AIが人に代わって資産運用を行う時代

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【編集部注】執筆者のNathan RichardsonはTradeItのファウンダー兼CEO

これから5年後のAIに対する私たちの考え方は、2008年時点でのアプリに対する考え方と近いものになるだろう。そして、その頃には2016年がAIの石器時代のように映ることになる。

アプリは全く新しい消費者行動を生み出し、特にフィンテックの分野ではモバイルバンキングやシェアドペイメントを利用したサービスが誕生した。しかし、残念ながらアプリ経済はピークを迎えようとしているようで、アプリのマネタイズには各社が苦戦を強いられている。

アプリはそのうち過去のテクノロジー となり、AI時代の到来を告げることになるだろう。今日のボットは単なるアプリの代替品か目新しいおもちゃの域を出ず、まだロボットに話しかけているような気分がする。しかし、最終的にボットは今のアプリよりもスマートになり、まだ現実になっていないような全く新しい方法でアプリが解決できない問題を否が応でも解決することになる。

すこし未来に目を向けてみると、例えばボットやAIは消費者の当座預金口座を使ってお金を生み出すことができるようになる。

口座の中に余っている現金には、機会損失が発生しているということに気づいているだろうか?さらにその価値は毎日インフレで目減りしているのだ。逆に利益を生み出すためには、最小限の現金を当座預金口座に預け、残りを投資に回すという手がある。しかし、予期しない支出が発生すると突然残高が減ってしまうため、銀行の手数料やクレジットカードの金利で投資益が相殺されてしまわないよう、口座にはある程度余裕をもっておかなければならない。

私たちはAIの力を使って資産を増やしつつ不安を減らすことができるようになるのだ。

こう考えると勝ち目がないように見える。キャピタルゲインを見逃すか、口座残高とリンボーダンスをするしか選択肢がないのだ。しかし、将来的にはAIがこの葛藤を過去のものにしてしまうだろう。

AIが進歩していくうちに、消費者自身よりも彼らの支出に詳しいロボット会計士が誕生するだろう。ロボット会計士はユーザーの購買履歴を解析し、当座・普通預金口座、投資用口座、クレジットカード口座の間で現金を絶え間なく移動させる。そうすることで、当座預金口座の残高を、手数料をとられる恐れがないくらい十分、かつ投資益を逃すほどではない”スイート・スポット”に常に保つことができるのだ。

現状スイート・スポットをみつけるのには時間がかかる上、消費者の不安を誘発しやすい。しかし、そのうちロボット会計士は、いつユーザーが散財するかや、いつ車を修理する必要があるか、どの時期に電気代が上昇するかなどを感知することができるようになる。さらには、最低預金残高を下回って銀行へ口座維持費を支払ってでも、クレジットカード口座にお金を残しておいた方が良いといった判断までできるようになるだろう。

手数料の低減や収益の最適化というのはAIがなくとも実現できるが、そこまで上手くは機能しないだろう。AIは、過去の消費傾向やさまざまな金融機関の手数料のほか、数えきれないほどの情報をもとに複雑な判断を下すことができる。ロボットが計画をたてるからユーザーは何もしなくて良い、ということこそロボット会計士が便利だと感じる上での重要なポイントなのだ。

ロボット会計士は全ての情報を考慮し、ユーザーの投資益を最大化しながら、全体の手数料を最小化するようになる。つまり、私たちはAIの力を使って資産を増やしつつ不安を減らすことができるようになるのだ。これは、アメリカ市民の60%がリタイア時の貯蓄目標を達成できそうにないと心配していることを考えると、素晴らしい偉業だといえる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。