Merlin Labs(マーリン・ラボ)の創業者であるMatt George(マット・ジョージ)氏は、バーモント州で飛行機の操縦を学んでいた時、バーリントン空港に入ってきたJetBlue(ジェットブルー)の航空機とあと少しで事故になる危機一髪の体験をした。それは「不安な体験」だったと、同氏はTechCrunchに語った。しかし、この体験は彼の心にずっと残ったという。その数年後、自身が設立した交通輸送の企業であるBridj(ブリッジ)がシンガポールのTransit Systems(トランジット・システムズ)に買収されたことをきっかけに、自律走行という地上の交通機関で起きているイノベーションを、どうやったら空に持ち込むことができるかと考えるようになった。
Merlin Labsを設立してから2年半が経過した現在、同社はステルスモードから脱し、航空ソリューション企業のDynamic Aviation(ダイナミック・アビエーション)と提携を結んだことを発表した。これにより、Dynamic Aviationが所有する55機の航空機に、Merlin Labsが開発した自律飛行機能が搭載されることになる。同時にMerlin Labsは、シード資金として350万ドル(約3億8500万円)、シリーズAラウンドで2150万ドル(約23億6000万円)を調達したことも明らかにした。それぞれFirst Round Capital(ファースト・ラウンド・キャピタル)と、Google Ventures(グーグル・ベンチャーズ)から名称変更したGVが主導し、Floodgate(フルードゲート)、Harpoon(ハープーン)、WTI、Ben Ling(ベン・リン)、Box Group(ボックス・グループ)、Shrug Capital(シュラッグ・キャピタル)、Howard Morgan(ハワード・モーガン)が追加出資している。
ジョージ氏によると、Merlin Labsはこれまで3世代の実験システムで、離陸から着陸までの自律飛行ミッションを「数百回」実施してきたという。同社は試験飛行をモハベ航空宇宙港にある専用施設で行っている。その最新のシステムは数カ月前に完成したばかりで、ジョージ氏はこの「Murray(マーレイ)」と呼ばれるシステムについて、あらゆる航空機に適用可能な後づけ自律操縦キットと表現している。人間のパイロットは地上で機体を監視し、緊急時には操縦を引き継ぐことができるが、Merlin Labsのシステムを後付けした航空機は、それだけで運航することができる。
しかしながら、同社のシステムを取り付けた55機のBeechcraft(ビーチクラフト)製双発ターボプロップビジネス機「King Air(キングエア)」が商業運航として空を飛ぶ前に、Merlin Labsは米国連邦航空局から追加型式設計承認を取得する必要がある。ジョージ氏は、Merlin Labが承認を取得するタイムラインについては言及しなかったが、規制が厳しく当然ながらリスクを嫌うこの業界では、必要なプロセスだ。
また、同社は航空管制官が航空機に直接「話しかける」ことができる機能も証明しようとしている。これは自然言語処理を用いて航空機が人間の言葉を理解し、行動に移すことができるというもので、機体は「高度な認知能力」を持って応答できるようになると、ジョージ氏は語っている。
「私たちは航空管制官が、パイロットの搭乗している他の航空機と同じように、航空機と対話できる必要があると確信しています」と、同氏はいう。「特別なインターフェイスは必要とせず、管制官が航空機に話しかけると、航空機がそのアクションを実行し、返答できるようにしなければなりません。これは私たちが取り組んでいる非常に重要な部分です」。
将来、Merlin Labsは航空会社になるつもりも、自ら航空機を運航するつもりもないと、ジョージ氏はいう。その代わりに、Dynamic Aviation(民間で最も多くのKing Air機を所有する)や、UPSやFedEx(フェデックス)などの大手物流企業に、サービスとして自律飛行機能を提供することを考えている。
「自律飛行は世界を飲み込みつつあります」と、ジョージ氏はいう。「空域を自動化できるということは非常に重要です。人々を結びつけ、世界全体をつなぐデジタルインフラを築くことができるのです」。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:Merlin Labs、飛行機、自動運転、自律飛行、資金調達
画像クレジット:Merlin Labs
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)