10年前の今日(米国時間1/15)、サンフランシスコのMoscone Convention CenterでSteve Jobsは、茶色い大判の事務封筒を頭上に掲げ、集まった聴衆の喝采を誘った。ささいな演出だったが、その意味は確かに伝わった。MacworldでiPhoneを披露してから1年後のその日、同社はまたひとつ、重要な製品をそのレパートリーに加えようとしていた。
その後の10年で7つの世代を経たMacBook Airは、美学を重視するAppleにしては珍しく、デザインはほとんど変わっていない。第二世代のMagsafeコネクターやポートの変化など、小さな手入れはあったが、そのくさび形をした“世界最薄のノートブック”は一貫して不変だった。
最初のAirは、2008年2月に発売され、そのときの重さがわずか3ポンド(1360グラム)、その後わずかにダイエットしたが、ほとんど変わっていない。同じ画面サイズのMacBookより900グラム軽い。
スマートフォンからキーボードが消えるきっかけを作ってから1年後に登場したAirには、フルサイズのQWERTYキーボードがあった。Jobsは“妥協はしない”と約束したが、薄くそして軽くするためには、何かをせざるをえなかった。
そしてJobsはまず光学ドライブを貶(けな)し、Appleによって墓場へ送られる者をまた一人増やした。しかもそれには、正しい目標があった。また2010年には、一部のポートをフリップダウンハッチ(flip-down hatch, 引き下げ式の開口部)へ隠した。しかしこのラップトップの美は損なわれなかった。その前のiPhoneやiPodと同じく、それはAppleの最高の製造技術を示していた。
最近では、このラップトップはかなり沈滞している。それは、同社が13インチのMacBookのデザインを一新したせいもある。AirのファンはAirそのものの大型アップデートを諦め、そしてAppleはラップトップ全体の戦略をシフトした。
そしてこの製品は同社の主力からは外れたものの、しかしAirには、消えてしまわないだけのパワーがある。どこかの時点で廃版になることはなく、自然消滅の道をたどるのだろうが、もしそうであっても、競争の厳しい消費者電子製品市場で10年の健在ぶりは、すごいことだ。