AirbnbやPinterest、他社買収が活発な米国のユニコーン企業

(編集部注:筆者Jason RowleyCrunchbase Newsのベンチャーキャピタルとテクノロジーを専門とする記者だ)

10億ドル企業にするには、良い発想や最適のタイミング以上のものが必要だ。才能、専門性、運用の有効性、そして幸運。これらが全てが成功しているテックスタートアップの要件だ。今日最も成功している(少なくとも最も企業価値の大きな)テックユニコーンの多くがそれらなしに成功は成し得なかった。

企業の合併・買収(M&A)は、急速に事業拡大している企業価値の大きなテクノロジー企業にとっては主要な成長ベクトルとなり得る。これは20173月に初めて我々のCrunchbase Newsに最初の記事を投稿したとき以来、我々が随時取り上げてきたトピックだ。それから約2年たち、我々は最初の記事に立ち戻りたい。というのも、事態はかなり速く動いているからだ。そして最近では新たなユニコーン企業が続出している。これらのうちのどれが最もM&Aマーケットで最近活発なのだろうか。

最も買収の動きが活発な米国ユニコーン

これまでに多くの買収を行なっている米国のユニコーン企業を紹介する前に、まず最初に「ユニコーンって何?」という質問に答えよう。この言葉は通常、企業価値10億ドル以上となったベンチャーが支援するテック企業に使われる。Crunchbaseではこうした企業をUnicorns hubで追跡している。2011年後半にCowboy VenturesAileen LeeVCのセッティングで初めてこの言葉を使い、オリジナルの定義ではユニコーンは最初のテックバブル後の2003年以降に設立された企業であることが明確に示されている。我々がここで使うユニコーンの定義もこれに倣う。

下のチャートでは、まだ株式を公開していない、または(まだ)買収されていない米国拠点のユニコーンが行なった、明らかになっている買収件数を示している。これはCrunchbaseデータのスナップに基づいているもので、この記事を読者が読む頃には数やランキングは変わっている可能性があることはご承知願いたい。読みやすさや適当なサイズを維持するために7件以上の買収を行なった企業のみを扱っている。

想像がつくかと思うが、このランキングは2年前に我々がまとめたものとはいくぶん異なっている。20173月時点でランキング入りしていたいくつかの企業は株式を公開したり、買収されたりしている。

どの企業がユニコーン卒業?

我々の前回の分析時には23社を買収していたDropboxはその数週間後に株式を公開し、その後さらに2社を買収した(20191月下旬にHelloSign23000万ドルで201711月には額は非公開ながらVerstを買収した)。20189月に株式公開したSurveyMonkeyは、IPOを通じてエグジットする前に、明らかになっているだけでも6社を買収した。

トップランクに残っている企業は?

どの企業がまだトップランクに残っているだろうか。宿泊マーケットプレイス大手のAirbnbは、それまで4位だったのがDropboxが公開企業になって空いたトップの座に収まった。Airbnb20173月以来、6社を買収した。直近のものはデンマークのイベントスペース・会議室の貸し借りマーケットプレイスを提供するGaest.comだ。まだ手続き中であるこの案件は20191月に発表された。

WordPressの母体企業Automatticは依然2位のままだ。Automatticは我々が最後にユニコーンのM&Aをまとめてからさらに1社買収している。デジタル出版プラットフォームのAtavistだ。そのほか、オープンソースソフトウェアのコンテナ型仮想化のDocker、写真共有と検索サイトのPinterest、企業向けソーシャルメディア管理会社のSprinklr、ベンチャーが支援するメディア企業Vox Mediaもトップランクに残っている。

新手は?

ランキングではまた注目すべき新登場の企業もあった。ここでは最も注目すべき3社にフォーカスしよう。The We CompanyCoinbase、そしてLyftだ。(またStripeUnity Technologiesにも言及しておこう。どちらも初めてリスト入りした)。

The We CompanyWeWorkの親会社だ)は過去2年間で10社を買収した。今月初めThe We Companyはスペース活用とWi-Fi指紋採取を使ったビジターの追跡を行うEuclidを買収した。他の買収案件にはMeetup201711月のCrunchbase Newsに詳細がある)があり、買収額は2億ドルとされている。また2017年後半にはコーディングとデザイントレーニングプログラムのFlatiron School買収した。この買収でFlatiron SchoolはいくつかのThe We Companyの商業スペースを永久利用できるようになった。

最も有力な一般消費者向け暗号通貨企業という立場を強固なものにするために、Coinbaseはこの頃M&Aに積極的だ。最近同社は、イタリア拠点のブロックチェーン分析とインテリジェンスプラットフォームの企業Neutrinoを買収する計画を発表した。我々が伝えたように、Coinbaseはコンプライアンスを高めるためにこの買収を行うようだ。1月、同社はデータ分析企業Blockspringを買収した(買収額は非公開)。また、他の買収で最も注目を集めたのが20184月に行なったEarn.comの案件だ。Coinbaseはこの買収に12000万ドルを払った。

そして最後にLyftだ。この会社は専ら米国にフォーカスしてライドシェアと交通サービスを展開している。同社は2012年に設立されて以来、わかっているだけで10件の買収を行なっていて、最も直近のM&A案件は都市部でバイクシェアを展開するMotivateであり、20186月に買収した。Lyftの最大のライバル、Uberはこの記事執筆時点で6件の買収を行なっている。Uberは、LyftMotivate買収の数カ月前にJUMP Bikes2億ドルで買収した。ここでもまたライバル関係にあるLyftUberで構造上の類似点がみられる。激しい競争が、資金調達でも2社を競わせていて、M&A戦略でも同様だ。

最後に

長期的な事業の成功は、往々にしてニワトリが先か、たまごが先か的な話になる。買収したスタートアップのおかげで企業が成功するのだろうか。それとも、企業が成功していて事業を拡大する余地があるから買収するのだろうか。それは多くの場合、どちらも正しい。

非公開企業の部門を占有するユニコーン企業(買収案件の数で上位でなかったら買収金額で上位なのは確かだ)は、成長という名のもとに今後も資金を調達し続ける。成長は、マーケットでの地位を確立し拡大するという従来の方法でやってくる。あるいは、急速な事業拡大、そして表面上は投資家へのリターンの最大化という名のもとに、M&Aでは新たなマーケットに参画するルートや、さらに立場を固めるための方策を手に入れることができる。これら企業が最終的にエグジットするとき、そうした戦略が功を奏したかどうかが明らかになる。

イメージクレジット: CattallinaShutterstock

原文へ翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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