Apple、新しいMacBook Proで再び「クリエイティブのプロ」に焦点をあわせる

WWDCで当然出てくると思われていた新MacBook Proは、他のハードウェア製品と同じく姿を見せなかった。Appleはクリエイティブ・プロフェッショナルたちの要望に答えることを再度約束し、重要なmacOSアップデートも紹介したが、その新機能を享受できる新デバイスがなかった。

本日(米国時間7/12)Appleは13インチおよび15インチのMacBook Pro Touch Bars付きモデルの新機種を発表した。

外観は何も変わっていない。新しいProは昨年のモデルと区別がつかない。例によって重要な変化は内部で起きている。6コアのIntel Core i7またはi9とストレージ 4TB、メモリー最大32GBを搭載——後者のためにAppleはDDR3からDDR4メモリーにアップグレードする必要があった。

性能アップはバッテリー寿命につながるので、Appleは7.7 Whバッテリーを強化した。ほとんどのユーザーにとってバッテリー寿命は前世代と変わらない。13インチTouch Bar付きモデルも同じような変更がなされ、、4コアi5またはi7でSSD最大2TBを搭載する。

AppleはTouch Barのないモデルも続けることを約束しているが、今のところアップデートの予定はない。

AppleはわれわれITライターに、何人かのクリエイティブプロフェッショナルを紹介した。マイクロニューロジーの専門家(UCSFのSaul Kato教授)から、パフォーマンスアート(Aaron Axelrod)やギガピクセル画像(Lucas Gilman)まで。これは「クリエイティブ・プロフェッショナル」という名称がいかに広い範囲を指しているかを示しているともいえる。

PC市場全体から見れば小さな存在だが(同社は15%程度のシェアと推定している)、彼らはインフルエンサーだ。作品はそれだけにとどまらない。著名なEDMプロデューサー(Oak Felder)や音楽ビデオディレクター(Carlos Perez)ひとりにつき、使うべきツールを探しているアーティストは無数にいる。

昨年4月、Appleは珍しく悪名高き鉄のカーテンをめくって、Mac Proシリーズの転換計画を公表した。Phil Schillerはデスクトップ機を「全面的に考え直す」ために製造を一時中断することを謝罪した。そして、TechCrunchのビデオプロデューサー、Veanneが「デベロッパーへのラブレター」と評したiMac Proを発表した。Veanneはテスト機を返却することに激しく抵抗していた。

このオールインワンマシンは単なる慰めのポーズではなく、見慣れたフォームファクターに詰め込まれたパワーハウスだった。そしてAppleがMac Proのリセット計画取り掛かっているあいだ、iMac ProはAppleのオフェンスラインを単独で支えている。新しいMacBook Proは、このパズルの新しいピースとして、スペースグレイのiMacで採用された数々の機能を継承している。

中でも専用に設計されたT2チップは、Intelチップの負荷軽減を担う。このチップが受け持つ仕事のリストは長く、オーディオシステムやディスクドライブから、トーンマッピングやFaceTimeの顔検出までこなす。

セキュリティー面でも重要な機能がある。Appleの報道資料を引用する:

iMac Proで初めて導入されたApple T2チップが、新たにMacBook Proにも搭載されました。Apple T2の搭載により、MacBook Proシステムのセキュリティが強化されて、セキュアブートとストレージのオンザフライ暗号化への対応、また、Macでも「Hey Siri」と呼びかけてSiriを起動できるようになりました。

Appleは、初めて”Hey Siri” をmacOSでも使えるようにしたのも興味深い。これは追加オプションだが、設定プロセスの中で有効にできる。ひとたび設定されれば、iPhoneやHomePodと協調し、一番近くのマイクロフォンを優先して動作する。CortanaやPiexelbookのGoogel Assitantなどと似ている。

一方True Toneは別の世界からの借り物だ。2016年にiPadでデビューし、周囲の環境に基づいて自動的に色温度を調節する。Appleの画像や動画編集への熱心な取り組みを考えると、この技術をこれまで導入しなかったことが奇異に感じる。これは、自分で使ってみるまでは重要性がわかりにくい機能だが、使ってみるとこれまでなかったことが不思議に感じられる。

しかし、クリエイティブプロフェッショナルたちが今週のイベントで繰り返し強調していたのは性能の強化だ。「時間が半分になる」は、iOSアプリのシミュレーターを動かしていたデベロッパートリオ(Leah Culver、Akshaya Dinesh、John Ciocca)や複雑な分子生物学のアニメーションをレンダリングしていたユタ大学のJanet Iwasa准教授らがもっとも多く発していたフレーズだ。

Appleの狙いは、プロフェッショナルたちがデスクを離れても複雑な作業をこなせるようにすることだ。これは魅力的なコンセプトだ。過去10年間、スマートフォンが数々の仕事に自由を与えた(同時にスマートフォンが人を縛っている問題は別の話)。今度は同じことをPCに要求することは理にかなっている。

もちろん、プロフェッショナルの中にはノートパソコンで強力なワークステーションを置き換えられない人もたくさんいるが、ポータブルコンピューティングの最近の飛躍はめざましく、新しいMacBook Proも例外ではない。

5Kモニター2台と外部GPUをThunderbolt 3経由扱える能力は、モジュラリティーを約束するものでもある。上述したクリエイティブな人たちの多くが、プラグアンドプレイによって重い仕事の負荷を分散できる能力を称賛している。

Appleにとってバランスの問題は難しい。ほとんどのユーザーは4K長編映画の編集や、VRゲームの開発には関係ない。ハイエンドのアップグレードはほとんどの人にとって日々の生活に影響しない。それでも、Siri機能と静かになったキーボードは間違いなく歓迎だ。

プロの要望に答えることは、Appleが長年続けている教育分野と同じく長い目で見れば効果をもたらすタイプの努力だ。いっときAppleはこの世界から目をそらしていると見られ、ライバルのの侵攻を許したが、iMac ProとMacBook Proと近々登場するmacOSのおかげで、プロフェッショナルは今もAppleの未来にとって重要なカテゴリーであることを明確に示した。

13インチ、15インチモデルともに本日発売。価格はそれぞれ1799ドル(19万8000円)to2399ドル(25万8000円)から。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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