ベルリン拠点のマイクロモビリティスタートアップであるTier(ティア)がシリーズCラウンドで2億5000万ドル(約263億円)と巨額の資金を調達した。本ラウンドをリードしたのはSoftBank Vision Fund 2で、同ファンドのチームがまだリスクとポテンシャルの高い賭けにフォーカスしていることを物語っている。
念のために記しておくと、SoftBank(ソフトバンク)はVision Fundを通じて多くのレートステージ企業に投資してきた。ポートフォリオにはNuro、Getaround、GetYourGuide、DoorDash、Grab、WeWorkなどの名が並ぶ。しかしスクーターシェアのスタートアップに投資するのは今回が初めてだ。
Tierの既存投資家であるMubadala Capital、Northzone、Goodwater Capital、White Star Capital、Novator、RTP Globalも今回のラウンドに参加している。Financial Timesによると、Tierのバリュエーションは10億ドル(約1054億円)を少し下回る。
Tierは米国ではあまり知られていないが、欧州で急速に事業を拡大してきた。現在10カ国80都市で展開している。利用できる電動キックスクーターの数は6万台だ。
LimeやBird、Dottなど他の電動キックスクーターレンタルスタートアップと同様、Tierでもアプリを使ってスクーターの施錠・解錠ができる。請求書は数分もせずに届く。
新たに調達した資金で、Tierはサービス提供都市と車両を増やし、新たなプロダクトも投入する。同社はまた、車両を増やすのに重要な融資限度額を決める過程にある。
そしてTierは競合相手と差別化を図ろうとしている。例えば、同社はユーザーがバッテリーを交換できる第4世代のスクーターの開発に取り組んでいる。
ほとんどのスクータースタートアップがすでにデッキ部分に交換可能バッテリーを搭載し、マイクロモビリティ企業がそうしたバッテリーの取り替えのために町中を徘徊している。しかしTierはそうしたバッテリーをユーザーたちが取り替えられるよう、目のつくところにバッテリーを設置したいと考えている。
だからこそTierは欧州でのエネルギーネットワーク構築を視野に入れている。小規模店はTierと提携して4つのスロットがあるバッテリードックを提供することができる。ユーザーはライドの終わりにバッテリー交換と無料クレジットを獲得するためにそうした店に立ち寄ることができる。このバッテリーネットワークはGogoroが台湾で展開している充電ステーションネットワークを彷彿とさせる。
DottのようにTierも、自社をシェアリングエコノミー企業ではなくロジスティック企業と認識している。十分な支払いを受けていないフリーランスのパートナーに頼ってコストを下げる代わりに、同社はプロセスを最適化し、一元化されたシステムを採用しようとしている。
他に差異化を図っている点として、Tierはユーザーのために折りたたみ式ヘルメット(未訳記事)をハンドルバー下のボックスに用意している。古いスクーターが交換時期にきたときは、Tierは改装してmyTIER上でドイツの消費者に販売する。同社はまたベルリンの電動モペッドの会社も買収した。
Business Insiderによると、Tierの2020年第3四半期決算はEBITDAベースで黒字だった。しかし同社は2020年上半期に赤字を計上している。人々は夏にスクーターによく乗る傾向があるため、スクーター利用には季節性要素がある。
また、現在も続いている新型コロナウイルスパンデミックのためにマーケットがどのように進化するか予想するのは難しい。しかしTierはいま、当面展開するだけの十分な資金がある。
カテゴリー:モビリティ
タグ:Tier、SoftBank Vision Fund、資金調達
画像クレジット:Tier
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(翻訳:Mizoguchi)