「9年目にしてやっと『レバレッジをかけて伸ばす』ということの意味が分かってきた」——Lang-8(ランゲート)代表取締役・喜洋洋氏はこう語る。同社は10月5日、京都大学イノベーションキャピタル、East Ventures、ディー・エヌ・エーのほか、千葉功太郎氏、Justin Waldron氏(元 Zynga co-funder)をはじめとした個人投資家数人を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額2億円の資金を調達した。
Lang-8の創業は2007年。当時京都大学の大学生だった喜氏が立ち上げたスタートアップだ。提供していたのは語学学習向けSNSの「Lang-8」。京都にてサービスを運営していたが、2012年には本社機能を京都から東京に移転。2013年にはOpen Network Labのインキュベーションプログラムに参加した。
SNSのLang-8を運営しつつ、2014年11月に正式ローンチしたのが新たな語学学習サービス「HiNative」だ。これはとある国の言語を学んでいるユーザーが「○○語(学習している言語)で□□はどう表現するか」という質問を投稿し、その言語を母国語に持つユーザーがテキストや音声で回答するというQ&A型のサービスだ。
積極的なプロモーションこそは行わなかったが、ユーザー数は徐々に増えていった。変化が起こったのは2015年末。SEOでウェブ経由の流入が増えたほか、YouTuberを起用したマーケティングが奏功した。これにともなって登録ユーザーも増加。2016年1月時点の6万人だった登録ユーザーは、9月末には4倍の24万人まで拡大した。
集まった質問は9月末時点で96万件。回答数は340万件に上る。対応言語数は120言語で、それらの言語の使われるほぼ全ての国からアクセスされているという。
「2015年は地道にリテンションを改善する施策を進めた。質問に対する回答が早いとユーザーの満足度が上がり、リテンションもよくなる」(喜氏)。質問に対して回答がつくまでの平均時間は2016年初の90分から約30分に短縮。今後は5分以内に回答がつくよう仕組みの導入も検討しているという。
サービスの質を変えるとともに、冒頭の言葉のように、レバレッジをかけてユーザーを集めることにも力を入れる。「今までは広告でユーザーを増やすという発想がなかったが、薄く、長い時間を掛けるのは意味がない。経営者思考を持ってユーザーを大きく増やしていきたい。さまざまな国のユーザーを集めて、ユーザー数1000万人規模のサービスに育てれば簡単にはマネができない」(喜氏)。京都にいた頃のLang-8は、月次売上が10万円なんて報じられたこともあった、どちらかというと地道にユーザーを伸ばすスタートアップにも思えた。だが東京に拠点を移し、そこで出会った起業家が自社を追い抜くペースでイグジットするのも目の当たりにしたことで、焦りを感じ、戦い方も変えたという。