真の「metaverse(メタバース)」はまだ存在しないかもしれないが、そのことは、モバイルアプリストアで自社のアプリやゲームを宣伝するために、マーケティング担当者がこのバズワードを使うことを止めはしない。Sensor Tower(センサー・タワー)が米国時間2月3日に発表した新しいデータによると、アプリのタイトルや説明文に「metaverse」という言葉を含むモバイルアプリは現在552個あり、このウェブの次の進化に対する消費者の関心を引きつけることを期待しているようだ。また、その多くがここ数カ月の間に追加されたものであると同社は指摘している。
App StoreとGoogle Playのグローバルアプリランキングのアプリ全体で、2021年11月から2022年1月の間に、合計86のアプリがタイトルまたは説明文に「metaverse」への言及を追加したことが、Sensor Towerのデータで示されている。
この時期は、Facebook(フェイスブック)が企業名を「Meta(メタ)」に変更し、今後10年にわたって「metaverse」技術に多額の投資を行う計画を発表した後にあたる。MetaとなったFacebookは、metaverseをすでに構築したとは主張していないが、この言葉はすぐに、人々が仮想の自分自身として相互に作用する、ほぼすべての没入型オンライン環境を表すものとして、よりカジュアルに使われるようになった。スタートアップは、自分たちをmetaverse企業であると表現し始めた。ゲームプラットフォームRoblox(ロブロックス)はmetaverseの先駆けとして注目された。ソーシャルクリプトプラットフォーム(実際にはMMORPGに金融要素を加えたもの)もmetaverseと呼ばれ、metaverse用不動産が殺到したことなどがあった。
例えば、友人やコネクション、バーチャルな「もの」がすべてあなたと一緒に移動するデジタルワールド間の移動を可能にするために構築される必要がある新しい業界標準といったmetaverseが存在するための実際の技術的要件には、マーケティング担当者はあまり関心がなかったようだ。
Facebookが10月28日にmetaverseの取り組みを発表した後「metaverse」という言葉を参照したアプリの数は、11月までに前月比66%増となった。11月末時点で、この単語を含むように更新されたアプリは29個で、10月の11個のアプリの2倍以上になっている。
Sensor Towerはまた、どのようなアプリがmetaverseのトレンドにのっているのかを分析した。その結果、多くのアプリが「metaverse」という言葉とともに、例えば「Crypto」「NFTs」「AR」「VR」など、他の人気のある技術用語も参照していることがわかった。
このうち「metaverse」と並んでよく目にするのが「Crypto」で、23%のアプリ(合計144アプリ)がこの言葉を挙げている。Web3のクリプトコミュニティが最近、誇大広告に大きく依存していることを考えると、これは驚くべきことではないし、それが存在する前に何かを「metaverse」と呼ぶことは、確かに誇大広告の定義そのものだ。「NFTs」は2番目に人気のある用語で、調査対象グループの18%、つまり合計118のアプリに登場した。「AR」と「VR」という用語は「metaverse」アプリの11%と9%にそれぞれ見受けられた。
また「metaverse」という言葉は、ゲームや暗号金融アプリだけでなく、意外にもさまざまなアプリで使われていた。
しかし、モバイルゲームのパブリッシャーがこのキーワードを率先して採用し、現在ゲームカテゴリの107のアプリがこの用語を参照しており、それは調査対象のアプリの19%に相当する。この用語が登場する2番目に大きなカテゴリは「金融」で「metaverse」アプリの101個を占めた。以下、ソーシャル(70アプリ)、エンターテインメント(57アプリ)、ブック(37アプリ)、ライフスタイル(33アプリ)、ツール(26アプリ)、ビジネス(25アプリ)、アート&デザイン(13アプリ)、教育(11アプリ)の順となった。
これらのアプリに「metaverse」という言葉が追加されたことが、ユーザーの取り込みに役立っているのかどうかについては、まだあまり明らかになっていない。ユーザーがアプリストアで「metaverse」という言葉を検索することを狙って採用されたことは明らかだが、この市場で成功したアプリは、そうでないアプリよりも優れたユーザー体験を提供しているに過ぎないのだろう。
画像クレジット:BlackSalmon / Getty Images
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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)