Appleは先ほどBeats Eletronicsを買収したことを発表した。 買収価格は30億ドルだった。共同ファウンダーはラップ・ミュージシャンのDr. Dreと音楽業界のベテラン、Jimmy Iovineで、主要な事業はヘッドフォンと音楽ストリーミングだ。
Appleが買収したBeatsをどのように運営するのかが注目されていたが、音楽ダウンロード・サービスであるiTunesにストリーミング・サービス化するというリスクは冒さず、Beatsの音楽ストリーミング・サービスはiTunes別個に、並行して運営していくという。ストリーミング・サービスのビジネスモデルは定額制の聴き放題だ。
私は先週、Apple は両サービスを並行して運営するというスクープ記事を書いたが、幸い、これが確認されたことになる。
Appleの上級副社長でiTunesの責任者、Eddy Cueは今回の30億ドルの買収を発表したプレスリリースで「Beatsの参加によってAppleの音楽サービスのラインナップは大きく強化される。無料ストリーミングのiTunes Radioに加えて世界でもトップクラスの有料音楽ストリーミングのBeats Musicを提供することができるようになった。もちろん長年愛されてきたiTunes Storeで従来通りダウンロード購入サービスを続けていく」と述べた。
この最後の部分に注目していただきたい。 CueとAppleはストリーミング・サービスを始めるに当って、いきなりダウンロード・サービスを廃止して従来のユーザーにショックを与える代わりに、ストリーミングを新たなオプションとして提供することにした。すでに大きなデジタル音楽のライブラリを作っているユーザーは今後もiTunes Storeからダウンロードを続けることができる。Financial TimesのTim Bradshawによれば、Appleの買収後もBeats MusicはAndroidとWindows Phoneから引き続き利用できるという。
Kleiner Perkinsの伝説的インターネット・アナリスト、Mary Meekerが2014版インターネット・トレンド・レポートで示しているところによると、デジタル音楽のダウンロードの売上高はストリーミングの成長と共に下降線をたどっている。デジタル楽曲の売上は2013年中に6%減少し、2014年の第1四半期には対前年同期比で13.3%も下落した。一方、アメリカにおける音楽ストリーミングの利用は2013年に32%アップしている。一言でいえば、セル・モデルは衰退しつつあり、ストリーミング・モデルこそが未来だ。
とはいえ、ダウンロード販売もまだまだ大きなビジネスだ。Appleとしてはこれを今すぐに投げ出したくはない。シリコンバレーかいわいでこそ誰もダウンロード販売を利用していないものの、2013年には12.6億曲、1億1760万枚のアルバムがオンラインで売れている。
AppleはBeats Musicへの移行ができるだけスムーズに運ぶよう配慮している。当面、ストリーミングを好むユーザーにはBeatsを受け皿として用意し、将来iTunesの売上が一定以下に減少したらその時点でiTunesもストリーミング化するのだろう。
パーソナル化されたキュレーションを導入するBeatsは、伝統的な「なんでもあり」のiTunesを非常に効果的に補完できる。iTunesにやってくるユーザーは聴きたい曲やアーティストを初めから決めていることが多い。しかしBeatsは聴き放題モデルなので、ユーザーは気軽に新しいアーティストや楽曲を試すことができる。探究心、好奇心の強いユーザーに対して本人の好みをベースにしたキュレーションの重要性は非常に大きい。
比較的保守的な音楽ファンはiTunesをより多く利用し、新しい音楽を探しているファンはBeatsを好むという補完関係が考えられる。
次に注目されるのは、料金だ。現在Beats Musicは月額9.99ドルだが、Appleはメジャー・レーベルを説得してこの料金をもっと手頃な金額に引き下げることができるだろうか? Appleの洗練とBeatsのブランドが相乗した結果、世界のあらゆる音楽が月数ドルで聴き放題になればうれしいのだが。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)