産業界は、かつては未来的で非現実的な夢だったものを、人生を変える製品へと変えつつあるのです」。

この英国のプログラムは特に、地元の量子産業を育成することができる研究に注目している。これを行うために「Industrial Strategy Challenge Fund」(産業戦略チャレンジファンド)が1億5300万ポンド(約210億円)の資金を、研究開発コンペティションを通じて新製品やイノベーションに投資するだけでなく、業界が主導するプロジェクトにも投資する。それはまた投資アクセラレーターとしても機能し、ベンチャーキャピタルたちに、量子関連企業のアーリーステージやスピンアウト、そしてスタートアップに対する投資を促したいと期待している。

「単に量子技術が繁栄するための環境を作ることだけが目的ではありません。私たちは、コンピューティング、センシング、イメージング、コミュニケーションといった幅広い技術に投資しています。そしてこのプログラムの期間中に、革新的な商品やサービスが、実験室での思索から現実の商品へと変わっていくことを期待しているのです」と私に語ったのは、UK Research and Innovationの量子技術担当チャレンジディレクターであるロジャー・マッキンレー(Roger McKinlay)氏だ。

「この技術は新しいものですが、アプローチは試行されテストされています。資金の多くは、業界主導のコンソーシアムで競争的に選抜された共同研究開発プロジェクトに投じられます。また、フィージビリティスタディ(実現可能性検証)にも資金を投入し、投資アクセラレーターを運営して、新しいテクノロジと革新的なアイデアのパイプラインを確保します。定評のある企業も見逃されていません。野心的な投資とスケールアップ計画を持つ会社資金が割り当てられるように考えられています」。

政府にとって、量子コンピューティングは明らかに多くの経済的機会を切り開くが、その一方で、国家安全保障上の関心も登場する。例えば、長いコヒーレンス時間(*)をもつ汎用の量子コンピューターが現実のものになれば、現在の暗号化方式は容易に打ち破られてしまう。それは本日の発表が意図していることではないが、もちろん世界中の政府が考慮していることである。

(*)量子重ね合わせ状態が持続する時間:量子コンピューターの計算能力に関係する

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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